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掲載日:2023年5月19日
Q 井上 航議員(県民)
知事は、記者会見等で自ら定めた多選自粛条例を超えて立候補することについて、「不名誉を背負ってまでも県政発展のために県民の期待を実現するという道を選んだ」と説明されています。また、そのことを「重い十字架」という言葉でも表現されています。条例改正は行わず、そうした考えも含め県民に選挙で判断してもらうと4選出馬を決断されたわけですが、非常に厳しい選挙になることが予想されます。そうした状況に置かれることは知事も十分御承知のことと思いますが、それでもなぜ自ら立候補することを決断したのか、それが県民の最も知りたいことだと思います。
私は、この質問の表題に知事から改めて県民に向けてメッセージを発してほしい、その思いを込めました。県民に向けてそのメッセージであることを意識して、以下について御答弁いただきたいと思います。
我が国の歴史も様々な決断と行動を積み重ねて今に至ります。その中には苦渋の決断をせざるを得なかった場面もあったことでしょう。今回の出馬や多選に関する一般質問に対しては、「場合によっては後世の歴史で評価されるものもあるのかな」と答弁をされておりますが、逆に今の知事の決意、信条や苦悩を我々が知る上で、過去のどのような歴史上の出来事、人物などに御自身の心境を重ねていらっしゃるのでしょうか、お聞きします。
さて、ここにいる私たち93名の議員も、今から3か月前に実績と政策を訴えて県議選を戦ってきたところです。その上で、知事を含め今日現在、既に2名以上が立候補表明しているということは、8月9日に知事選は行われます。私は、今回の知事選が実績と政策を競う選挙になることを願っております。何より県民もこの12年間の上田知事の実績と、この先四年間で行おうとしている政策が優れているかどうかを聞きたいのだと思います。
そこで、知事のこれまでの3期12年間の実績を踏まえ、今後の埼玉県の重点課題解消のためどのような具体的施策、事業が必要とお考えかお答えください。そして、それらをいわゆる公約として公表する考えがあるか、そして公表するとすればいつごろを目途としているか伺います。
知事は、先日の醍醐議員の質問に対して、4期目で果たすべき3つの使命として、1、住み慣れた地域での介護・医療体制づくり、2、生産年齢人口減少の対策となる稼ぐ力の強化、3、首都圏が抱える環境問題など広域的課題の解決を挙げ、実現すべく全身全霊をささげる決意だと強調されました。知事は、こうした問題意識をウーマノミクスプロジェクトなどによっていち早く県政に反映されています。
だからこそ上田知事が行うべきは、これら3つの使命を県庁全体で共有した上で、上田にしかできないかじ取りがあると示すことだと考えております。多彩なアイデア、強いリーダーシップ、単一部局ではできないことを結び付ける調整能力など、それらを今誰よりも発揮できるということを県民に示す必要があるのだと考えますが、上田知事だからこそできる県政のかじ取りについて御所見を伺います。
今回の知事選をめぐっては、著名な医療関係者の出馬がうわさされました。結果として、医療現場を離れるわけにはいかないという理由で出馬を断念したということのようですが、これをきっかけとして埼玉の医療問題は改めて争点として注目されています。知事は、この医療問題に対して、1、知事がこの4年間ないし3期12年の間に取り組んできたことは。2、次の4年には、医療や介護分野でどのような事柄、転換が起きるという認識か。3、だからこそ上田知事が継続する必要があると言える理由には何があるのか。以上、3つの要素を踏まえて埼玉の医療問題の解決について県民にどう訴えるか伺います。
最後に、埼玉県議会では議会全体、また、各会派で議会改革の歩みを進めております。私ども無所属県民会議も今定例会、費用弁償の実費支給実現に向けた条例改正案を議会運営委員会に御提案申し上げたところです。上田知事も議会改革の必要性を力説されておられます。ただし、先ほどのように費用削減につながる改革もあれば、議論活性化や開かれた議会への改革を進める上では、逆に予算が必要になる場合もあります。仮に知事が当選した場合も二元代表制の原則に基づき、引き続き厳しくチェックを受けるでしょう。議会改革の進展は知事や執行部へのチェック機能を強化することを意味しますが、議会が改革を進める意欲があるとき、執行部の長として知事はその改革に応える決意はございますか。また、予算編成の面でもその改革に応える心づもりはおありかお伺いいたします。
A 上田清司 知事
まず、「4選出馬にあたっての決意と県民へのメッセージ」のお尋ねのうち、どのような歴史上の出来事・人物などに今の自身の心境を重ねているかについてでございます。
歴史上の人物に重ねるというようなおこがましいことはできませんが、身近な例がございました。2011年当時、石原慎太郎都知事が4期目の出馬を決断される時の苦悩ぶりを間近に見る機会がございました。
石原元都知事は、3期で退くことを前提に当時の松沢成文神奈川県知事に後継指名的な形で出馬を要請し、私と石原都知事、松沢知事の三人でプロジェクトを組んでおりました。
それなりにそのような方向で進んでおりましたが、直前調査で思うような結果が出ませんでした。
松沢氏との信義と都政の発展との間で石原氏は当時悩まれました。
結果、このままでは都政が混乱に陥ってしまうと大変な危機感の下、結局は自ら出馬するしかないという判断をされました。
私は当時の石原都知事は、都政の混乱を防ぐという大義と自らの引き際の美学、加えて松沢さんとの友情、この三つの課題を同時に解決することなどはできない中で、苦渋の選択をされて結果として4期目に出馬されたことをよく覚えております。
また、当時いろんな形での調整も私がさせていただいたこともございました。そういう意味でもよく覚えております。
次に、今後の埼玉県の重点課題解消のための具体的施策・事業と公約についてでございます。
埼玉県で最も重要な課題、これからの課題といえば、やはり2025年問題だと思っております。
75歳以上の方々がピークを迎える、幸いなことにそれ以降は静止状態といいましょうか、非常に緩やかな状況でございますので、この時に成功していればそんなにその後は苦しいことにはならない、そういう意味で、この10年後の世界に向けて、この3、4年できちっとスタートダッシュができるということが、極めて重要だと思っています。
基本的には、医療や介護施設の定員などを計画的に増やしつつ、住み慣れた地域で医療や介護のサービスを受けることができる地域包括ケアシステムです。
これは厚生労働省が「御当地主義」、つまり、それぞれの地域に任せる、モデルがないと言っております。正に市町村と県が一体となって取り組まなければならない新しいシステムであります。
それと同時に、市町村の国保財政の赤字が今でも300億円あるという冷厳たる事実があります。
こうしたことも考えながら、医療・介護サービスを持続的に提供するためにも、基本的には健康寿命を延ばすような取組、つまり「健康長寿プロジェクト」のようなことも同時に進めなくてはなりません。
2025年問題の二つ目は、もう一つ、生産年齢人口が減っていくという課題であります。いわゆる「稼ぎ手が減る」という事実であります。
したがって、将来の産業を育てるプロジェクトというのが当然必要になってきます。
残念ながら今、自動車工業に、その大半を負っておりますので、これがもし何かあった時には、どうにもならない状況になります。そういう意味で、「先端産業創造プロジェクト」などが一つの鍵になると思います。
また、生産年齢人口そのものが2010年比で51万人、2015年比でも27万人減少することが、ある程度分かっているわけですから。バブル崩壊からリーマンショックまで、これまで人手余りの時代でした。
これからは働き手の減少が経済の足を引っ張っていくというような事も起こりうるわけであります。
そういう意味では、「埼玉版ウーマノミクスプロジェクト」、そしてシニアが元気になるような「健康長寿プロジェクト」こういうものの、合わせ技でいかなければいけないと思っております。
加えて偶然、政府の新しい戦略が出てまいりましたが、埼玉県が申し上げています経営革新計画の策定支援、つまり一つ一つの企業の経営改革が叫ばれる今日になりました。
まだまだ日本の中小企業には伸びしろがあるということであります。
付加価値を年3%以上向上した企業の割合は、一般の中小企業では18.9%ですが、県が進める経営革新計画を策定した企業では53.2%にも上るという、これだけの差がございますので、経営革新計画の策定支援を徹底的に強化して、中小企業へのICT技術の導入や高度人材育成の支援などを含めて、正に足腰を強くしていくということが重要だと思っております。
このほかにも、県民一人一人の、人材としてのポテンシャルを高めていくということが重要ではないかと思います。
今、埼玉県では、中学生の不登校を減らそう、高校生の中退率を減らそう、そして、発達障害などの早期発見、早期治療することで社会の戦力になっていただこう、こういうことを努めてきたところでございますが、こうした部分も正しく2025年問題と関連する問題だというふうに思っています。
現在、こうした考えを取りまとめているところでございますが、取りまとめたら何らかの形で公表する機会があるのではないかと思っております。
次に、私だからこそできる県政の舵取りという御質問でありますが、これもまたなかなかつらい御質問だなと思っております。なかなかおこがましい御質問であります。
ただ、先程も申しましたように、次の4年というのは単なる4年ではなくて、2025年を10年後に控える今、724万県民を擁する埼玉県のリーダーには、次の時代に向けた明確なビジョンと、2025年問題という大きな課題を解決するための市町村との信頼と協力の関係、さらに行財政運営に精通した実行力、こうした三つの能力が必要ではないかというふうに思っております。
また、これだけ大きな課題を抱えながらも、国も財政が非常に悪化している、そして、地方が国に「お金ちょうだい」と言えるような状況もあまりない、こういう厳しい時代に、選択と集中を決断して、県民にはっきり説明する、そういうことが強く求められるのではないかというふうに思っています。
そういう面で、自分なりに県民のお役に立てる、このように確信しているところでございます。
次に、医療問題の解決についてでございます。
就任以来、小児・周産期・救急医療の問題というのは、重くのしかかっております。こういうものの充実や病床の整備などの医療供給体制の充実に積極的に取り組んでまいりました。
特に病床の整備に当たっては、県議会や国会議員団の応援により確保できた県裁量枠を効果的に活用して、中核的な医療機関の県内への誘導を図ってまいりました。
あわせて、県立がんセンターや県立小児医療センターなど、県立病院の機能も強化してまいりました。
また、医師の確保に積極的に取り組むため、県医師会、大学病院、県が一体となって埼玉県総合医局機構を創設いたしました。
この結果、医師数は、平成14年度からの10年間で2,200人の増加がありました。これは全国6位の増加数であり、増加率は全国5位でございます。
看護職員数も約1万5千人増加し、全国5位の増加数であり、増加率は全国2位になっております。
医療体制の整備のほか、高齢者の方がいつまでも元気で医療を必要としないような生活が送れればそれが一番望ましい、そういう意味で健康長寿モデルの構築に取り組んでいるところでもございます。
今後、本県は全国一のスピードで高齢化が進み、10年先の2025年には75歳以上の人口が1.5倍になり、医療ニーズが更に爆発的に増えることが予想されますので、正しく医療需要の増加に対応するため、高度急性期から回復期や在宅医療まで、切れ目のない医療供給体制を作る必要があると考えております。
そこで、今年度から、郡市医師会などに在宅医療連携拠点を整備することに着手をしました。
在宅医療と介護の連携は、平成30年度までに、市町村が主体となって実施することとされています。
市町村がそれぞれの地域包括ケアシステムをスムーズに構築できるように、県は市町村をはじめ関係機関の意見を十分に聞きながら、しっかり支援をしていかなければなりません。
また、健康長寿モデルも全県域に普及・拡大していく必要があります。
さらに、平成30年度からは、県が中心となって、市町村とともに大きな赤字を抱える国民健康保険の運営を担い、その安定化に取り組んでいかなければなりません。
こうした取組は、しっかりとした市町村との信頼関係を築いてきた私に一日の長があるのではないかと自負するところでございます。
知事就任以来培ってきた信頼関係の下に、市町村と手を取り合いながら、埼玉の医療問題の解決に努力をしてまいります。
次に、議会が議会改革を進める意欲がある時、予算編成の面でもその改革に応える心づもりはあるかどうかについてでございます。
当然、議会の活性化や県民に開かれた議会運営は、埼玉県の発展にとっても大変重要であります。
また、議会の執行部をチェックする機能が充実強化されることも健全な県政運営を進める上で望ましいことだと思います。
そのため必要な予算については、県民と議会の意向を尊重して措置をしていく、そうした心構えは持っております。以上です。
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