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掲載日:2023年5月17日
Q 前原かづえ議員(共産)
政府は、10月5日、環太平洋連携協定(TPP)が大筋合意したと発表しました。日本語に全て翻訳されていない中でも、日本のとんでもない譲歩ぶりが際立ったものとなっています。日本の全品目、9,018品目の関税撤廃率は95パーセントにも及び、農林水産物の81パーセントは関税撤廃で、正に総自由化とも言えるものです。大筋合意で農産物重要5品目、米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖は586品のうち約3割の関税が撤廃されます。米については、米国・豪州産米の特別輸入枠7.84万トンを受け入れ、ミニマムアクセス米の枠で米国産の輸入を6万トン増やします。また、牛肉・豚肉の関税を実質的にゼロに近い水準にまで引き下げます。埼玉県内の農家からは埼玉の養豚業はどうなるのか、稲作は守れるのかと不安の声が寄せられています。
県は、平成25年4月、TPPによる本県農産物生産への影響額を433億2,000万円と試算しました。まず、今回の大筋合意に基づき、埼玉農業にTPPが与える影響についてお答えください。私は、国の指示待ちではなく早期に影響額を明らかにすべきと考えますが、2点、農林部長、御答弁ください。
国会決議は、農産物重要5品目について関税の撤廃や削減を行わない除外を求め、これが満たされない場合は交渉からの撤退を明記しています。今回の大筋合意は決議違反です。また、自民党は平成24年の総選挙で「ウソつかない。TPP断固反対。ブレない。」自民党と訴えました。しかし、平成25年に安倍首相は交渉参加を表明し、これまで譲歩が報道されても一切決まっていないとしらを切り通してきました。公約を無視し、交渉経過を秘密にして、国民に痛みだけ押し付けるこんなやり方は絶対に許せません。
埼玉県議会は、昨年2月定例会において「TPP交渉に関する決議の遵守を求める意見書」を採択しております。意見書は、国会決議を必ず遵守すること、国民への情報開示を徹底し、丁寧な説明により理解を得ることを求めるものでした。今回の農業を壊滅させる大筋合意は、国会決議も県議会の決議も無視するものと考えますが、知事の見解を求めます。
TPPは、関税だけでなく食の安全、医療、保険、雇用など国民生活全般や地域経済に関わるルールが変更されます。企業が国、自治体に損害賠償を求め、訴えを起こすことができるISDS条項は、国家主権を侵害しかねません。条約ですから、これから協定の正式文書の作成、署名、各国議会の批准が必要です。米大統領候補として有力なヒラリー・クリントン氏は反対を表明しています。アメリカ、日本のいずれかが批准しなければ条約は発効しません。JA全国農協中央会は、大筋合意はまだ運動の通過点に過ぎず、今後行われる国会批准に向け、我が国の食料、農業、農村を守るべく引き続き運動を展開していくと表明しています。国民にとって百害あって一利なしのTPP交渉は撤退しかないと考えますが、知事の見解を求めます。
A 上田清司 知事
まず、「埼玉農業を壊滅させるTPPは撤退しかない」のお尋ねのうち、国会決議も、県会の決議も無視した大筋合意についてでございます。
今回のTPP交渉の大筋合意に対し、コメなどの重要5品目についての国会決議は守られていないという農業団体からの声は聞いております。
国は次期通常国会で十分に説明されるものだと思います。
また、TPP大筋合意を踏まえ、マイナス面をしっかりとカバーする政策を講じていただきたい、このように思います。
TPP合意の如何にかかわらず、これからの農業には稼ぐ力が必要だと思います。
このため県では担い手の経営強化、消費者が求める品種の育成、農業の6次産業化やブランド化などに積極的に取り組んでいます。
次に、国民にとって百害あって一利なしのTPP交渉は撤退しかないについてでございます。
経済のグローバル化が潮流となっている中で、TPPという新しい経済秩序に参加していくことは必要と考えています。
TPPにより、世界のGDPの約4割、人口8億人という巨大市場が創出されます。
モノの関税の削減・撤廃だけではなく、小売・流通業の海外出店規制の緩和などサービス・投資の自由化や、知的財産、電子商取引の規律など幅広い分野で新しいルールが構築されます。
例えば、県内に多くある自動車関連部品メーカーでは、海外に工場を出さなくとも、輸出によりシェアを拡大することも可能になります。
また、お茶、せんべい、化粧品などの海外輸出時の関税も引き下げられます。
こうしたTPPによる得られるメリットを最大化して、特にデメリットを国の責任において最小化するよう、国内の様々な分野で構造改革を進め、我が国の成長につなげていくべきではないかと思っております。
A 河村 仁 農林部長
初めに埼玉農業にTPPが与える影響についてでございます。
今回、TPP大筋合意では米のように段階的に輸入枠が拡大するものや、豚肉や牛肉のように時間をかけて関税が引き下がるものもあり、本県農業への影響が懸念されるところです。
このため、国に対し、国内農業への影響を最小限にとどめる万全な対策を講ずるよう働きかけていくとともに、県としても6次産業化など収益力の高い農業の確立に向け、必要な対策に取り組んでまいります。
次に、国の指示待ちではなく早期に影響額を明らかにすべきではないかについてでございます。
議員お話の433億2,000万円の試算額は、関税を即時撤廃、追加の対策を講じないとした前提条件に基づくものであります。
しかし、今回のTPPの大筋合意では、品目によって関税削減の程度や関税撤廃までの期間などが異なっております。
また、国では「総合的なTPP関連政策大綱」を11月25日に決定し、万全の対策を講ずるとしていることから、前回と同様の条件で試算することは適当でないと思われます。
この大綱では農産物の輸入増加などによるマイナスの影響のみではなく、海外への販路開拓などによるプラスの効果も含めた経済効果分析結果を公表するとしております。
仮に現時点において県が独自の前提条件で試算を行った場合、国の分析結果と異なることが予想され、農業者に無用の混乱を招くことになると考えられます。
このようなことから、県といたしましては、今後、国が公表をする分析結果を精査し、本県の農産物に係る影響試算を行ってまいります。
再Q 前原かづえ議員(共産)
川口で行われたスキップシティの農業フォーラムのときに、表彰を受けた農家の方が「おめでたい席だけれども、やっぱり農業の運営は大変だ。TPPという問題もありますし」という発言をされていました。それから、この間の農業大学の70周年記念のときに、知事は「TPPと闘う時代だ」というふうにおっしゃっていました。
今の答弁を聞いていますと、輸出ができるからいいんだということなんですが、輸出もできるけれども、やっぱり輸入で潰されるという恐怖がいっぱいあるわけなんですよね。そういう状態なのに、知事はその言葉の一つ一つに国がやることだからみたいな形で、マイナス面をカバーするような施策をしていきたい、TPPと闘うという時代が来たとおっしゃっている割には、そこの決意が分からないので、もう一度きちんと答えていただきたいと思います。
それからあと、影響額なんですけれども、影響額につきましては、もともとの算出の基盤が違うからということなんですけれども、それでごまかすのではなくて、やっぱりきちんとどういう影響が出るのかというところで試算を早くして、それに対して対応していかなくちゃいけないと思いますので、もう一度答弁をお願いします。
再A 上田清司 知事
基本的には、日本という国は、大きな市場から排除されていくというようなことは避けなくてはいけないということが一つであります。
そして政府は一貫して、守るべきものは守ると言ってきました。
ただ、農業団体などから、必ずしもそうでないという意見があるということが言われております。
そうでないとすれば、どのような形でカバーをするのかということが、きちっとこれから国会の議論の中でなされていくべきだと思いますし、私自身も、もし守れてないとすれば、きちっとそれをカバーすべきものだと申し上げたところでございます。
再A 河村 仁 農林部長
いくつかの県を私も確認しましたが、国の試算の前に算定している県があるというのは承知しております。
例えば滋賀県で、産出額は40億円というように試算してますが、同じ滋賀県でJA滋賀中央会が試算しているものは82億円ということで、倍ぐらいの差が生じているということでございます。
今回の大筋合意の内容は複雑で、前提条件の置き方で大きな試算結果の差が生まれると考えておりますので、埼玉県といたしましては、国の分析結果を精査いたしまして、本県の影響試算を行ってまいりたいと考えております。
御理解いただければと思います。
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