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掲載日:2023年5月19日
Q 新井一徳議員(自民)
医療崩壊の危機が叫ばれています。本県は医師不足が顕著で、人口10万人当たりの医師数は148.2人、都道府県別で最下位であり、特に救急、小児などは最低水準と、深刻な状況です。医療崩壊を防ぐために何をすべきか、そんな問題意識を胸に、小児救急に取り組む久喜市の土屋小児病院を先週土曜日の夜、視察しました。
この病院は、二次救急輪番制の当番病院です。午後8時半過ぎ、1台の救急車が到着すると、夜勤の担当医が速やかに吐き気や腹痛を訴える男の子の診察を始めました。その合間に、救急隊から患者受入れの要請電話などが次々とかかってくるのです。医師の激務ぶりを目にし、県東部の小児医療を守るとりでであることを実感しました。土屋喬義理事長は、「医師の供給体制を構築しないと、地域の小児医療、救急医療体制が崩壊しかねない」と危機意識をあらわにします。なり手がいない深刻な現状に加え、少子高齢化や数年後に始まる新たな研修医制度などの影響で、医師確保がここ数年、特に厳しいそうです。
そこで、1つ目の質問です。県も様々な手を打ってこられたと思います。研修医を対象とした研修資金の貸与や、医学部入学を希望する学生への奨学金の貸与などです。問題は、土屋理事長が指摘するように、県内、特に医療過疎地にどう医師を供給できるかではないでしょうか。本県では、総合医局機構を設置していますが、今後は医師の育成と供給の一体的な体制をどう構築していくか、大きな課題であります。保健医療部長にお考えをお伺いします。
医師の過酷な労働環境をどう解消するかという観点も必要であります。私は新聞記者時代に、幼いお子さんを持つ母親の団体を取材した経験があります。県立柏原病院の小児科を守る会であります。兵庫県丹波市にある県立柏原病院が八年前、小児科閉鎖の危機に陥ったのです。そこで立ち上がったのが母親たちでありました。退職の意思を示した医師の過酷な労働環境を知り、コンビニ受診をやめようという運動を始めたのです。その結果、小児科救急患者は半減、逆に医師を増やすことにも成功したのです。
今回改めて、代表の丹生裕子さんにお話を伺う機会を得ました。「今いるお医者さんに感謝し、お医者さんを大切にする地域づくりが大切です」と力を込めるのです。医師の過酷な労働環境を改善することで、小児科や救急医になりたいという若者が増えるかもしれません。そのために県がなすべきことは、県民への啓蒙であると考えます。
県は、かつて同じような趣旨の質問に対し、子育てサークルなどに小児科医を派遣して積極的な啓発を行っていること、また、ミニガイドブックの配布など、あらゆる機会を捉えて適正受診の働き掛けを行う旨の答弁をされています。しかし、本当に効果があったのでしょうか。小児疾病者の救急搬送事例は、近年2万2,000人前後で推移したままであります。うがった見方をすれば、ガイドブックの配布などは、取り組んだというアリバイづくりにすら感じます。真の意味で県民の意識改革に本腰を入れないと、根本的な解決にはなりません。今後、県民に対してどのような啓蒙活動に取り組むのか、保健医療部長にお伺いします。
A 石川 稔 保健医療部長
まず、本県の医師の育成と供給の一体的な体制をどう構築していくかについてです。
医師の育成と供給は、これまで大学医局が一手に担ってまいりました。
平成16年度に新臨床研修医制度が導入され、研修医が自由に研修先病院を選択できるようになったことを契機に、大学医局の機能は大幅に低下したと言われております。
また、研修医などの若手医師の多くは、将来、専門医になることを目指しており、都市部の高度専門病院を選択する傾向があるため、地域にある病院において医師不足が顕在化をしております。
そこで、県医師会、大学病院、県が一体となり創設した埼玉県総合医局機構を活用し、医師それぞれのキャリアステージに応じた切れ目のない確保・育成に努め、必要な診療科や地域の病院への誘導に取り組んでおります。
具体的には、自治医科大学を卒業した医師13名を秩父地域や県北地域の公的医療機関に派遣をしております。
また、医学生や研修生に対する資金貸与を行い、医師確保が困難な救急、産科、小児科の分野で72名の医師が診療に従事をしております。
昨年度からは、県外から専門医や指導医を招聘した病院に対する支援も開始をし、9病院において12名の招聘が実現をしております。
このほか、4つの大学医学部に寄附講座を設け、県内病院へ指導医など経験豊富な医師11名を派遣しておいでいただいております。
今後は、奨学金貸与者の大学卒業が本格化することに伴いまして、10年後の2025年には、毎年300人程度の医師派遣が可能となると見込んでおります。
さらに、現在整備をしております県立小児医療センター新病院の8階に地域医療教育センター(仮称)を設け、優秀な指導医の下、研修医を育成していく仕組についても検討してまいります。
今後、平成32年度から認定が始まります新たな専門医制度に必要となる研修が、2年後の平成29年度から開始される予定となっております。
こうした新制度にも対応できる育成プログラムについても検討をしてまいります。
医師不足の地域や診療科への必要な医師が派遣できるよう総合医局機構を通じた総合的・一体的な医師の確保・育成に努めてまいります。
次に、県民に対してどのような啓蒙活動に取り組むのかについてでございます。
議員御指摘のとおり、外来診療を行っていない休日や夜間の時間帯に、軽い症状で緊急性がないにもかかわらず救急外来を受診するいわゆるコンビニ受診は、医師の労働環境を過酷なものにする原因の一つと考えます。
昨年度、県民主体で議論する「埼玉県医療を考えるとことん会議」においても、「県民は、医療従事者とともに地域医療をつくり守る当事者意識を持つこと」が重要であるとの提言をいただきました。
適正受診を実行するためには、疾病やその対処法など医療に関する知識を身に着けることが必要です。
このため、県では子育て家庭を支援するため、お話の「子どもの救急ミニガイドブック」を毎年50,000部作成し配布するほか、子育てサークル等が主催する研修会へ小児科医の講師を派遣したり、県職員が講師を務める県政出前講座などを実施しております。
昨年度は、講師を派遣した研修会は9回開催され323名に御参加をいただき、県政出前講座は5回開催し170名に御参加をいただきました。
一方、適正受診の必要性はわかっていても、いざ自分の家族が急な病気になったときには、救急車を呼ぶべきかどうか迷ってしまい、結果として救急車を依頼してしまうケースも多いと考えます。
そこで、県ではそのような場合に相談できる体制を整備するため、救急電話相談を実施しております。
小児救急電話相談#8000の昨年度の相談件数は53,328件で全国第1位です。そのうち約8割が家庭での対応で済むなど、救急病院への必要以上の受診を抑制することに大きく寄与しております。
本年4月からは、夜7時から11時までの時間帯を1回線増設し、4回線とするとともに、日曜・祝日の相談時間は24時間体制とし、より相談しやすい体制といたしました。
さらに、昨年10月からは大人の救急電話相談#7000も開始をいたしました。平成27年3月までの半年間の相談件数は10,780件で、そのうち約6割が家庭での対応で済んでおります。
このほか、これら事業を県民の皆様に知っていただくため、各種広報媒体を活用し、啓発活動にも力を入れております。
今後は、医療従事者の勤務環境を改善するために設置をいたしました勤務環境改善支援センターを活用し、病院勤務医がおかれた厳しい勤務実態やその心情などを把握し、広く県民の皆様にお伝えすることで、適正受診について改めて考えていただく機会が設けられないか検討してまいります。
また、フェイスブックやラインといったソーシャル・ネットワーキング・サービスを活用して、子どもの健康管理に役立つ情報を発信するなど、なお一層、県民に向けた効果的な啓発方法についても検討し、さらなる適正受診の推進に努めてまいります。
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