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掲載日:2021年12月28日
Q 永瀬秀樹 議員(自民)
世界的にSDGs、脱炭素社会の構築に寄与する建築物の木造化、木質化が進んでいます。今年10月には公共建築物等木材利用促進法が基本方針などの対象範囲を公共建築物から民間も含めた建築物一般に拡大されるなど、木材の利用を大きく促す方向に改正されました。こうした法改正や木造建築物の世界における技術革新等により、中高層建築物の木造化の進展などを受けて、今後、木材需要は拡大することが予想され、県産木材の利用促進を更に進める好機が訪れています。
県は、これまで県指針を策定し、支援制度の創設など様々な取組を行い、県産木材の利用促進に努め、一定の成果を上げてきました。しかし、近年の供給量は思ったほど伸びず、壁に当たっていると言えます。また、栃木、群馬など近隣県と比較すると、県産木材の供給量は少なく、今後拡大する木材需要に応え切れず埋没する懸念もあります。
こうした状況を克服し、弱みを強みに変え、木材量拡大の波に乗り、県産木材の利用促進を進めることで森林の多面的機能の形成と維持、木材関連の産業振興による地域経済の活性化、脱炭素社会構築への貢献などに資するべく、以下質問いたします。
まず、県産木材について、公共施設や民間建築物を問わず、利用者側にとって仕入が難しく、なかなか調達できないという課題があります。加えて昨年来、世界を覆う、いわゆるウッドショックにより民間工務店では木材調達そのものが難しく、県の補助事業である彩の木補助事業に応募しても県産木材が調達できず、工事に取り掛かれないため、申込みを取り下げるという事態が起きています。
山には木がたくさんあっても地上に出回らず、建築現場に届かない、欲しいと思ってもなかなか調達できない、仕様書に定められても必要量が確保できない、県産木材利用促進に当たっては、まずこのように製材と流通の過程に大きな課題があると考えられます。こうした供給の不安定さを解消し、県産木材を必要とする建築現場への供給を可能にし、価格の急激な変化にも対応できるよう県が主導し、木材を一時的に備蓄する仕組みを整備してはいかがでしょうか。
木は、山に生えているだけでは、すぐには建設資材にはなりませんが、製材しストックされていれば、必要とされるときに必要な分だけ安定的な価格で供給することができます。備蓄センターを設立する、あるいはサプライチェーンの中において備蓄する機能を有する仕組みを支援するなどが考えられます。必要な資金は国の補助金である林業・木材産業成長産業化促進対策交付金を活用することやPSD投資などを呼び込み、民間のファンドを設立することなどで調達が可能と考えられますが、いかがでしょうか。
次に、木造建築、中でも中高層木造建築物に関しては、設計や施工に携わるプレーヤーが少ないという課題があります。設計事務所や建築会社は、今後、木造建築に関する技術力を急激に蓄積する必要があります。今回の法改正により、県はこれまで市町村等にしか派遣できなかった木造建築技術アドバイザーを民間事業者に派遣することができるようになりました。
県はこうした機会を捉え、設計や施工に関する情報提供に取り組み、積極的に木材利用の促進を図るべきと考えますが、いかがでしょうか。
また、CLT製造工場を持たない本県の供給体制を考えれば、CLT以外の技術である木材を活用した中高層木造建築物の技術の普及にも取り組むべきと考えますが、いかがでしょうか。
さらに、都市部において県産木材の魅力を普及啓発することも必要です。県産木材の魅力や利用することにより得られる社会的効果を広く宣伝し、これまでの住宅に加え、環境問題や社員のオフィス環境に配慮する企業、そうしたテナントのニーズに応えたい不動産会社の利用の誘発などのために、埼玉県山とまちをつなぐサポートセンターのメニュー提供などにより、森林設備や木材の利用、カーボンオフセット事業やイベントや交流会、森林見学ツアーの実施、木育の推進など、まずは都市部と山間部の自治体間連携が深まる取組を進めていくべきと考えますが、いかがでしょうか。
また、都市部と山間部の連携については、県内だけにとどまらず、今後より広域化を図っていく必要があると考えます。県としては、県内の自治体間連携にとどまらず、今後は東京23区や神奈川県都市部の区、市も対象としてマッチング支援してはいかがでしょうか。併せて、お教えください。
以上について、農林部長の見解をお聞かせください。
A 強瀬道男 農林部長
まず、木材を一時的に備蓄する仕組みの整備についてでございます。
県内の木材市場などが一定量の県産木材の在庫を持つ取組を実施している事例もあり、木材の在庫を確保する仕組みは、安定的な木材供給に寄与するものと考えています。
また、確保した木材を災害発生時の応急的な施設建設に流用するなどの機能も想定できます。
一方、議員お話しの備蓄の仕組みを大規模に実現するためには、運用に必要な資金や保管場所の確保などが課題になると考えられます。
スマート林業の導入により、森林で立木の状態で正確な在庫管理を行い、必要な時に木材を速やかに供給するサプライチェーンを構築するなどの方法も考えられます。
備蓄の仕組みについては、木材加工・流通業者などを中心に、国の補助制度や民間資金の活用も含めて意見を聞き、木材の安定供給に資する在庫確保の手法を検討してまいります。
次に、設計や施工に関する情報提供に取り組み、積極的に木材利用の促進を図ることについてでございます。
令和元年度に開始した木造建築技術アドバイザー制度は、公共建築物を対象に技術的な助言などを実施してまいりました。
改正木材利用促進法では、新たに民間事業者が国や地方自治体と「建築物木材利用促進協定」を締結できるようになりました。
県では、この協定を締結した民間事業者に対して、アドバイザーを派遣し情報提供や助言を行うことを検討しています。
今後は、協定やアドバイザー制度の周知を図るとともに、アドバイスの機会を密にするなどの取組を更に充実させ、木材利用の促進を図ってまいります。
次に、むく材を活用した中高層木造建築物の技術の普及にも取り組むことについてでございます。
一般に流通しているむく材を重ねた梁などの使用や、三角形を単位として構成するトラス工法など、強度を増すことで中高層木造建築を実現できる技術が開発されています。
これらの技術を活用することで、集成材への加工の手間がかからず、県内の製材工場で部材を生産することができ、県産木材が使いやすくなります。
しかし、現在これらの工法や技術は広く普及していないため、埼玉県木造公共施設推進協議会による中大規模木造建築技術者講習の実施を支援し、むく材を活用した中高層木造建築技術の普及を図ってまいります。
次に、都市部と山間部の自治体間連携が深まる取組を進めることについてでございます。
今年度から始めた埼玉県山とまちをつなぐサポートセンターは、森林環境譲与税を活用して森林整備や木材利用を促進するため、人口の多い都市部と森林の多い山間部の自治体間の連携を支援しています。
森林見学ツアーや木育の推進など様々なメニューを提案して、双方の住民が交流する機会を設け、自治体間の連携について理解が深まるよう支援してまいります。
こうした取組を続け、都市部での民間における県産木材利用の促進にもつなげてまいります。
次に、東京23区や神奈川県都市部の区・市も対象としてマッチング支援することについてでございます。
本県には、荒川の上流と下流という関係をきっかけに交流を深め、都市部の森林環境譲与税を活用して森林整備などを実施している秩父市と東京都豊島区の事例がございます。
この事例のように、まずは住民の理解を得やすい、森林のある上流域とその恩恵を受ける下流域の自治体間で、マッチングを図ってまいりたいと考えています。
さらに、流域に限らず、特に大きな木材需要が期待できる県外自治体との連携構築についても、積極的に検討してまいります。
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