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掲載日:2021年12月28日
Q 永瀬秀樹 議員(自民)
近年、異常気象による甚大な降雨被害が多発する中で、排水機場等の河川管理施設の重要度は日に日に増しています。浸水しても停止しにくい排水機場の耐水化や、大規模出水時の機能確保のための水門などの遠隔操作化や自動化、操作規則の変更や排水ポンプの運転調整ルールの実効性を確保することなど、その整備と管理、運用が求められています。
県も一員である埼玉県管理河川の氾濫に関する減災対策協議会においては、水防災意識社会再構築ビジョンに基づく埼玉県の減災に関わる取組方針を定め、おおむね五年間タームで排水機場の耐水化や退避基準の明確化、遠隔化、自動化に取り組むとしています。しかし、本年3月末の調査によれば、県内63市町村のうち排水機場の自動化も含めた遠隔操作化ができているのは8市、退避基準が明確化されているのは僅か2市のみであるなど、取組不足感は否めません。
そこで、まず県の持つ知見と情報を活用し、退避基準を明確化するよう市町村に働き掛けるべきと考えますが、いかがでしょうか。
次に、排水機場の遠隔操作化、自動化については、県、市町村ともに早急な取組を行うべきと考えますが、いかがでしょうか。
県管理の内水排水機場については、長寿命化計画ベースで25年かかる運転支援装置を導入の後、遠隔操作を行う場所の情報基盤工事等を別途行うとのことですが、少し増長に過ぎると考えます。県管理の排水機場の遠隔化、自動化の導入については進化するIoT技術等をも活用し、より迅速な取組に努めるとともに、県が市町村に委託している排水機場についても、委託先職員の安全確保と負担軽減も考慮し、操作頻度、稼働日数の多い排水機場から先行的に整備していく等、計画を見直す必要があると考えますが、いかがでしょうか。
また、排水機場の耐水化については、大規模出水時における被害最小化策として可及的速やかに進める必要があります。県管理の河川、放水路の排水機場18か所の排水機場の耐水化については、今年度、簡易耐水化工事は完了したものの、耐水化本工事については予定すら未定とのことです。
排水機場の耐水化については、国や多くの自治体でその取組が進んでいます。長野県では、減災のための流域ソフト対策メニューとして用意した44の対策の1つに排水機場の耐水化の推進を掲げ、全ての市町村に取り組んでいくよう促し支援をしています。県としても、まず県管理排水機場の早期整備に向け、まず個々の排水機場の現在の耐水状況を確認し、個々施設の整備と全体計画の作成に取り組んでいくとともに、市町村管理の排水機場の耐水化も支援していくべきと考えます。県は、排水機場の耐水化に今後どのように取り組んでいくのか見解をお聞かせください。
さらに、大規模出水時に最も懸念される課題が排水ポンプの運転調整、停止ルールの実効性の確保です。平成12年9月の東海豪雨において愛知県庄内川、新川で発生した洪水被害に端を発し、全国的なルールづくりが必要とされ、統一的な排水調整を図る必要がある河川については、排水ポンプの運転調整を円滑に実施するための要綱等を定めるなど、各地で統一的なルール化が図られました。
排水ポンプの運転調整は、河川の破堤による壊滅的な被害を回避するための最終的な手段ではありますが、ポンプ停止が周辺での浸水をもたらすおそれもあります。そのため、相反する被害の度合いと合理的な利害調整の在り方、情報伝達経路と意思決定手続等の課題を浸水が想定される地域の市町村と流域全体が事前に整理し、対応方針について事前に情報共有と十分な合意がなされ、広く住民に周知され理解されていることが必要です。
洪水時等を想定して河川管理者たる県と市町村長が連携して迅速かつ的確な対応が必要であるため、改めて関係流域各市町村と協議し、運転調整ルールの合意形成を行い、かつ県民に周知しておくべきと考えますが、いかがでしょうか。
最後に、県は初動体制の早さから市に県の施設の管理業務委託を行っていますが、リモートテクノロジーが進歩している現代において遠隔操作や自動運転にすることで、夜間における職員の不在やゲリラ豪雨による水害に対し迅速な対応が可能になり、市町村に管理業務委託をしなくても、本来の管理者である県が責任を持って操作することもできると思います。
このような状況を踏まえると、県管理の排水機場については、河川流域全体を見渡す広域的な観点からも市町村への委託は災害時の緊急的な対応にとどめるなどして、将来的には本来の排水管理者である県が直接管理し、操作を行う体制に変えていくことが望ましいと考えますが、いかがでしょうか。
以上について、県土整備部長の御所見をお聞かせください。
A 北田健夫 県土整備部長
まず、「退避基準の明確化」についてでございます。
県、市町村などで構成される「埼玉県管理河川の氾濫に関する減災対策協議会」では、操作員の退避基準の明確化に取り組んでおります。
県管理の排水機場では、既に退避基準を操作規則や操作要領に定めることで明確化を完了しております。
市町村管理の排水機場では、退避基準の明確化が未完了の場合もあるため、退避する水位の決め方など県の取組事例を紹介することで、市町村の取組を加速してもらうように促してまいります。
次に、「排水機場の遠隔操作化・自動化への取組」についてでございます。
県が管理する内水排水機場は、河川のポンプ施設の技術基準で求められている、ポンプ始動時の安全確認体制を確保するために、手動運転を標準としており、現段階では自動化が困難なところでございます。
このため、操作員の負担軽減のため、操作員の習熟度によらず、正確な運転操作及び不具合への対応を可能とさせる操作支援システムとして、運転支援装置の導入を進めております。
この運転支援装置は、将来的に効率的かつ低コストで遠隔操作への移行が可能となることから、長寿命化計画に基づき順次導入するとともに、得られた知見を市町村と情報共有してまいります。
次に、「遠隔化・自動化の計画の見直し」についてでございます。
運転支援装置は、単独で整備する場合、膨大なコストを要することから、電気設備の更新に合わせて導入した方が、コストや作業効率の点で最も合理的であると考えております。
既に、操作頻度や稼働日数の多い排水機場では運転支援装置を導入し始めており、委託先市職員の負担軽減は徐々に進められております。
他方、技術基準では新技術の導入も可能とされていることから、遠隔操作や自動化ついては、設備の構造の問題やコスト、安全面の問題がクリアできる新技術の開発動向を見据えながら計画変更を含め、導入を検討してまいります。
次に、「排水機場の耐水化への今後への取組」についてでございます。
県が管理している内水排水機場のうち16箇所は、洪水浸水想定区域内に設置されており、浸水のリスクがあることから耐水対策が必要となっております。
耐水化は実際の排水機場の正確な寸法に合わせ施工する必要があるため、排水機場の形状を変えてしまうことになる耐震対策を先行して進めたのちに、耐水化を実施することとしています。
このため県では、当面の間の対応策として、対象排水機場に対し、防水パネルによる簡易耐水化工事を実施したところです。
耐水化本工事に当たっては、排水機場ごとで想定浸水深が異なり、対策工事の内容や費用、工期に大きな違いが発生することから、個々にこれらを検討し、実施計画をまとめてまいります。
また、市町村の排水機場の耐水化に対する支援につきましては、国の交付金の活用の紹介や、各排水機場の想定浸水深を国土地理院提供の浸水ナビを利用して把握する方法を案内してまいります。
次に、「運転調整ルールの合意形成と、県民への周知」についてでございます。
本県管理の排水機場等については、既に運転停止水位等を定めた操作規則を策定しており、さらに毎年水防計画の中で公表しております。
また、市町管理の排水機場についても同様に、各市町で適切な施設計画と操作規則の策定・運用がなされていると考えております。
一方、下流のリスク回避を目的とした、上流の排水機場の放流抑制などを定めた「運転調整ルール」を策定・公表している流域が、他県においてあるのは承知しております。
県として、これは、上流の内水浸水リスクを高めてしまう懸念が払拭できないと考えていることから、今後、その有用性、関係流域市町との合意形成及び県民への周知の在り方など、幅広く検討してまいります。
最後に、「県管理排水機場の将来的な管理、操作体制」についてでございます。
排水機場などの操作については、法の規定などにより排水機場までの距離が県の事務所より近く、操作の及ぼす種々の影響が当該市の範囲に概ね収まると判断できる場合には、市への操作委託が可能とされております。
また、現地の状況を熟知した市に運転操作を委託することが、危機管理やコスト面において有利とされていることから、県としては協議が整った市と管理業務委託協定を締結しているところです。
今後、熟練操作員の退職や操作人員の不足が県、市ともに見込まれることから、まずは運転支援装置の導入や遠隔化など、DXによる操作員の負担軽減対策に取り組んでまいります。
また、将来にわたって排水機場の着実な運転操作ができるよう、操作委託も含めた管理、操作体制の在り方について、検討してまいります。
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