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掲載日:2021年12月28日
Q 永瀬秀樹 議員(自民)
PFSは、成果連動型民間委託契約方針(Pay For Success)のことで、行政課題の解決に対応した成果指標を設定し、成果指標値の改善状況に連動して委託費等を支払うことにより、より高い成果の創出に向けたインセンティブを民間事業者に強く働かせることが可能となる新たな官民連携の手法です。
PFSの主要な手法であるSIB(Social Impact Bond)は、民間からの外部資金調達を伴う成果連動型民間委託契約のことで、2010年英国での導入を皮切りに、これまでアメリカ、オーストラリアなど世界25か国で137件が組成されています。民間の創意工夫を最大限引き出すことにより、従来型委託方式に比べて行政課題が効果的に解決され、住民の満足度の向上が図れるほか、成果に応じた支払いを行うため、ワイズスペンディングを実践する上でも有用な手法と考えられています。
我が国における導入状況は、2015年にパイロット事業が開始され、令和2年度末までに本県と美里町を含む67の自治体で75件のPFS事業が実施されました。ただし、事業規模は1億円未満の小規模なものが多く、事業期間も1年から5年余りと短く、財政改革を実現するためのツールとして注目はされているものの定着には至らず、まだまだ低迷期にあると言えます。
PFS/SIBについては、理念的に正しく有効な手法であると思われながらも、いまだ法制度や実施体制が未整備であり、事業手法が難解、成果検証の測定が難しい、先行事例が少なく、自治体間の相互参照が進んでいないなど課題も多く、導入のボトルネックになっています。
しかし、導入により財政削減につながる、社会的課題解決にためにインパクトある事業を行う、官民の新たなパートナーシップの形成などの行財政改革の推進と官民連携の在り方の変化を促し、将来の本県の行政サービスの維持向上に大きく寄与することが期待できると考えます。県においても、今後自らの行政サービスへの導入促進と県内市町村の行政サービスへの導入支援に向けて職員の研修派遣やセミナーへの参加を行うなど、この手法のノウハウの取得に取り組むべきと考えますが、いかがでしょうか。企画財政部長の見解をお聞かせください。
また、PFS/SIBに親和性が高く適した事業分野として、医療・介護分野が挙げられます。特に、がん検診受診率の向上に関し、この手法を活用する自治体が多く、広島県では県が主体となり、SIB事業を組成し県内市町村に参加を募り、県と参画6市町が共同で3年間事業を行い、がん検診受診率と精密検査実施率の向上を果たしました。
実施に際しては、事業手法が新しく難解なため、成果指標の設定など様々な制度設計上の課題をクリアする必要があり、体力の乏しい市町村だけで導入することは難しいが、広域的、専門的課題を解決する県が主体的に取り組み事業化したことで、受診率の向上という実績だけでなく、今後の行政サービスの在り方に寄与するナッジ理論の共有化という効果も得られた有意義な取組であったと報告されています。
県の医療行政上の主要課題であるがん検診受診率向上について、SIB事業の趣旨を取り入れた事業に取り組んだ経験を持つ本県としても、県民の健康増進と将来的な医療費の削減による財政負担の軽減に向け、がん検診受診率向上の有効な手法の1つとして改めてPFS/SIB事業の導入を検討すべきと考えますが、いかがでしょうか。保健医療部長の見解をお聞かせください。
A 堀光敦史 企画財政部長
ノウハウの取得に取り組むべきについてお答えを申し上げます。
行政課題が複雑化する中、質の高いサービスを提供するためには、民間企業が持つノウハウなどを生かすことが重要でありPFS/SIBもその手法の1つでございます。
しかし、議員お話しのとおり、この手法には課題も多く、普及していない現状がございます。
国がPFS実施自治体などに行った調査では、十分な根拠を持った成果指標がないなど約8割が「適正な成果指標・評価方法の設定が困難」であるという課題を指摘しております。
また、民間企業などの創意工夫を引き出すためには複数年の事業期間が望ましいとされる一方、短期間での成果の確認が難しいことから、各年度の「報酬支払条件の設定が困難」という課題もございます。
このような課題もあることから、この手法はまだ発展途上にあると思います。
そのため、国は今年度創設した「PFS官民連携プラットフォーム」において情報を配信するほか、課題である成果指標に関する調査・分析を行うなど、普及に向けた取組を行っております。
県としても、プラットフォームに登録し、様々な講演やワークショップなどの活動状況の把握に努めております。
今後も情報を収集するとともに、セミナーに職員を参加させるなど、PFS/SIBのノウハウの取得に取り組んでまいります。
A 関本建二 保健医療部長
がん検診受診率向上事業に対するPFS/SIB事業の導入についてお答えを申し上げます。
がん検診の受診率向上は、県民ひとりひとりが、がん検診の重要性を自覚し毎年継続して受診するという行動変容が求められることから、受診率の一層の向上を目指すためには、新たな視点からの向上策を検討する必要があります。
議員御提案の成果連動型民間委託契約方式、いわゆるPFS/SIB事業の導入は、成果に対する対価の設定が難しい点がある一方で、民間企業等のノウハウを効果的に活用することが期待できます。
このため、がん検診受診率のさらなる向上に向けて、PFS/SIBの手法も含め、新たな方策を検討してまいります。
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