トップページ > 埼玉県議会トップ > 定例会・臨時会 > 定例会概要 > 平成28年2月定例会 > 平成28年2月定例会 一般質問 質疑質問・答弁全文 (永瀬秀樹議員)
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掲載日:2023年5月16日
Q 永瀬秀樹議員(自民)
我が国は人口減少社会に突入しました。明治維新以降、戦争の影響による一時の減少を除き、今生きている人が誰も経験したことのない状況下で、私たちは厳しい財政状況の中、高齢化と社会資本の老朽化に対処するという極めて難しい課題に直面しています。
県は、庁舎などの建物のほか道路や河川などのインフラ施設、公営企業が管理する水道施設や県立病院など、多くの資産を保有しています。このうち県有施設9,148棟に限ってみても、約半数に当たる建物は高度成長期に建てられており、築30年以上が経過し、老朽化が進み、一斉に更新時期を迎えようとしています。県の推計によれば、平成26年度から30年間にかかる維持管理平均費用は586億円、総額は1兆7,568億円となり、平成25年度ベースで試算したところ、年平均291億円、総額9,308億円が不足することが分かり、このままではなくてはならない県有施設の整備に必要な財源が十分確保できない状況となっています。
県では、県有資産総合管理方針を策定し、長期的な目標の下、県有資産の長寿命化、有効活用、スリム化を主な取組方策とし、総合的、長期的な視点に経営的管理を加えたファシリティマネジメントに取り組み、施設の最適化を図るとしています。
私は、県政が直面する重大な構造課題である県有資産の維持管理が戦略的に推進され、埼玉県において持続可能な財産経営が実現されることを願い、以下、7点お伺いいたします。
1点目として、本来、県有資産総合管理方針策定に当たっては、前提となる現状把握の観点から県有資産の見える化にも寄与する固定資産台帳の整備が必要であり、国からも平成27年度中の整備が望ましいとされています。埼玉県県有地の総面積は川口市より大きく、所沢市よりはやや小さい約70.57平方キロメートル、建物の延べ面積は本庁舎の約63倍の約623万平方メートルですが、そもそも埼玉県には公有財産の価格に関するデータがなく、土地建物それぞれ面積の公表のみにとどまっています。これではファシリティマネジメントの行いはありません。固定資産台帳の整備は急務です。現在の進捗状況と作成の見通しをお教えください。
2点目、本来、インフラも含めた県有資産総合管理方針の立案に際しては、県の目指すべき将来像を描き、理念を掲げることが重要です。その理念なしに単に費用の削減、財政の合理化だけを目的にして、箱物の統廃合を進めようとしても県民の理解を得るのは困難です。大切なのは、今後その将来像に向けていかに施設を維持し、県民サービスを提供していくかです。
現在の延長線上から推測される将来の見通しだけでなく、県内各地域が向かうべき望ましい姿を描き、それを実現するための政策代替案と各政策を採用した場合の変化を推測し、選択することが必要ですが、この点についてはどのようにお考えですか。
3点目、今後ファシリティマネジメントを推進していくとのことですが、的確に推進するためには目標と具体的取組を定め、戦略的、効率的に取り組んでいく必要があります。まず、目標の設定に当たっては、現状の把握と将来的に必要となる経費の推計を行い、経費削減の要否を見極め、削減が必要な場合における削減額を明らかにする必要があると考えられます。神奈川県では24パーセント、さいたま市では15パーセントの削減数値目標を定め、取組を進めています。
今後、知事部局所管の136施設について資産類型別計画を策定するとのことですが、そのことによりファシリティコストを幾ら削減するのか、具体的な目標数値を設定すべきと考えます。見解をお伺いいたします。
また、スリム化の一つとして、県有資産の売却が挙げられています。過去10年間の埼玉県の未利用資産の売却実績は約177億円、平成26年度単年度の神奈川県の公有資産売却額は198億円。やみくもに売ればいいというわけではありませんが、公共活用を原則として優先しつつも、今後は取組に工夫が必要と思いますが、いかがでしょうか。
4点目、具体的な取組としてどのような対策、プランを打つかが大切であります。私は、予算の拡大、予防保全マネジメントなどによる長寿命化に加え、PPPなど民間活力の活用やPRE(公的不動産)の有効活用による負担軽減に取り組むべきと考えますが、県は今後、何に重点を置いて取り組んでいきますか、見解をお聞きしたいと思います。
5点目、今後の県有資産の維持管理については、新たな法改正制度への移行、固定資産台帳の作成、資産類型別計画の策定など非常な膨大な業務量と部局横断的な取組が求められます。今後の事業推進に向け、新たな部局横断的な組織の立上げなど体制整備を図るべきと考えます。見解をお聞かせください。
6点目、県有資産の状況と計画の進捗状況を見える化し、常時県民に発信することが協働の第一歩と考えます。県民への公表については、白書や年報の発行、ホームページへの掲載、会議体の設置など様々な手法を活用すべきと提案させていただきますが、いかがでしょうか。
以上、6点、総務部長にお伺いいたします。
続いて、7点目、企画財政部長にお伺いいたします。
公共施設の最適化、維持管理は、今後全ての市町村で取組が必要です。統一的な基準による地方公会計の整備、固定資産台帳の整備、ファシリティマネジメントの推進、公的不動産の有効活用など取組は複雑で多岐にわたり、市町村だけでは質的にも量的にも取り組むには大変困難が予想されます。また、県と市町村間の連携も求められます。市町村への支援及び市町村との連携についてどのように考えていますか、見解をお聞かせください。
A 飯島 寛 総務部長
固定資産台帳の整備に係る現在の進捗状況と作成見通しについてお答えを申し上げます。
県では、国からの通知に基づき、平成29年度中に統一的な基準による地方公会計を導入することとし、これに間に合うように固定資産台帳を含めて財務書類の整備を進めています。
現在、庁内関係課において地方公会計の整備促進に係る作業部会を設け、データの収集や整理の方法を検討しています。
また、固定資産台帳の作成に当たりましては、昨年12月に国から提供を受けましたシステムに必要なデータを移行できるよう既存の公有財産管理システムの改修に取り組んでおります。28年度中にデータの移行を行い、台帳整備を進めたいと考えております。
次に、県内各地域が向かうべき望ましい姿を描き、それを実現するための政策代替案と各政策を採用した場合の変化を推測し、選択することについてでございます。
県ではこれまでも、計画的に施設の廃止、民間や市町村への移管などにより県有施設の見直しを進めてまいりました。
平成16年から12年間で、146あった公の施設を119施設に、またその他行政施設の統廃合なども進め、県有資産のスリム化に努めております。
施設の見直し、再編の実施には、その施設が地域で担ってきた役割や今後の県民ニーズ、組織のあり方等の事情を考慮する必要があります。
そこで、現在、「県有資産総合管理方針」を踏まえ、知事部局の庁舎や公の施設、136施設について施設アセスメントを実施し、今後の施設の方向性を検討しております。
このアセスメントでは、まず施設の稼働率や利用ニーズ、建物の劣化状況などの指標を分析・評価して利用状況と建物性能を把握いたします。
それらのデータを踏まえ、施設の役割、今後の需給予測、代替施設の有無など地域の実情を十分加味して議論をしております。
こうした議論を反映した資産類型別計画を作成することにより、地域の実情に合った施設ごとの今後の方向性を示してまいりたいと考えています。
次に、ファシリティコストをいくら削減するのか、具体的な数値目標を設定すべきについてでございます。
現在、個々の建物、設備の状況を調査・分析して長期保全計画を作成しております。
数値目標につきましては、この計画を踏まえて、維持管理更新費用を平準化していくための具体的な目標を設定してまいります。
次に、県有資産の売却に向けた取組の工夫についてでございます。
議員お話しの神奈川県に確認いたしましたところ、平成26年度の売却物件のうち最も高額な物件は職員住宅で約60億円となっております。物件の所在地や規模などもあり、大変大きな額となっております。
県では、これまでも県有資産のマネジメントに取り組み、経営的な視点で施設の有効活用や未利用資産の処分に努めてまいりました。
例えば、廃止した保健所を地元市町村に売却し障害者施設として活用したり、廃校となった高校を衛生研究所に活用するなど、県有施設の有効活用を図ってきたところです。
また、従来から民間売却につきましては、地元市町村への意向確認や地元自治会などに丁寧に説明した上で、慎重に行うことを基本として入札を行っております。
今年度は12の物件を対象に入札を行い、4件を売却いたしました。
今後とも、施設の状況や課題を分析して今後の方向性を決定するとともに、引き続き、売却予定の未利用資産について速やかな処分に努めてまいります。
また、入札の手法につきましても、先ごろ、事業者から事情をお伺いたしました。
事業者から、入札までにもっと時間がほしい、あるいは土地が不整形で立地が悪いなど流通性が期待できない、などの声を頂きました。
そのため、入札の周知期間を長くしたり、地元市と開発の事前協議に努めるなど入札の工夫をしてまいります。
次に、県は、今後、何に重点を置いて取り組んでいくのかについてでございます。
議員お話しのPPPやPREは、有効な取組であると認識しております。
県では、PPPとして、大久保浄水場の排水処理施設の更新及び維持管理等に、民間事業者の技術力やノウハウを活用しております。
また、PREとして、県営住宅の建替えにより余剰となった県有地を民間事業者へ賃貸することなども行っております。
その他、昨年度、埼玉りそな銀行とファシリティマネジメントの推進に関し連携協定を締結し、今年度は、公有資産の利活用事例に関するセミナーを共同で開催するとともに、研究会を立ち上げました。
今後、この研究会を活用し、民間視点でのファシリティマネジメントの推進方法について検討してまいります。
こうした取組により、県有資産のスリム化と施設の長寿命化、有効活用、これに重点を置いて取り組んでまいります。
次に、新たな部局横断的な組織の立ち上げなど体制整備を図るべきについてでございます。
ファシリティマネジメントを全庁的に進めるには、部局横断的に情報の共有が図れる体制が必要です。
そのため、今年度から教育局や警察本部を含む全部局を構成員とする「県有資産マネジメント検討委員会」を立ち上げ、この検討委員会の中で、計画の進捗管理や資産の有効活用を進めてまいります。
次に、県民への公表については、様々な手法を活用すべきについてでございます。
県有資産の状況や計画などを県民の方々に公表していくことは大変重要なことと認識をしております。
特に、公表に際しましては、内容についてわかりやすく発信する必要があります。
そのため、議員御提案の様々な手法を検討し、記者発表や県ホームページ等を活用してわかりやすい公表に努めてまいります。
また、県有資産の状況につきましては、財務書類と固定資産台帳のデータ量が多いことから、公表の仕方についても工夫をしてまいります。
A 中原健一 企画財政部長
市町村への支援及び市町村との連携についてお答えを申し上げます。
市町村の公共施設の最適な配置などを実現するため、国は平成26年4月に、各市町村が公共施設等総合管理計画を平成28年度までに策定するよう要請したところです。
本県では、全国に先駆け、平成25年度から「埼玉県市町村公共施設アセットマネジメント推進会議」を開催し、ノウハウの提供など、先進的な市町村の取組を支援してまいりました。
公共施設等総合管理計画の策定状況としては、平成27年度末で全国では30%程度であるのに対し、県内市町村では概ね半分が策定する見込みとなっております。
各市町村がアセットマネジメントを実行し、老朽化に伴い施設の廃止・撤去を行うには多大な費用が必要となります。
本県からの特区申請を受け、国は、平成26年度から公共施設の除却に対して地方債を財源とできるよう法改正を行ったところです。
また、地方公会計の整備についても現在、市町村は取り組んでおります。
平成18年度から県としても支援した結果、平成25年度決算で現時点で企業会計にならった連結財務書類を、6市町が基準モデルにより、40市町が簡易なモデルにより、作成したところです。
平成27年1月に国から改めて統一的な基準の下で他団体との比較が可能な財務書類を、平成29年度までに作成するよう要請がありました。
この財務書類の前提となる固定資産台帳の整備については、31市町村が平成27年度中に完了する見込みとなっております。
県では、平成27年度に監査法人や国の専門家を講師として市町村の担当者向けの研修会を2回開催するなど、支援を行っているところでございます。
さらに、各市町村においては、遊休資産の有効活用にも取り組んでいるところでございます。
既に公共施設等総合管理計画にも施設跡地などの財産の売却を掲げている市町村もございます。
県といたしましては、市町村への総合コンサルティング事業等を通じて、市町村のアセットマネジメントなどの取組を引き続き支援してまいります。
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