トップページ > 埼玉県議会トップ > 定例会・臨時会 > 定例会概要 > 平成28年2月定例会 > 平成28年2月定例会 代表質問 質疑質問・答弁全文 (山川百合子議員)
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掲載日:2023年5月16日
Q 山川百合子議員(民主・無所属)
先月9日、狭山市で3歳の女児、羽月ちゃんが、虐待によって尊い命を失いました。捜査が進むにつれて、母親と同居の男性による虐待の様子が明らかになってきました。ロープで縛ったり、食べ物を与えなかったり、熱湯を顔にかけたなどと報道をされています。
虐待のサインは出ていました。しかし、通報で駆け付けた警察官は、母親と男性から説明を聞き、羽月ちゃんの体に目立った傷などが確認されなかったため、虐待情報集約システムの登録や児童相談所への通告を行っていなかったということです。児童虐待防止法は、虐待が疑われるときに福祉事務所や児童相談所への通告を義務付けてはいますが、警察の対応は規定されていません。
失われてしまった幼い命は、戻ってくることはありません。まだ3歳、まだたった3歳の羽月ちゃんは、助けを求めることもできない中で、愛情と安心感を与えてくれるはずの家庭の中で死んでいかなければなりませんでした。私たちは、みんなで虐待は犯罪であるという強い認識を持つべきだと思いますが、いかがでしょうか。虐待が、傷害事件や傷害致死、さらには殺人事件にエスカレートする前に、社会全体で虐待を防止する必要があると思います。
なかなか世間の目に触れない育児放棄の状態をネグレクトといいますが、これも既に刑法第217条、遺棄、218条、保護責任者遺棄等、219条、遺棄等致死傷として規定されています。しかし、これらが虐待で明確に犯罪なのだという認識が、私たち日本人は余りにも希薄ではないでしょうか。アメリカ合衆国の一部の州では、子どもたちだけで留守番させただけで児童虐待センターに通報されて親が逮捕されるほど、厳しい罰則を定めている実例もあると聞いています。
私たちの会派は、全国に発信できる先行モデルを埼玉からという意気込みで政策提言をさせていただいています。これは、埼玉から日本を変えるという上田知事のスピリットに心から共感するものでもあります。
そこで、御提案なのですが、日本でも刑事部門が主に暴力団を取り締まり、県民全体の防犯意識を啓蒙する暴追センターが存在するように、虐待についても、県警本部、所轄警察署に、虐待を未然に防ぎ取り締まる部局を設置する、また、埼玉県が全国に先駆けて虐待追放センターを創設し、虐待排除に向けて県民全体で取り組む体制がつくれないものか、知事及び警察本部長に伺います。
決して児童虐待は福祉事務所や児童相談所だけの所管事務ではありません。しっかりと知事部局と警察本部、所轄警察署が連携して、民間セクターとのパートナーシップを構築しながら、二度と羽月ちゃんのような事件を再発させない強い決意を持って取り組む必要があると思うのです。是非、それぞれ前向きな御答弁をお願いをいたします。
A 上田清司 知事
御指摘がありました狭山市の3歳女子の死亡事故については、大変痛ましい事件であります。
こうした不幸な事件が二度と起こってはならないという思いは誰しも共通だと思います。
今回の事件では、乳幼児健診を受けていなかったこと、さらに、110番通報があったという二つのシグナルがありました。
それぞれの時点で、一つ一つのシグナルそのものは虐待とは判断できなかったというふうに聞いておりますが、小さなシグナルでも、せめて二つ以上重なれば、それは何らかの形で虐待の可能性があるというような判断ができるような仕組みにならないかということを私は考え、そうしたことを早急に取り組むべきではないかという提案を現場のほうにさせていただきました。
早速、今回の事件を受けて、市の関係課と、県の児童相談所と、最寄りの警察署が情報を共有し、複数のシグナルが交差した場合には市が窓口になって対応するルールを作らせていただいたところです。
このルールが県内全域で確実に行われるような形ができれば一番よい訳ですが、往々にしてルールは作ったけれども、それが十分機能しないということになりかねない部分もなきにしもあらずですので、是非、何らかの形でこうした複数のシグナルが稼働するような、そういう訓練などを現場でやっていただきたいと私は考えております。またそうすべきだと担当課に指示をしたところです。
また市においても「要保護児童対策地域協議会」で、この事件の詳細な検証作業を進めており、更なる改善ができないかと検討も進めているようでございます。
児童虐待防止に県民全体で取り組むことは重要であります。
そのためには、まず児童虐待に対する意識を高める必要があるという議員の御指摘はまさにそのとおりであります。
県では、オレンジリボンをシンボルマークとして、児童虐待をなくすことを広く呼び掛ける運動を市町村や警察と一緒に展開しております。
また、この運動に賛同いただいた企業や団体を応援企業として登録し、社員の方々への周知やポスターの掲示などにも取り組んでいただいております。
現在、493の企業や団体に御賛同もいただいているところでございます。
議員御提案の専門部局や虐待追放センターをつくることについては、埼玉県暴力追放・薬物乱用防止センターのように実効性のある組織がつくられれば大変よいのではないかという風に思っております。こうした問題でありますが、まさに実効性がどう作られるかが課題でありますので、そうした課題については研究をさせていただきたいと思います。
A 貴志浩平 警察本部長
狭山市で3歳の女児が亡くなられた事件につきましては、県警察といたしましても、重く受け止めております。
この事件につきましては、昨年6月と7月に、2回の110番通報が寄せられ、それぞれ警察官が現場臨場いたしましたが、当時、児童の身体確認や家族の事情聴取などを行った結果、虐待はないと判断されたものであります。
事件捜査において、当該女児への身体的虐待行為は、昨年8月頃から始まったと認められるところでありますが、今後における同種事案防止のため、現在、事件の全容解明に努めているところでございます。
議員ご提案の児童虐待を取り締まる部局の設置につきましては、警察本部では、平成26年4月から全国に先駆けまして、人身安全初動指揮本部を設置し、部門横断的に24時間体制で、児童虐待など、人の生命、身体に係る事件の未然防止と警察署によるこれら事件の早期検挙を指揮・指導する体制を確立しているところでございます。
県警察といたしましては、被害児童を早期に発見し、重大な事態に至る前に救出救護することは、重要な責務であると考えておりまして、今後も、児童虐待事案の通告を徹底するとともに、民間も参加しております市町村の要保護児童対策地域協議会を通じた情報共有を一層強化し、これらとの連携のもと、悲惨な児童虐待事案の防止に努めてまいります。
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