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掲載日:2022年8月15日
Q 井上将勝 議員(民主フォーラム)
2016年に厚生労働省が公表した調査結果によると、母子世帯の71.4%が「養育費を受け取っていない」と回答したそうです。養育費を支払うのは男性とは限りませんが、不払いで被害を受けているのは母子世帯が圧倒的に多いのが現状で、驚くことにこの数値は10年間でほとんど改善が見られておりません。
母子世帯の平均年収は、100万円未満が22.3%、100万円から200万円未満が35.8%と、実に母子世帯の約6割が年収200万円以下のワーキングプアの状況にあります。社会全体で男性より女性の平均賃金が低いこと、離婚する前は専業主婦やパートなどの仕事に就いており、離婚後にいきなり賃金水準の高い職業に就けないこと、新たに職探しをしても子持ち、時短勤務などで難色を示されるなど様々な事情があるからです。
こうした母子世帯の年収の低さは、そのまま子供の貧困に直結します。日本の子供の貧困率は13.9%と先進国の中でも高い水準ですが、ひとり親世帯は50.8%と深刻な状況にあります。そうした母子世帯において養育費が支払われるか支払われないかは、大げさではなく生死に関わる重大な問題です。
養育費の取り決めを離婚時にするにも、公正証書を取り交わすにはお互いの合意が必要であり、取り交わしていたとしてもその後支払われなくなったときに法的手続を踏んで回収することは、シングルマザーにとって時間的、金銭的に相当ハードルが高く、DV被害者など離婚原因によっては相手方と関わりたくないと考える人も多いでしょう。支払われない養育費を親の自助努力だけで回収するには無理があります。主要先進国では、養育費が子供の生活に関わる重大な問題であることから、行政が養育費を立て替えたり肩代わりして代わりに回収するなど積極的に関与しています。
我が国においても来年5月までに施行される改正民事執行法によって、養育費を払わない親の預貯金や給与、保有株式などの情報が入手できるようになりますが、それもやはり裁判所の手続を経なければならず、抜本的解決にはなりません。ひとり親世帯の養育費の確保について、県としてもっと関わることはできないでしょうか。
例えば兵庫県明石市や滋賀県湖南市、大阪市では養育費保証サービスを行う保証会社に未払い養育費の立替えを委託し、その保証料を行政が補助するという事業を導入しています。また、公正証書や調停証書の作成に係る費用の補助、弁護士への無料相談の実施なども行っています。県もこうした政策を積極的に導入すべきです。
母子世帯の養育費の問題は、単なる当事者間の問題ではありません。行政が主体的に関わり、母子世帯の貧困を防止することで貧困家庭を減らし、それに費やされるはずだった将来の自治体負担も減らすことにつながります。何よりも子供の貧困連鎖を止め、子供の未来、幸せになる権利を守るため、養育費は逃げた者勝ちを許さず、未払い養育費の確保に向け、県は積極的に関わっていくべきと考えますが、福祉部長の御所見をお伺いいたします。
A 知久清志 福祉部長
ひとり親家庭の中には、養育費を受け取れずに苦しい生活を強いられる方が多く、大変深刻な問題となっています。
こうした中、令和2年には改正民事執行法が施行され、未払いの相手方から強制的に養育費が受け取りやすくなります。
しかし、この改正により恩恵を受けられるのは、あくまで公正証書など公の文書で養育費の取決めをした人に限られます。
このため、養育費の確保にあたっては離婚時に養育費についてきちんと取り決め、口約束でなく書面に残しておくことが何よりも重要です。
全国ひとり親世帯等調査によると、母子世帯の半数以上が離婚時に養育費の取決めをしていないという結果が出ています。
そこで県では市町村に対し、法務省作成の取決め書に関するリーフレットの活用を通じて対象者へ周知するよう働きかけています。
加えて、離婚時の手続きに関するホームページを開設し、養育費に関する取決めの重要性などについて情報提供を行っています。
また、養育費の未払いでお困りの方に加えて、そもそも取決めがなされておらず悩んでいる方への支援も重要です。
県福祉事務所では、母子・父子自立支援員がひとり親の抱える様々な悩み相談に対応するとともに、相談が調停など法的な内容に及ぶ場合は弁護士による無料相談へつなげています。
法的な対応にならざるを得なくなった場合は、養育費確保のための裁判費用の貸付も行っています。
今後は、養育費の未払いで悩んでいる方を対象に、養育費確保に関するセミナーを開催します。
議員お話の養育費保証を導入している自治体の事例については、少子化対策協議会等で市町村に情報提供してまいります。
ひとり親家庭が安心して自立した生活ができるよう、養育費の確保に関する周知啓発や相談対応などの支援にしっかり取り組んでまいります。
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