環境科学国際センター > ココが知りたい埼玉の環境 > 「PM2.5」ってどんな物質なの?
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掲載日:2023年12月13日
この記事はニュースレター第19号(平成25年5月発行)に掲載したものです。
今年の冬はPM2.5による大気汚染がひどくなったというニュースをよく見聞きしました。
PM2.5とはどんな物質なのでしょうか?それはどこから出てくるのでしょうか?
埼玉県ではどのくらい濃度が高いのでしょうか?
大気環境担当 長谷川 就一
同 米持 真一
ニュースで初めて「PM2.5」という言葉を知った方も多いと思いますが、実はPM2.5は以前から大気汚染物質の一つとして、調査や研究が行われてきました。
PM2.5とは、大気中に浮かんでいる様々な大きさの粒子状物質(Particulate Matter)のうち、2.5μmより小さいもののことです。1μmは1000分の1mmですので、肉眼では見ることのできない、非常に小さな粒子です(写真)。PM2.5とは、ある特定の物質ではなく、多種多様な物質(化学成分)を含んだ、2.5μmより小さい粒子すべてを指します。
写真 フィルターの繊維に捕捉されたPM2.5
では、こうしたPM2.5がどこから出てくるかといいますと、自動車や工場、焼却炉など、何かモノを燃やせばその排ガスから出てきます。ですから、このほかにも船舶や火力発電所など、あるいは家庭や飲食店の厨房や庭先での落葉焼きからもPM2.5は出るのです。こうして粒子の状態で大気へ出ていくものを一次粒子と呼びます。それだけでなく大気中に存在する気体、例えば硫黄酸化物(SOX)や窒素酸化物(NOX)、揮発性有機化合物(VOC)といったものが、大気中で化学反応を起こしてPM2.5へ変化するものもあります。こうしてできる粒子を二次生成粒子といいます。SOXやNOXは主に燃焼によって出てきますし、VOCはガソリンなどの燃料や工場などで使われる塗料や溶剤などから出てきますので、一次粒子と同様に二次生成粒子も人間活動が原因と考えられます。しかし、実は、植物(森林など)もVOCを多く出すことから、自然由来の二次生成粒子もあります。このように、PM2.5は私たちの身の回りのあらゆるところから出てくると言っても過言ではありません。
さて、埼玉県ではPM2.5濃度がどのくらい高いかといいますと、主に住宅地等にある測定局での平成23年度1年間の平均値は、場所によって15~18μg/立方メートル*でした。これは、国が定めた年平均の環境基準(15μg/立方メートル)を若干上回っています。ただ、PM2.5は、長期的には低下してきています。この傾向は、図に示すように当センターで平成12年から継続しているPM2.5の測定によって明らかになっています。また、平成23年度1年間に、国が定めた日平均の環境基準(35μg/立方メートル)を上回った日数は、場所によって12~27日ありました。一時的にPM2.5が高くなるのは気象状況の影響もあります。しかし、呼吸器疾患をお持ちの方などでは症状が現れる可能性もありますので、日平均の環境基準を上回る日数も減らしていかなければなりません。
今年の冬、中国ではPM2.5による大気汚染がひどく、その影響が日本にも及ぶと心配されました。ただ、埼玉県の今年1~2月の平均値は昨年の同時期よりも低く、今のところ顕著な影響は見られません。今後とも日本国内が原因のPM2.5について、さらなる低減に取り組んでいくことが重要です。当センターで行っているPM2.5の成分分析の結果では、年々一次粒子が低下して最近では二次生成粒子の割合が多くなっています。そのため、一次粒子の排出をさらに抑えるとともに、未解明な点が多い二次生成メカニズムを調べ、VOCなど二次生成粒子の原因となる物質の排出も押さえていく必要があります。
なお、当センターのホームページに、当センターにおけるPM2.5への取組についての特設ページを設けていますので、併せてご覧ください。
図 埼玉県加須市におけるPM2.5質量濃度の推移
(赤線は各年度の年平均値、1週間連続採取により測定)
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