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掲載日:2023年1月16日

水銀の規制が厳しくなったと聞きました。水銀廃棄物はどのように排出したらよいですか?

この記事はニュースレター第39号(平成30年4月発行)、第40号(平成30年7月)に掲載したものです。

Question - 質問します

水銀の規制が厳しくなったと聞きました。水銀廃棄物はどのように排出したらよいですか?

Answer - お答えします

資源循環・廃棄物担当 長森 正尚

水銀廃棄物に関するご質問ですが、内容的に排出事業者が対象になりますので、専門用語が多く出てくることをご了承ください。

水銀問題と水銀に関する水俣条約

 熊本県の水俣湾に排出された工場排水が原因で発症したメチル水銀中毒症(通称、水俣病)を皆さんご存知と思います。重篤な健康被害や環境破壊を起こさないためには、水銀等の有害化学物質を適正に処理しなければなりません。しかしながら、世界的にはその有用性から今なお多くの分野で使用されており、環境への人為的な水銀排出は続いています。そこで、昨年8月に「水銀に関する水俣条約」が発効され、水銀の供給、使用、排出、廃棄等の総合的な対策により、地球的規模の水銀汚染防止が進められています。それに伴い、国内では「水銀による環境の汚染の防止に関する法律」の制定及び関係法令が改正されました。水銀の使用を制限することにより製品の代替えが進むことや、水銀廃棄物の処理もより厳しい対応が求められます。

 さて、日本では、行政、産業界、市民それぞれが役割を担いながら、水銀対策に取り組んできました。制度面では、環境基準や指針値の設定、排出抑制を整備してきました。身近なところでは、自治体による使用済み乾電池や蛍光ランプの分別回収があります。産業界では、製造過程での水銀使用の削減、水銀フリー代替品の開発(乾電池の無水銀化等)等を進めてきました。これらの取り組みにより、国内の水銀需要はピーク時の2,500トン(1964年)から8.7トン(2010年)まで減少し、それに伴い水銀廃棄物等の量も減少しています。水銀廃棄物等のうち年間50トン以上の水銀が回収・再生され、そのほとんどが輸出されているのが現状です(図を参照ください)。なお、水銀廃棄物とは「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」で規制される「廃水銀等」「水銀汚染物」「水銀使用製品廃棄物」を指します。

 水銀廃棄物等のマテリアルフロー図

水銀廃棄物の処理

 回収方法としては、水銀を600〜800℃で気化させる焙焼処理が一般的で、気化した水銀蒸気は冷却あるいは吸着により液体として取り出されます。なお、蛍光ランプ等の場合は、破砕や洗浄といった前処理も必要です。家庭で不要な水銀使用製品が発生したときは、自治体等の分別回収ルートに乗せる必要があります。可燃物や不燃物と分けずに出してしまうと、収集時に割れたり、焼却時の排ガスに混ざったり、水銀が環境に出る恐れがあるため注意してください。水銀廃棄物の処理基準が変わったため、水銀を含む産業廃棄物を今までどおりに排出することが難しくなりました。

水銀廃棄物の分類

 水銀廃棄物とは、廃水銀等、水銀汚染物、水銀使用製品廃棄物の総称です(表)。廃水銀(一般廃棄物)、廃水銀等(産業廃棄物)は特別管理廃棄物に該当します。ここで特別管理廃棄物とは、「爆発性、毒性、人の健康等の被害を生ずる恐れがある性状を有する廃棄物」のことで、特別管理一般廃棄物及び特別管理産業廃棄物(以後、特管産廃といいます)として規定し、必要な処理基準を設け、通常の廃棄物よりも厳しい規制を行っています。廃水銀等は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則で指定されている17の特定施設から生じた水銀等が対象です。その他、水銀汚染物(一般廃棄物を除く)又は水銀使用製品廃棄物から回収した“廃水銀”も該当します。

 水銀汚染物のうち、特管産廃の特定施設から排出され、含有量基準値を超過する廃酸及び廃アルカリ、若しくは埋め立ての可否を判定する溶出基準値を超過する鉱さい、ばいじん及び汚泥が特管産廃にあたります。さらに、“水銀含有ばいじん等”が、大気への水銀排出の観点から含有量で規制されることになりました。他方、一定濃度以上の水銀又はその化合物を含有す水銀汚染物は、キレート処理やセメント固化では水銀溶出を確実に抑制できないため、あらかじめ水銀を回収することが義務付けられました。次に、水銀使用製品廃棄物は、水銀を使用している製品が廃棄物となったものを指し、特管産廃には該当しません。水銀使用製品の例として、水銀体温計や蛍光ランプがあります。

水銀廃棄物の分類と規制を記載した表

水銀廃棄物の保管・排出方法 

 廃水銀等は、特管産廃になったことから、排出事業者に(1)特管産廃管理責任者の選任、(2)保管基準の遵守、(3)特管産廃処理業者への委託が義務付けられました。水銀使用製品産業廃棄物や水銀含有ばいじん等は、特管産廃に該当しませんが、処理基準が追加されました。排出事業者は、保管場所の掲示板に産業廃棄物の種類と、水銀使用製品産業廃棄物や水銀含有ばいじん等が含まれる旨を示さなければなりません。また、処理を委託する際の新規契約や契約更新時に水銀使用製品産業廃棄物等が含まれている旨を契約書に記載しなければなりません。その他、環境省が、医療機関等に使用せずに保管されている水銀血圧計等の回収事業を進めています。

 水銀廃棄物の処理基準が変わりましたが、埼玉県としても水銀の適正処理を推進していきます。なお、詳しい情報は、水銀廃棄物ガイドライン(環境省)等をご覧ください。

 

お問い合わせ

環境部 環境科学国際センター 研究推進室 資源循環・廃棄物担当

郵便番号347-0115 埼玉県加須市上種足914 埼玉県環境科学国際センター

ファックス:0480-70-2031

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