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掲載日:2023年1月24日
この記事はニュースレター第25号(平成26年10月発行)に掲載したものです。
「ネオニコチノイド系殺虫剤」って何ですか?
化学物質担当 大塚宜寿
最近、ネオニコチノイド系殺虫剤という言葉を新聞等でも目にするようになりました。ネオニコチノイド系殺虫剤とは、平成5年頃から使用されている殺虫剤の総称です。現在、7つの化学物質が農薬取締法に基づいてネオニコチノイド系殺虫剤として登録されています。昆虫の神経伝達を阻害することで殺虫活性を発現し、適用できる害虫の種類が広いという特徴があります。また、脊椎動物への急性毒性が低く、環境中で分解されにくく残効性があり、水溶性で植物体への浸透移行性が高いことなどから、様々な植物に広く使用され、農作物の生産性向上等に役立ってきました。しかしながら、近年、昆虫などの無脊椎動物だけでなく脊椎動物に対する免疫機能や生殖機能の低下などの慢性毒性が報告されるようになり、直接的及び間接的な生態系への影響が懸念されるようになってきました。ミツバチ減少の原因物質としても疑われており、使用を規制する国もでてきました。
ネオニコチノイド系殺虫剤は、水溶性であることから水環境へ移行することが考えられ、事実、河川水等からの検出事例が報告されるなど、環境汚染物質としての関心が高まってきています。しかしながら、本殺虫剤の環境中濃度の測定例はまだ少なく、汚染実態は明らかとなっていませんでした。
さて、それでは埼玉県内の河川水には、いったいどれくらいのネオニコチノイド系殺虫剤が含まれているのでしょうか?この疑問に答えるため当センターでは分析方法を開発し、平成25年度に県内の主な35河川の38地点について、ネオニコチノイド系殺虫剤7化合物の河川水濃度を季節ごとに4回調べました。その結果、山間地にある荒川上流部の1地点以外のすべての調査地点でネオニコチノイド系殺虫剤が検出されたことから、県内において本殺虫剤が広く拡散していることがわかりました。7化合物のうち国内出荷量の多いジノテフランの濃度が、他のネオニコチノイド系殺虫剤と比較して高くなる傾向でした。ネオニコチノイド系殺虫剤の濃度は、使用機会が増加すると想定される夏季に高くなる傾向がありました。検出された最高濃度は、ジノテフランの250ng/L(ngは10億分の1グラム)でした。出荷量の少ないニテンピラムやチアクロプリドは、ほとんど検出されませんでした。
日本では、ネオニコチノイド系殺虫剤について河川の環境基準は今のところ設定されていませんが、水質汚濁に係る農薬登録保留基準が設定されています。ジノテフランを含めてネオニコチノイド系殺虫剤7化合物の検出濃度は、水質汚濁に係る農薬登録保留基準を大幅に下回っていました。これらの値と比較すると、県内河川水のネオニコチノイド系殺虫剤の濃度は問題のないレベルにあると考えられます。しかし、県内の河川水においては、ネオニコチノイド系殺虫剤の検出率が高かったこと、ネオニコチノイド系殺虫剤が生態系へ与える影響も疑われている物質で、その詳細について明らかとなっていないことから、今後も注視する必要があると考えられます。
表1 埼玉県内主要河川における河川水中のネオニコチノイド系殺虫剤の検出率、検出された最高濃度、全国出荷量及び水質汚濁に係る農薬登録保留基準
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