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掲載日:2024年1月17日

川の水にも蛍光物質が溶けていると聞きました。どのようなものがあるのでしょうか。

この記事はニュースレター第62号(令和6年1月発行)に掲載したものです。

Question - 質問します

川の水にも蛍光物質が溶けていると聞きました。どのようなものがあるのでしょうか。

Answer - お答えします

水環境担当 池田 和弘

川の水が鮮やかな蛍光色を呈していることは、通常ありません。しかし、微量な光まで測定できる装置で調べると様々な蛍光物質が川の水に溶けていることが確認されます。その主なものとして、タンパク質や腐植物質があります。また、日常生活で使用している化学物質の一部は蛍光物質であり、それが検出されることもあります。ただし、それらの濃度は低いため、人の目では蛍光を感じることはできないのです。

蛍光物質とは

蛍光物質とは、光等のエネルギーを吸収し、特定の波長の光を放出する物質です。光は波長ごとに人の目に感じさせる色が異なります。たとえば、波長400nm付近の光は紫色、波長580nm付近の光は黄色、波長700nm付近の光は赤色に見えます。蛍光ペンにも蛍光物質が含まれておりイメージできると思いますが、蛍光物質は太陽光や室内光を吸収し、鮮やかな色の光を放出します。例えば、一部の洗剤に含まれている蛍光増白剤4,4′-ビス(2-スルホスチリル)ビフェニルは、紫外線を吸収し、波長430nm付近の青紫色の光を放出する蛍光物質です。洗濯により蛍光増白剤のついた白いシャツは青白く輝やき、見た目に鮮やかになります。

入浴剤に含まれる着色剤であるフルオレセインという物質は、520nm付近の波長の光を放出し、その水溶液は鮮やかな黄緑色を呈します(図1)。栄養素であるビタミンB2も蛍光物質で、それが入っている飲み物にブラックライトを使って紫外線を当てると鮮やかな緑色に輝きます。

図1 フルオレセイン溶液

左:10 mg/L

右:0.00005 mg/L

左は耳かき1杯の粉を1Lの水に溶かしたレベル。右は冬季の河川水中濃度レベル。

県内河川に溶けている蛍光物質

2022年7月奈良県生駒市の川が鮮やかな緑色に染まる事件がありました。この原因物質と考えれているのが、先に述べたフルオレセインです。このような水質事故の時以外は、河川水が鮮やかな蛍光色に染まることはありません。では、埼玉県の河川水には、蛍光物質は溶けていないでしょうか。実は、河川水には様々な蛍光物質が溶けてます。その代表的な物質は腐植物質とタンパク質です。

腐植物質は動植物の遺体等が微生物によって分解される過程で作り出される有機物です。腐植物質にもいろいろな種類がありますが、埼玉県内の河川水を調べてみると、大体400~450nmの波長の光を放出するものが多いようです。ただし、腐植物質もタンパク質も水中の濃度はそれほど高くないため、鮮やかな色を川の水から感じることはありません。しかし、蛍光分光光度計という微量レベルの光でも検知できる装置を使用して分析すると、河川水中には天然由来の様々な蛍光物質が溶けていることが確認できます。

一方、日常生活で使用している化学物質の一部は蛍光物質であり、それらが検出されることもあります。蛍光分光光度計で調べると実はフルオレセインも埼玉県内の河川に溶けていることが確認できます。その濃度は30ng/L前後であり、耳かき一杯の粉試料を300tの水に溶かした程度の微量なレベルです。誰かがフルオレセインをまいたわけではありません。その由来はみなさんが入ったお風呂の水と考えられます。河川水を毎月調べてみると、入浴剤をよく使う冬に濃度が高くなります(図2)。逆にいうと河川水からフルオレセインが検出されるということは、河川に家庭からの排水が入っているということを意味します。この蛍光に注目すれば、足跡から探偵が犯人を追跡するように、家庭排水がどこからどれだけ入ってくるかを追跡することができるかもしれません。

図2 県内河川中フルオレセイン濃度(R4年~R5年)

お問い合わせ

環境部 環境科学国際センター 研究推進室 水環境担当

郵便番号347-0115 埼玉県加須市上種足914 埼玉県環境科学国際センター

ファックス:0480-70-2031

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