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掲載日:2023年1月24日
この記事はニュースレター第46号(令和2年1月発行)に掲載したものです。
化粧品やシャンプーに含まれるシリコーンってどんな物質?その環境リスクは?
化学物質・環境放射能担当 堀井 勇一
シリコーンは、さらっとした肌触りや馴染みをよくするため、化粧品やシャンプー等の日用品に含まれている物質です。このうち環状構造のもの(環状シロキサン)については、日本や諸外国で化学物質リスクが評価され、その管理の在り方が議論されています。また、環状シロキサンに関する環境調査・研究も進められており、その環境リスクが少しずつ明らかになってきました。以下に詳しく説明します。
シリコーンは、耐熱・耐寒性があり化学反応を起こしにくく、その化学構造によりオイル、ゴム、樹脂状の性状を持つことができます。実に数千種類の製品が存在し、建設、電気・電子、自動車製造など様々な産業分野や日常生活で活躍しています。
これらシリコーン製品の多くは、環状シロキサンと呼ばれるシリコーン化合物を原料に合成されます。また、冒頭で紹介したように、環状シロキサンは多くの日用品に添加されています。環状シロキサンは、いわばシリコーン工業の主役です。自宅の日用品を確認したところ、シリコーンを含む製品(環状シロキサンに限らない)が多数見つかりました(写真)。シリコーンは、これらの製品を使用することによって環境中に排出されるわけです。つまり、環状シロキサンの排出源の一つは日用品と言えます。
写真 自宅で見つかったシリコーンを含む日用品
環状シロキサンは、いったん水環境中に放出されると分解しにくく、水底の泥に吸着して長期間にわたり残留します。欧州では、2020年1月から環状シロキサンの一部(D4及びD5)について、水環境へ排出される日用品(シャンプー等)への使用が制限されます。また、大気へ排出される日用品(スプレー等)への使用制限も検討が進められています。これは、環境中への排出量の低減が目的であり、環状シロキサンを含む製品の使用が人の健康を害するとの意味ではありません。現在のところ、このような制限が設けられているのは欧州のみです。
国内では、2018年4月に環状シロキサンの一部(D4及びD6)が化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律の監視化学物質に登録されました。これは、環状シロキサンの有害性に関する情報が十分でないため、監視していこうという処置です。
化学物質の環境リスクを評価するためには、環境中の濃度を知る必要があります。これは、環境リスクが化学物質の有害性と暴露量(濃度)から推定されるためです(第22号参照)。環境科学国際センターでは、水中の環状シロキサンを高感度に検出できる方法を開発し、この測定法は国際規格(ISO)として採用されました。この測定法を用いた国内最先端の環境実態調査として、県内の河川や下水処理場の水中における環状シロキサンの濃度の測定を2012年から行っています。これにより県内の環状シロキサンの河川水中濃度の推移や年間排出量が明らかになってきました。現在、県内河川水について水生生物に影響を及ぼす濃度の検出事例はなく、環境リスクは低いものと判断されます。また、環境省は今年度の化学物質環境実態調査の中で、全国の水質・魚類を対象に環状シロキサンのモニタリングを開始しました。今後、国内の現状が明らかになってくるものと期待されます。
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