環境科学国際センター > ココが知りたい埼玉の環境 > 埼玉県内の湖や沼の水は、汚れているのでしょうか?
ここから本文です。
ページ番号:197522
掲載日:2023年1月24日
この記事はニュースレター第51号(令和3年4月発行)に掲載したものです。
埼玉県内の湖や沼の水は、汚れているのでしょうか?
水環境担当 田中 仁志
県では、県内7湖沼を対象に年2回(夏季と冬季)の水質調査を実施しています。一般に湖沼の有機汚濁の指標となる化学的酸素要求量(COD)の結果から評価すると、川のように、年々、きれいになっているとは言えないようです。なお、湖沼の汚れ(濁り)や着色の原因は、植物プランクトン(藻類)が増えたことによる場合が多いです。しかし、藻類は湖沼に棲む魚などの動物の餌となるため、とても大事な役割を担っています。
精選版 日本国語大辞典によると、「湖沼」は「みずうみとぬま」と説明されています。両者にはどのような違いがあるのでしょうか。日常生活で「湖」と「沼」の違いについて、あまり意識することはないかも知れません。スイスの湖沼学者フォーレルは「湖」と「沼」を、主として深さと水生植物群の有無から区別しています。「湖」は、沿岸(抽水)植物の侵入を受けないだけの深さの中央部を有する水深(5~10m)を持つ水塊、「沼」は、沈水植物が至る所に繁茂する水深(1~5m程度)を持つものとしています。また、国は、湖沼の水質汚濁を防ぐための環境基準を設定していますが、その場合の湖沼は「天然湖沼及び貯水量が1,000万立方メートル以上であり、かつ、水の滞留時間が4日間以上である人工湖」とされています。本稿では、以上を踏まえ、「湖沼」の水質を取り扱います。
では、県内の湖沼の水は、汚れているのでしょうか?県では湖沼の環境保全を図るため、昭和56(1981)年度から、現在は7湖沼(人工湖沼:5、天然湖沼:2)を対象に年2回(夏季と冬季)の水質調査を実施しています。人工湖沼は、いずれも1,000万立方メートルに満たない小規模なものです。湖沼水の汚れ(有機汚濁)を示す水質指標は、一般に化学的酸素要求量(COD)が使われます。調査開始以来、令和元(2019)年度までの78回の調査に基づくCODの変化を、人工湖沼は図1に、天然湖沼は図2に示しました。CODの値はギザギザしていますが、これは夏季は大きく、冬季は小さいという季節変化を繰り返しながら推移しているためです。一方、調査年度とCODの関係について、一次回帰分析を行なった結果、柴山沼は比較的強い(R2=0.19)、間瀬湖は弱い(R2=0.07)関係性があり、CODは徐々に増加(汚れが進行)していると考えられました。なお、他の5湖沼では、ほとんど相関がない結果となり、はっきりとした改善は見られないようです。CODで見た県内湖沼の水質は、流れがある河川とは異なり、改善ははっきり見て取れないといえそうです。一般に、植物プランクトン(藻類)は、光合成色素としてクロロフィルaを有することから、クロロフィルaは藻類の現存量の指標になります。藻類は有機物ですから、湖沼において藻類が増えると、CODの値は大きくなるとともに、水は濁ります。間瀬湖も柴山沼もCODとクロロフィルaにかなり強い正の相関が見られました。その上、湖沼で藻類が増えると水が濁ったり、緑色や茶色に見えるので、汚れた印象を受けるかもしれません。しかし、藻類は湖沼にすむ魚などの動物にとって、餌として重要なことが知られています。今後、地球温暖化などの影響により、湖沼水の水温が上昇すると、藻類の種類や増え方が変化する可能性があります。今後も水質調査を継続して実施する必要があります。
お問い合わせ
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください