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掲載日:2023年1月16日
この記事はニュースレター第14号(平成24年1月発行)に掲載したものです。
ゴミを燃やすと、どうして有毒な「ダイオキシン」ができるのですか?
化学物質担当 大塚 宜寿
ゴミを燃やすと難分解性で有毒な環境汚染物質である「ダイオキシン」ができることはよく知られています。この「ダイオキシン」は,ジベンゾパラジオキシン,ジベンゾフラン,ビフェニルという3つの化合物に塩素が結合した化合物群の総称です。塩素の数や結合する位置によって200種以上の化合物が存在します。単一の化合物でないことを明示するためにしばしば「ダイオキシン類」といわれます。ダイオキシン類は,化合物により毒性が異なるため,最も毒性の強い化合物の毒性にそれぞれ換算して合計した毒性等量(TEQ)で環境基準や排出基準と比較します。
埼玉県内で1年間に環境中に排出されたダイオキシン類の量(TEQ)は,平成9年度では338g-TEQでしたが,年々減少して平成14年度には平成9年度の9割以上の削減を達成し,以降その状態を維持し続けています。平成22年度では平成9年度比97%減の9.0g-TEQとなりました。環境中に排出されるダイオキシン類のほぼ100%が大気中へと排出されたものです。このうち,小型焼却炉,民間廃棄物焼却施設,市町村等ごみ焼却施設が85%を占め,廃棄物焼却を起源とするダイオキシン類が高い割合で排出されていることがわかります。
廃棄物焼却炉は,焼却物を完全燃焼させるために800℃以上で焼却することが義務づけられています。それは,このような高温で焼却を行えば,ダイオキシン類でも分解するからです。しかし,このような焼却で発生したガスでも,冷却する過程においてダイオキシン類が生成してしまうことが知られています。この生成反応はデノボ合成と呼ばれています(図)。
図 燃焼ガス中でダイオキシンが生成するイメージ
デノボ合成は,燃焼温度よりも低い300~500℃程度で進行することが知られています。また,200℃以下では,デノボ合成はほとんど進行しないと考えられています。したがって,800℃以上の高温で完全燃焼してできた燃焼ガスがゆっくり冷えていくとデノボ合成は進行してダイオキシン類の生成量は増加すると考えられています。デノボ合成によるダイオキシン類の生成を抑えるためには,燃焼ガスが300~500℃で滞留する時間をできる限り短くするように,速やかに冷却することが効果的と考えられています。また,デノボ合成によるダイオキシン類の生成を抑制するためには,廃棄物中の塩素の量を少なくすることも効果があると考えられています。なお,1時間あたり100kg以上焼却する焼却炉には冷却設備を設置することが義務づけられています。焼却炉から排出される焼却ガスは気体成分と固体成分(ばいじん)で構成されていて,ダイオキシン類はその両方に存在しています。そこで,より効果的にダイオキシン類の排出を抑制するために,原則1時間あたり30kg以上焼却する焼却炉には,ばいじんの除去を行うための機能を有するばい煙処理設備を設置することが義務づけられています。
ダイオキシン類の環境への排出量が大幅に削減されてきたことは,はじめに述べたとおりですが,これは,県民や関係事業者の協力により総合的なダイオキシン類対策に取り組んできた結果です。しかし,新たに発生するダイオキシン類の多くは,廃棄物の焼却が原因となっています。焼却する廃棄物を減らすことがダイオキシン類の排出量を削減することにつながるのです。
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