環境科学国際センター > ココが知りたい埼玉の環境 > 温暖化対策にはどんなものがありますか?
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掲載日:2023年1月16日
この記事はニュースレター第18号(平成25年1月発行)に掲載したものです。
二酸化炭素などの温室効果ガス削減以外に、温暖化対策はありますか?
温暖化対策担当 嶋田 知英
現在起きている地球規模の気温上昇は、主に人間活動によって放出された二酸化炭素やメタンなど、温室効果ガスの大気中濃度が増加することによって引き起こされています。この様な気温上昇すなわち地球温暖化は、食料生産や水資源、健康など様々な分野で私たちの生活に影響を及ぼすと考えられ、いくつかの分野では既に現実のものとなっています。この温暖化によるマイナス影響を食い止めるための対策をまとめて「温暖化対策」と呼んでいますが、温暖化対策には大きく二つの方法があると考えられています。
一つは、気温上昇の原因である温室効果ガスの濃度を低下する対策で「緩和策」と呼んでいます。緩和策は気温上昇を本質的に抑制する対策です。具体的には二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を減らすことが最も有効な緩和策です。すなわち化石燃料の使用量を減らすこと、そのために、省エネの推進や、太陽光や風力など再生可能エネルギーの利用を拡大することが代表的な緩和策です。京都議定書はまさにこの緩和策を実現するための国際的な取り組みであると言えます。
この様に、緩和策は根本的な対策であり、私たちが最も力を入れて取り組まなくてはならない温暖化対策であることに疑いの余地はありません。しかし、現在行われている様々な取り組みをもってしても地球温暖化を完全に抑制することは難しいとも考えられています。今後の社会のあり方によって予測は変りますが、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)によると2090年頃までに最小でも1.1℃、最大で6.4℃地球の気温は上昇すると予想されています。この様にある程度の気温上昇は既に避けられません。
そこで必要となるのが、温暖化が進んだとしてもそのマイナス影響をなるべく小さくするための対策です。この様な温暖化影響の最小化を目指した対策を「適応策」と呼んでいます。たとえば、農作物の高温耐性品種育成や、熱帯性感染症に対するワクチンの開発、高潮防止堤防の見直しなどが代表的な適応策だと考えられています。緩和策が地球上の大気を対象とした対策であり、世界的な取り組みが不可欠であるのに対し、適応策は地域にあるものを対象とした対策であり、地域での取り組みが直接成果につながる、地域が主役の温暖化対策だと言えます。温暖化対策とは、どちらか一方の対策を行えば良いというものではありません。「緩和策」は重要ですが、それとともに「適応策」も同時に進めることが大切です。
埼玉県では、平成21年に地球温暖化対策実行計画「ストップ温暖化埼玉ナビゲーション2050」を策定しましたが、ここにも地球温暖化適応策への取り組みを掲げ、各分野の施策に「温暖化適応」の視点を盛り込むことを提言しています。
図1 温暖化緩和策を模式的に表すと!
図2 温暖化適応策を模式的に表すと!
図1,2の解説:温暖化が時間の経過とともに進行すると(丸1)、温暖化によるマイナス影響は徐々に増加すると考えられます(丸2)。しかし、多くの分野では多少温暖化が進んだとしてもその影響がすぐには顕在化しないような適応能力を持っています(丸3)。したがって、実際に温暖化影響が顕在化するのは影響が適応能力を超えたときです(丸4)。温暖化対策の目的は温暖化のマイナス影響を顕在化させないことですから、そのためには二つの方法が考えられます。一つは図1の丸5で示したように、気温上昇を抑制し温暖化そのものを緩和する方法です(温暖化緩和策)。もう一つの方法が図2の丸6で示したように、適応力を上積みすることで温暖化影響の顕在化を避ける方法です(温暖化適応策)。
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