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掲載日:2023年1月24日
この記事はニュースレター第48号(令和2年7月発行)に掲載したものです。
最近、レジ袋が有料化されましたがどうしてですか
資源循環・廃棄物担当 磯部友護
世界中でプラスチックごみによる海洋汚染が深刻な問題となっており、プラスチックごみの削減や適切な処理が求められています。このような状況を踏まえ、日本においても2020年7月からレジ袋の有料化がスタートしました。ここでは、プラスチックごみの削減の必要性について考えてみたいと思います。
レジ袋をはじめとしたプラスチック容器がどのくらい捨てられているか、皆さんは御存じですか?日本では 1年間におよそ5万トン(世界全体ではおよそ300万トン)と言われています(1)。人口一人当たりに換算すると30kgとなり、実はアメリカに次いで廃棄量が多い国なのです。プラスチック容器の製造量は年々増加しており、このままだと廃棄量も増加していきます。また、プラスチックが限られた天然資源である原油から作られていることを考えれば、その製造や使用を減らすことは資源保護のためにとても大切です。日本ではプラスチック製品の原料化や化学反応を利用した燃料化、さらには焼却施設での熱利用やごみ発電などの様々なリサイクルが進んでいますが 、世界では環境中に流出したプラスチックごみによる海洋汚染が深刻な問題となっています。クジラやウミガメが海に漂うレジ袋をエサと間違えて食べ 、死んでしまったという痛ましいニュースを見た人も多いと思います。このような背景から、世界中でプラスチックごみを減らそうという行動が始まり、日本でも環境省などが2019年5月にプラスチック資源循環戦略を策定し、2030年までに使い捨てプラスチック容器を25パーセント削減する目標を設定するなど様々な行動を進めています。その取組の一環として、2020年7月から小売店でレジ袋の有料化が義務づけられました。一部のスーパーなどでは以前から有料化の取組が始まっていましたが、皆さんの生活でも定着してきているのではないでしょうか。
【引用】 (1)SINGLE USE PLASTIC A Roadmap for Sustainability, 国連環境計画2018
埼玉県には海がありません。海がないから先ほど述べた海洋汚染は関係ないと思われるかもしれません。しかし、埼玉県にはたくさんの河川があります。海洋ごみのおよそ8割が陸域から流入していると考えられており(2)、河川は重要な流入経路のひとつと言えます。河川中に流れ込んだプラスチックごみは流れている間に分解し5mm以下のマイクロプラスチックとよばれる小さな破片となり、生態系へ影響を及ぼしていることが明らかになっています。環境科学国際センターが県水環境課と県内の複数の河川を調査したところ、すべての調査地点でマイクロプラスチックが確認されました。川の国埼玉にとっても海洋汚染は他人事ではない重要な課題なのです 。
【引用】(2)河川から考える海洋プラスチックごみ・マイクロプラスチック対策 仁瓶泰雄 片岡智哉 廃棄物資源循環学会誌 Vol29 No4 pp 309 316 2018
レジ袋の代わりにマイバックを使えば、プラスチックごみ問題は解決するのでしょうか。確かにマイバックを使うことは良いことですが、実はこれらの行動で減らせるプラスチックごみの量は約2パーセントと多くはなく、その効果は限定的であると言われています。例えば環境科学国際センターが県資源循環推進課と行なった家庭ごみの組成調査では、可燃ごみの中にプラスチック容器包装やペットボトルなどの資源ごみが約5パーセント混入していることを明らかになりましたが、驚くべきことに未開封の手つかず食品(いわゆる食品ロス)も約5パーセント捨てられていました。事業系ごみと呼ばれるスーパーなどの事業者から出されるごみの中にもたくさんの食品ロスを見かけます。そして、これらのほとんどはプラスチック容器で包装されたまま捨てられているのです。マイバックを使う以外にも私たちがするべきことはたくさんあると感じます。
国連環境計画の使い捨てプラスチックに関する報告書にこんな言葉があります。「プラスチックが問題なのではなく、私たちが何をするのかが問題なのです。この奇跡の素材をどのように、より賢く利用していく責任は私たちにあるのです。」今回のレジ袋の有料化が、プラスチックごみだけでなく食品ロスを減らすなど私たちのライフスタイルを見直し、行動するためのきっかけになることを期待しています。
写真 家庭ごみの中から出てきた食品ロス
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