環境科学国際センター > ココが知りたい埼玉の環境 > 「土壌汚染」って県内でも大きな環境問題になっているの?
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掲載日:2023年1月16日
この記事はニュースレター第20号(平成25年7月発行)に掲載したものです。
土壌汚染は国内外を問わず大きな環境問題となっていると聞きます。
現在、埼玉県ではどのくらいの土壌汚染調査が行われているのでしょうか?
また、どのくらいの土壌汚染が見つかっているのでしょうか?
土壌・地下水・地盤担当 石山 高
現在までに、全国で数多くの土壌汚染調査が実施されています。環境省の調べでは、平成21年度までに約1万件の調査が行われており、そのうちの半数以上で汚染が見つかっています(図1)。平成21年度までの都道府県別の調査事例数は東京都が最も多く、埼玉県は876件で全国第3位となっています。汚染事例数も355件、全国第5位であり、本県でも土壌汚染は大きな課題となっています(表1)。汚染物質としては、鉛、ヒ素、フッ素による土壌汚染が多数発覚しています。
図1 年度別の調査事例数(累積) (環境省データ)
表1 都道府県の汚染調査・汚染事例数
表2 土壌の溶出量基準と含有量基準
土壌汚染を調べるには、二つの試験方法があります。一つは土壌から溶け出す汚染物質を評価するため、土壌に水を加えて長時間振り続け、溶け出した汚染物質を調べる溶出量試験です。もう一つは、土壌に含まれている汚染物質の量を評価するため、土壌に塩酸を加えて酸性にして振り続け、溶出させた汚染物質を調べる含有量試験です。この二つの試験方法に基づき、物質ごとに環境基準が定められており、この基準値を超えた汚染物質が検出された場合、土壌は汚染されていると判断されます(表2)。
地面から掘りだした土壌を直ちに試験に用いることはできません。重金属類による土壌汚染を調べる場合、2~3日間、大気中で乾燥(風乾)させ、ふるいを通して粒径を均一にして試験に用います。このように、土壌汚染を調べるには多大な時間と労力を必要とし、汚染の有無を判定するまでには、早くても1週間程度を要します。
当センターでは、重金属類による土壌汚染を簡便迅速に評価できる分析技術を開発しました。この分析技術の最大の特徴は分析装置が持ち運び可能なため、調査現場で直ちに汚染の有無を判定できることです。これにより、採取した土壌をわざわざ研究所に持ち帰って分析する必要がなくなり、調査に要する時間、労力及び費用を大幅に軽減することができました。現在までに、県内の射撃場の鉛汚染土壌調査や地下水汚染調査などに、この分析技術を活用しています。
当センターでは、土壌の簡易分析技術の他、土壌中の重金属類が溶出する際の特性解析や有害重金属類の溶出を抑制するための不溶化技術の検討など土壌汚染に関する様々な調査・研究を行っています。
なお、簡易分析の原理や特徴については、ニュースレター第5号(2009年10月発刊)『研究紹介』の欄で詳細に解説しています。ご興味のある方は、ご参照ください。
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