環境科学国際センター > ココが知りたい埼玉の環境 > 広い校庭の除染をどのように行なったの?
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掲載日:2023年12月12日
この記事はニュースレター第29号(平成27年10月発行)に掲載したものです。
県内の一部の学校では放射能の除染作業が行われたと聞きますが、広い校庭の除染をどのように行なったのですか
研究推進室長 細野 繁雄
原発事故によって大気に放出された放射性物質は、大気中を移動し、チリや雨とともに地表に降下しました。降下した放射性物質は、地表面付近に存在しますので、表層の土壌を除去すれば、放射能を低減することができます。ここでは、平成23年9月から10月にかけ、三郷市内の小学校をモデルに行なった除染作業を紹介します。校庭等の除染の条件と放射線の低減効果を事前に評価し、その結果をもとに校庭全体の除染を行いました。事前評価では、校庭の他、局地的汚染地点として遊具(すべり台)下なども対象としました。
平成23年8月30日に公布された「放射性物質汚染対策特措法」では、追加被曝線量が年間1mSv(時間あたり0.23μSv)以上の地域を含む市町村を汚染状況重点調査地域に指定し、指定された市町村は除染実施区域を定め、当該区域の除染実施計画を策定することを規定しています。追加被曝線量は、地上1mで評価することになっていますが、事前調査は限られた範囲でしか行えません。そこで、周辺からの影響を極力避けるため、地上から1cmの高さで放射線量を測定して除染の効果を評価しました。
調査は、校庭に1mの正方形の区画を設定し、0.5cm、1cm、以降は1cm刻みに5cmの深さまで、表面の土壌を削り取り、その都度、中央の位置で放射線量を測定しました。実験前に、0.358μSv/hであった放射線量は、表面の土壌を1cm削り取ることで、1/2以下の0.171μSv/h、2cmで0.159μSv/hまで減少しました。また3cm以降は、ほとんど変わりませんでした(図1)。
すべり台下も同様に、すべり台の先端に1mの正方形の区画を設定して行いました。実験前に0.707μSv/hであった放射線量は、表面の土壌を1cm削り取ることで30%以下の0.192μSv/hまで急激に、以深はわずかずつ減少しました。
校庭全体の除染作業の前日に、校庭の5ヶ所で測定した放射線量の平均値は、地上1mで0.244μSv/hであり、除染の基準(0.23μSv/h)をわずかに超える程度でした。除染条件の検討結果からは、1cmの表層土壌を削り取ることで、放射線量は除染の基準を十分に下回ると予想されましたが、上述のように地上1cmでの評価であり、除染の基準とは測定高さが異なることを考慮し、2cmまで削り取ることを目標としました。
作業は、最初に散水車で校庭全体に撒水した後、道路の清掃に使用されるロードスイーパーにより表層の土壌を削り取りました。ロードスイーパーは、車両前方に取り付けた水平方向に回転する2つの大型の“タワシ”で土壌を削り、車両の下に取り付けた鉛直方向に回転するブラシで削った土壌を掃き集める構造になっています。目標の深さまで削るため、作業を3回繰り返しました。作業終了後、作業前と同様に測定した放射線量の平均値は、地上1mで0.175μSv/hとなり、除染の基準を下回りました。ただし、参考に測定した地上1cmの放射線量は平均で0.184μSv/hであり、除染条件の検討で2cmを削り取った時よりも1割程度高い値でした。削り取る深さのムラや削り取った土壌を完全に掃き集められないことなどの影響と考えています。
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