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掲載日:2023年7月19日
この記事はニュースレター第60号(令和5年7月発行)に掲載したものです。
光化学スモッグの原因となる揮発性有機化合物(VOC)とはどんなもので、どこから出てくるのですか?
大気環境担当 佐坂公規
VOCは揮発性が高く、主に人為的な排出源や植物から放出される有機化合物で、大気汚染や健康への影響などに関わる重要な物質です。県では光化学オキシダント(Ox)の生成に関わる人為由来のVOC成分を明らかにするための調査を行っており、都市部では排出削減の効果が見られる一方で、郊外ではその効果が限定的であることが分かりました。Oxの生成に寄与するVOC成分には、主に芳香族炭化水素類やアルデヒ
ド類がありますが、飽和あるいは不飽和炭化水素の寄与も今後のOx対策に重要と考えられます。
揮発性有機化合物(VolatileOrganicCompounds;VOC)は、大気中で揮発しやすく、ガス状で存在する有機化合物の総称です。VOCには、炭素と水素からなる炭化水素だけでなく、酸素を含むアルコールやケトン、アルデヒド、窒素を含むアミン、塩素や臭素を含むハロゲン化合物など、多種多様な成分があり、主なものだけでも200種以上存在するといわれています。例えば、塗料などに含まれる溶剤やガソリンから揮発するトルエンやキシレン、金属洗浄に使われるトリクロロエチレン、ジクロロメタンなどは代表的なVOC成分であり、これらを使用する工業プロセス、自動車の排気、建築・塗装過程、製造活動などから人為的に放出されます。また、植物の代謝に伴うイソプレンの放出といった自然由来のVOCの発生量も多いことが知られています。
VOCには、特有の臭気をもつものや、高濃度や長期的な暴露によるヒトへの健康影響が指摘されるものがあります。また、VOCは、太陽の紫外線によって大気中の窒素酸化物と光化学反応を起こすことで、オゾンを主成分とする光化学オキシダント(Ox)を生成します。Ox濃度が高まり、空が白っぽくかすんで遠方の視界が悪化する現象を光化学スモッグと呼びます。
VOCがOxの生成にどの程度関わるかは、VOC成分によって異なります。その度合いを示す指標の1つとして、MIR(MaximumIncrementalReactivity)があります。MIRは「単位重量当たりのVOCが生成する最大オゾン重量」と定義されており、MIR値が大きいVOC成分ほど、オゾンを生成する力が強いことを意味します。
Oxの生成に関わる人為由来のVOC成分を明らかにするため、県では、Ox濃度が上昇しやすい暖候期(5〜9月)に、毎月4地点(戸田、幸手、鴻巣、寄居)で昼/夜別にVOC(約100種)を測定しています。図1にVOC成分の総濃度の推移を示しました。都市部の戸田ではVOC濃度の減少傾向が見られますが、県内のVOCの推計排出量は近年漸減傾向にあり、その影響を反映しているものと推察されます。一方、郊外部の寄居では、VOC濃度が横ばいで推移しており、これは周辺に人為的発生源が少なく、削減効果が限定的であったためと考えられます。戸田の昼におけるオゾン生成能に占めるVOC成分の割合を見ると(図2)、芳香族炭化水素類やアルデヒド類の寄与が大きい(約50~80%)一方で、飽和または不飽和炭化水素の寄与が大きい年もあります。これは、どこから出てくるVOCがOx濃度の削減に重要かを示すヒントにもなり得るため、今後も調査を継続し、更なる解析を進めたいと考えています。
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