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掲載日:2025年1月29日
この記事はニュースレター第66号(令和7年1月発行)に掲載したものです。
DDT、PCBは何の略ですか
化学物質・環境放射能担当 堀井勇一
DDTとは、かつて日本でも使用された殺虫剤の成分で、英名の略からDDT(ディー・ディー・ティー)と呼ばれています。また、PCBとは、電気機器の絶縁油や各種熱媒体等として使用された化学物質群で、同じく英名の略からPCB(ピー・シー・ビー)と呼ばれています。これらの化学物質は、ストックホルム条約という国際的な枠組みにより、地球上からの廃絶に向けた取組がなされています。
DDTとは、かつて日本でも使用された殺虫剤成分である化学物質の略称です(図)。レイチェル・カーソン著「沈黙の春」に登場する化学物質として、ご存じの方も多いかと思います。その化学物質は、ジクロロジフェニルトリクロロエタンと呼ばれ、英語で“dichlorodiphenyltrichloroethane”と書きます。この赤字を取って“DDT”と略されています。
PCBとは、電気機器の絶縁油や各種熱媒体等として使用された化学物質群の略称です(図)。日本では、カネミ油症事件の原因物質として広く知られ、これを契機に化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)が制定されました。その化学物質群は、ポリ塩化ビフェニルと呼ばれ、英語で“polychlorinated biphenyl”と書かれます。この赤字を取って”PCB”と略されています。
化学物質の中には、環境中で分解されにくく、人や野生生物などの体内に蓄積しやすく、地球上で長距離を移動して遠い国の環境にも影響し、私達の体に有害な影響を及ぼしかねないものがあります(1)。このような性質を持つ化学物質は残留性有機汚染物質、通称POPs(英名:Persistent Organic Pollutantsの略、ポップス)と呼ばれています。DDTやPCBも、このPOPsに登録されています。これらの化学物質が環境中で分解されるのには、どれくらいの時間がかかるのでしょうか?化学物質が分解・減少し、半分の量になるまでの時間を「半減期」と言います。つまり、半減期が長いほど分解しにくいことを意味します。環境中での半減期は、条件によって変わります。DDTとPCBの水中半減期は、それぞれ12年、27年と長く(図)、一旦環境中に排出されると、長期間にわたり残留します。
POPsは、2004年に発効された国際的な枠組み「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」により管理されています。現在、POPsには36物質が登録されており(2023年5月決定物質を含む)、これらについて、製造・使用・輸出入の原則禁止や、特定の目的・用途での製造・使用のみに制限、などの対策が定められています。日本もストックホルム条約の締約国であり、POPsは化審法や農薬取締法などの法律で規制されています。
日本におけるPOPs調査は、環境省の化学物質環境実態調査(通称エコ調査)の一環で実施されています(2)。環境科学国際センターは、これに毎年参加し、埼玉県内の環境中のPOPsの実態把握に貢献しています(3)。なお、エコ調査では、POPs以外の様々な化学物質を対象に、分析法開発から、サンプリング、分析、解析までを行っており、その結果は、環境汚染の早期発見や、化学物質対策の立案・評価などに活用されています。
参考資料
(1) 環境省パンフレット:残留性有機汚染物質
https://www.env.go.jp/content/900410784.pdf
(2) 環境省パンフレット:化学物質環境実態調査
https://www.env.go.jp/content/900406376.pdf
(3) 環境省HP
https://www.env.go.jp/chemi/kurohon/
図 DDT、PCBの化学構造、用途、半減期 (1)
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