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掲載日:2023年12月13日
この記事はニュースレター第52号(令和3年7月発行)に掲載したものです。
埼玉県の光化学スモッグの状況は改善されているのですか?
大気環境担当 市川 有二郎
光化学スモッグは、光化学オキシダント(以下、Ox)と呼ばれる大気中の汚染物質の濃度が高くなるとともに空が白っぽく霞み(モヤがかかったような状態)、遠くの山や建物が見えにくくなる現象のことです。Ox濃度が高くなると、目や喉の痛み等、私たちの健康に悪影響を及ぼすため注意が必要です。Ox生成の原因物質である揮発性有機化合物(以下、VOC)と窒素酸化物(以下、NOx)の濃度は減少傾向を示しているものの、近年のOxの状況は大きく改善されていません。ここでは、Oxの生成と特徴、Oxの観測、過去30年間のOxの状況、CESSで取り組んでいる研究について紹介します。
大気中に排出されたVOCとNOxに太陽の光(紫外線)が当たり、化学反応を起こすと酸化性物質が生成されます。それがOxで、その大部分がオゾン(以下、O3)です。一般的に、Ox濃度が高くなるのは紫外線の強い春先から夏(主に5月から9月)の日中で、無風や風の弱い日です。Ox濃度が高い空気を吸い込むと目や喉の痛み等、私たちの健康に悪影響を及ぼします。詳しくは、CESSホームページ(「光化学スモッグ注意報」って何?)で解説していますので、是非アクセスしてみてください。
埼玉県は、県内の大気の汚染状況を常時監視するために、各地域に測定局を設置し、Ox、VOC、NOxなどの大気汚染物質の観測を行っています。Oxとしては主成分であるO3を測定しており、それをOx濃度としています。観測値は埼玉県ホームページ(埼玉県の大気状況)で確認することができます。是非、皆さまのお住まいの地域の大気汚染状況をチェックしてみてください。
図1に、およそ過去30年間の県内測定局におけるOx濃度指標値のトレンドを示しました。この指標値は、Oxの長期的な変化を確認するために適していると考えられます。2006年に大気汚染防止法が改正され、Ox生成の原因物質であるVOCの排出抑制がスタートしました。その効果によって法改正前のOx濃度は増加傾向から減少傾向に転じました。しかし、ここ数年間は減少傾向が鈍化しており、 Oxの状況は大きく改善されていません。Ox生成に寄与していると考えられるVOCやNOxの発生源に対する、より一層の対策が必要です。
埼玉県のおよそ過去30年間(1991〜2018年度まで)に渡るOxの状況
※Ox濃度は、長期変化を評価するために、環境省が提示する指標値(日最高8時間値の年間99パーセンタイル値の3年移動平均値)を使用しました。なお、指標値を計算するためのデータは環境数値データベース(国立環境研究所)から取得しました。
Oxの低減に向けて、CESSでは様々な取り組みを行っています。VOCにはさまざまな種類と発生源があり、排気ガスや溶剤・塗料などの人為起源だけでなく、植物などからも排出されています。大気環境中で時々刻々と反応するVOCを数時間単位で捕集、分析して、VOCの実態把握や発生源との関係を調べています。また、大気汚染物質は輸送される過程で、水平方向だけでなく上下方向にも移動すると考えられます。地上での観測は数多く行われていますが、上空での観測事例は少ないため、ドローンを活用して、上空のO3、VOCなども調べています。
VOC分析装置
ドローンによる上空観測の様子
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