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掲載日:2023年1月16日
この記事はニュースレター第49号(令和2年10月発行)に掲載したものです。
地下も温暖化しているって本当ですか?
それは埼玉県でも起こっていますか?
土壌・地下水・地盤担当 濱元 栄起
本当です。地上だけでなく地下も温暖化しつつあります。これは人間活動による影響によるものだと考えられています。地下温暖化は地下水観測井などの深さ方向の温度分布を調べることで把握することができます。当センターでも埼玉県内で調査し、広い範囲で地下温暖化が進行していることが分かってきました。
地上の気温の上昇は、よく知られていますが、地下の温度も上昇しており「地下温暖化」と呼ばれる現象が進行しています。この原因は、人間活動による影響、例えば地上の温度上昇や地下構造物(地下鉄や下水管など)からの排熱、土地利用の変化などが原因であると考えられています。図1に夏の昼間(8月17日)に当センターの生態園で撮影したサーモグラフィを示します。草地や樹木などでは30℃程度と温度が低め(緑や黄)ですが、人工被覆されている小道は60℃近く(赤や白)まで温度が上がっています。これは土地利用の変化によって地面の熱の収支が変わるためです。例えばコンクリートやアスファルトなどの人工被覆に変わると地面の温度が上昇する傾向にあります。このような温度上昇の影響は徐々に地下に伝わっていきます。
地下温暖化は地下水観測井などで深さ方向の温度分布を測定することで分かります。当センターでは、これまで県内の25地点で地下温度分布の測定をしてきました。図2に川口市にある観測井で測定した結果を示します。図を見ますと、地表から50mよりも深い深度では、深くなるにしたがい直線的に温度が上昇していることに気づきます。これは地球の内部の温度が非常に高いことによるもので基本的に時間が経っても変化しません。一方で50mよりも浅い深さでは、地表に近づくにしたがい温度が上昇しています。例えば、地下20m程度の深さに注目すると、温暖化による影響がない状態に比べると約2.5℃高いことが分かります。また2010年に測定した温度と比較すると、同じ深さでこの10年間で約0.5℃温度が上昇しています。このような地下温暖化は埼玉県の広い範囲で起こっていることが当センターの調査からも分かってきました。
地下の温度が上昇することによる地下環境への影響についてはまだよく分かっていません。しかし地中には無数の土壌微生物が存在し、温度が変わると土壌微生物の種類や数が変わる可能性があります。土壌微生物は土の性質にも関係していると言われ農業などにも影響が及ぶ可能性もあります。また、温度が変わることで土壌や地層の化学的性質が微妙に変わり地下水質への影響も懸念されます。
地下温暖化は現在も進行しており定期的に状況を把握することが重要です。これに加えて当センターでは人工衛星による赤外画像を用い地下温暖化を面的に推定する新しい研究も進めています。また、プラス面としては当センターのエコロッジでは地中熱システムの実証試験を行っています。このシステムは、地中に埋設したパイプに不凍液などを循環させ、地中の冷熱や温熱を、夏は冷房として冬は暖房として使用するというものです。特に埼玉県では冬の暖房として地中の熱を使用する期間が長いため、地下温暖化によって蓄熱された熱もこの熱資源の一部として利用できることになります。
図1 サーモグラフィ(夏の昼間)
図2 地下温度分布の例
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