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掲載日:2023年1月16日
この記事はニュースレター第58号(令和5年1月発行)に掲載したものです。
今でも大気中から放射性物質は検出されるのでしょうか?
化学物質・環境放射能担当 落合祐介
CESSでは、大気中に浮遊している粒子上の物質(大気浮遊じん)を採取し、放射性物質を測定しています。福島第一原子力発電所の事故により飛散したI(ヨウ素)-131、Cs(セシウム)-134やCs-137といった人工の放射性物質は近年の調査では検出されていません。一方、天然の放射性物質であるBe(ベリリウム)-7は現在も検出されています。
放射性物質とは放射線を出す物質のことで、放射線を出す力のことを放射能と呼びます。放射性物質は天然のものと人工のものに大別されます。天然のものには宇宙線と大気中の窒素の反応によって生成するBe-7や地殻中のラドンに由来して生成するPb(鉛)-210などが、人工のものには核反応によって生成されるI-131、Cs-134、Cs-137などがあります。人工の放射性物質が環境中に飛散した事例は、1950年代から1960年代初頭にかけて実施された大気圏内核実験、1986年チョルノービリ原子力発電所事故、2011年福島第一原子力発電所事故などが挙げられます。
CESSで実施している大気浮遊じんの調査方法をご紹介します。ハイボリュームエアサンプラーという機械を使い、ろ紙に24時間空気を通して大気浮遊じんを捕集します。フィルター掃除機と同じ原理です。大気浮遊じんの調査は1か月に3回行い、3か月分のろ紙を専用の測定容器(U-8)に充填します(図1右)。ゲルマニウム半導体検出器(図1左)でU-8容器のγ線を測定することで、どんな放射性物質がどれだけ入っているか調べます。
図1 ゲルマニウム半導体検出器と試料を詰めたU-8容器
各都道府県では原子力規制庁からの委託を受けて、環境放射能水準調査を実施しています。この事業では平常時の環境放射能を調査するだけでなく、核実験等が行われた場合に、その影響を把握するための調査も行います。
埼玉県が実施した環境放射能水準調査のうち、 2010年~2020年の大気浮遊じんの調査結果をグラフにまとめました(図2)。
天然の放射性物質であるBe-7は、おおむね一定の濃度幅で検出されています。 福島第一原子力発電所の事故が発生した2011年3月には、人工の放射性物質であるI-131、Cs-134及びCs-137が検出されました。これらのうち、Cs-137が最も長い期間検出されましたが、2015年10月~12月分の調査以降は検出されていません。これは各物質の半減期の差(I-131は約8日、Cs-134は約2年、Cs-137は約30年)によるものと考えられます。半減期とは、放射性物質の濃度が半分になるまでにかかる時間のことです。
図2 大気浮遊じんの調査結果
(2013年6月までは、県衛生研究所で測定したデータ)
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