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掲載日:2023年1月16日
この記事はニュースレター第43号(平成31年4月発行)に掲載したものです。
水埼玉県の川の水には、どんな細菌がいて、何をしているの?最近よく聞く大腸菌の数はどうやって調べるの?
水気環境担当 渡邊 圭司
細菌は、大きさがおよそ0.5から数マイクロメートル程度で(1マイクロは1ミリの1000分の1の単位)、人が肉眼で観察することはできません。細胞を蛍光色素で染色し、顕微鏡で観察すると、埼玉県の河川水1ミリリットル中に平均数百万もの細菌が存在することがわかります。このように、細菌はとても小さくまた数が多いため、どんな種類がいて何をしているのか1つ1つ調べることはできません。
そこで、次世代シーケンサーと呼ばれる環境中の遺伝子を網羅的に調べることのできる機器を使って、遺伝子の類似度が97%以上のものを便宜的に1つの種と仮定して解析を行うと、埼玉県の河川の水の中には、およそ600種の細菌がいることが分かってきました。しかし、環境中に存在する99%以上の細菌は、分離して培養することが困難なため、それらが環境中で一体何をしているのか大部分が未解明のままです。
最近の研究では、それら細菌の一部は、さまざまな人間活動(例えば家庭生活、産業、下水処理、畜産業や農業など)により河川の中に排出されたBOD(生物化学的酸素要求量)に代表される汚濁成分を食べて分解し、河川水をきれいにしていると考えられています。
大腸菌は、人や動物などの大腸に生息しており、排泄物中に多量に存在しますが、河川には元々生息していません 。よって、河川が糞便で汚染されると、河川水から大腸菌が検出されます。人に有害な大腸菌O-157は特別で、大部分の大腸菌は人に無害です。
河川水中の大腸菌の数を測定することで、人が水に触れた際に、糞便中に含まれる人に有害な病原微生物(クリプトスポリジウム、ジアルジア、赤痢菌、サルモネラ属細菌、カンピロバクター属細菌など)に感染するリスクを知ることができます。本来、病原微生物そのものを測定できれば良いのですが、病原微生物はそもそも数が少ない上に、河川水中に排出されると希釈されてしまうので、その数を正確に測定することは技術的に極めて困難です。
これまで、河川の水質調査では、1970年頃から糞便汚染の指標として、大腸菌群数が調べられてきました。大腸菌群は、大腸菌群選択培地(BGLB培地)を用いた最確数法など比較的容易な方法で検出される細菌の総称ですが、これらの手法では糞便汚染とは関係のない河川や土壌中に生息していた細菌も大腸菌群として計測されてしまうため、糞便汚染のリスクを過大評価することが問題となっていました。
近年、特定酵素基質培地法(図1)という、大腸菌のみが有する酵素を、発色酵素基質を使って簡便に検出できる方法が開発されました。そこで、大腸菌群数にかわる糞便汚染の指標として、大腸菌数の環境基準化が、環境省を中心として現在進められています。
図1 大腸菌のみを簡便に測定することができる特定酵素基質培地法の測定手順
埼玉県では、大腸菌数の環境基準化に先駆けて、2013年から公共用水域の水質調査の中で、県内河川における大腸菌数の実態把握に着手しています。さらに、2018年からは、埼玉県内の親水空間(親水公園や河川の親水エリアなどの人が水と触れ合う場所)における大腸菌数の調査も開始しています。今後も、大腸菌数の測定を通じ、水辺の安全性の監視を続けていく予定です。
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