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掲載日:2023年4月28日

環境保全におけるファイトレメディエーション修復技術とは何ですか?

この記事はニュースレター第59号(令和5年4月発行)に掲載したものです。

Question - 質問します

環境保全におけるファイトレメディエーション修復技術とは何ですか?

Answer - お答えします

自然環境担当 王効挙

近年、低コスト・低環境負荷型の環境汚染修復技術として、植物が水分や栄養を吸収する能力を活用したファイトレメディエーションが注⽬されています。これまでに、土壌や水環境中の重金属汚染を改善するための重⾦属超集積性植物など環境修復に優れた植物が発⾒され、環境修復技術への応用が研究されています。最近では、汚染の除去だけでなく有用植物の⽣産、⽣物多様性の保全、地球温暖化の緩和などへの貢献も期待されています。

ファイトレメディエーションとは

ファイトレメディエーション(Phytoremediation)はギリシャ語で「植物」という意味の“phyto”とラテン語で「修復・治療」を意味する“remediation”の合成語です。これは、植物および根圏(根とその周りの⼟壌)に⽣息する微⽣物を⽤いて、⼟壌や⽔中の汚染物質の吸収、蓄積、安定、分解を行う技術で、主に6つの修復機構があります(表)。本技術は、植物の生育に必要な太陽光、⼆酸化炭素だけで、環境中の汚染物質の除去、固定、拡散防⽌に役立ち、周辺環境の改善に寄与する環境調和型の技術です。特に低濃度・広範囲な⼟壌や⽔の汚染浄化に適していて、適⽤範囲が無機汚染物質、有機汚染物質、放射性汚染物質など幅広いという利点を持っています。しかし、この技術は処理効率が低く、修復に長い期間が必要という⽋点があり、技術の適用には、汚染の状況等を総合的に評価することが必要です。

本技術は、1980年代頃から世界中で研究されていて、これまでに重⾦属超集積性植物(⼀般の植物の100 倍以上の重⾦属の集積能⼒がある植物種)の発見、濃縮メカニズム、各種無機・有機汚染物質による環境汚染の修復、修復効率の促進化などについて報告されています。アメリカやヨーロッパなどの国々では、ファイトレメディエーション・ガイドブックなどを作成して、本技術の応用を推進しています。

表  ファイトレメディエーションによる環境修復機構

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当センターのこれまでの研究は

当センターでは、ファイトレメディエーションによる土壌汚染の修復研究として、有用な資源植物と微生物の選出、有⽤植物−微⽣物複合浄化システムの構築、資源植物を用いた収益型汚染土壌修復技術の構築と実証試験を行ってきました。特に資源植物を用いた収益型汚染土壌修復技術では、従来の重金属高蓄積性植物の代わりに、バイオ燃料や観賞などに利用される資源植物を活用し、(1)修復後の植物の焼却が不要、(2)優れた修復効果と高い収益が可能との研究結果が得られました。さらに、中国の⼤学との共同研究により、高品質かつ高収量なキク科植物やバイオ燃料用植物を用いて、カドミウム、亜鉛などによる重金属汚染土壌の修復と収益、修復後の農地の回復が実現しました(図)。今後、本技術の普及により土壌汚染のリスク低減や資源回復、人や作物被害の防止への貢献を目指しています。

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図  収益型ファイトレメディエーションの事例

最近の進展と土壌汚染の現状

最近、ファイトレメディエーション修復技術は、植物の持つ能力や特性を活用した土壌や水質の環境保全技術としてだけでなく、収益可能な有用植物の生産、野⽣⽣物⽣息地の回復による⽣物多様性の保全、草木が育たない汚染された土地の耕作適地化や森林化による地球温暖化への寄与などへの貢献が期待されています。

国内では、重金属による土壌汚染によってヒトへの健康被害を引き起こした公害として、足尾銅山鉱毒事件やイタイイタイ病が有名です。近年は、土壌汚染対策法をはじめとする関連法令などの施行により、健康被害を伴う重大な土壌汚染は発生していませんが、環境省によると令和2年度に913件の土壌汚染対策法の基準を超える汚染事例が判明しています。また、国内では、自然由来の汚染土壌も重要な課題となっています。このため、国内においてもファイトレメディエーションの活用と普及は重要なツールの一つと考えられます。

お問い合わせ

環境部 環境科学国際センター 研究推進室 自然環境担当

郵便番号347-0115 埼玉県加須市上種足914 埼玉県環境科学国際センター

ファックス:0480-70-2031

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