環境科学国際センター > ココが知りたい埼玉の環境 > 「ダイオキシン」ってどんな物質?
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掲載日:2022年11月2日
この記事は平成22年10月に執筆したものです。
「ダイオキシン」は猛毒というイメージがあるのですが、どんな物質なのですか?それはどこから出てくるのですか?
埼玉県では、どれくらいの量が環境に排出されているのですか?
化学物質担当 茂木 守
ダイオキシンは、正式にはダイオキシン類と言います。これは単一の物質ではなく、ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDD)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)、コプラナーポリ塩化ビフェニル(co-PCB)(または「ダイオキシン様ポリ塩化ビフェニル(DL-PCB)」ともいう。)という物質の総称で、塩素の数やその付く位置が異なる異性体が数多く存在し、それらは毒性が異なります。
ダイオキシン類は、廃棄物の焼却、塩素によるパルプなどの漂白、または農薬などの化学物質を製造する際の副生成物として非意図的に生成することが知られています。ダイオキシン類は、難分解性の物質であるため、環境に放出されると土壌や水環境中に長期間残留します。また、食物連鎖を通して生物濃縮され、生体に影響を及ぼすと言われています。
埼玉県における平成20年度のダイオキシン類総排出量は、11g-TEQ/年と推計されていて、集計を始めた平成9年度に比べて97%減少しています。
ダイオキシン類(PCDD、PCDF、co-PCB)には200種類以上の異性体が存在します(図1)。そのうち、毒性が認められている異性体は29種類で、毒性の強さは異性体によって異なります。最も毒性の強い2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-パラ-ジオキシンを1としたときの相対的な毒性の強さ(毒性等価係数:TEF)が、これらの異性体ごとに決められています。通常ダイオキシン類の濃度は、各異性体の毒性等価係数に実測濃度を掛けた値の合計値で表され、これを毒性等量(TEQ)と言います。ダイオキシン類は、自然環境中で分解されにくいため、土壌や水環境中に長期間残留します。また、脂溶性であるため食物連鎖を通して高次消費者の体内に濃縮されます。動物実験では、発がん性、生殖毒性、免疫毒性、神経毒性などが報告されています。
図1 ダイオキシン類の構造
ダイオキシン類は、廃棄物の焼却、塩素によるパルプなどの漂白、あるいは塩素系農薬などの化学物質合成時の副産物として非意図的に生成されます。つまり、ダイオキシン類はゴミ等の焼却により大気へ、製紙工場や化学工場の排水により水域へ、農薬散布等により土壌や水域へ放出されることになります。しかし、現在ではダイオキシン類対策特別措置法や埼玉県生活環境保全条例によって、ダイオキシン類の排出は厳しく規制されています。また、今ではパルプの漂白は塩素をほとんど使用しない方法を採用しているため、ダイオキシン類の発生は抑えられています。
ダイオキシン類はペンタクロロフェノール(PCP)やクロルニトロフェン(CNP)という過去に使用された農薬(除草剤)に不純物として含まれていました。PCPとCNPは、それぞれ1990年と1996年に農薬としての登録が失効したため、現在では製造、使用が禁止されています。また、かつて絶縁油や熱媒体として利用されていたPCBもダイオキシン類を含む物質の一つですが、この物質も「化学物質の審査及び規制に関する法律(化審法)」によって製造、使用が禁止されているため、新たな発生源とはなりません。しかし、ダイオキシン類は自然環境中ではほとんど分解を受けない難分解性物質であるため、水環境や土壌に長期間残留し、現在もこれらの物質が起源と推定されるダイオキシン類が検出されていると考えられます。
これらのことから、今日におけるダイオキシン類の排出源は、焼却や燃焼による割合が高くなっています。
埼玉県は首都圏の中央部に位置し、産業廃棄物処理の中継基地的な役割を担っていることから、焼却などの廃棄物中間処理施設が集中していました。そのため、平成9年度には、県内のダイオキシン類総排出量が338g-TEQ/年と推計されていました。しかし、前述の法律、条例等の規制効果により、平成20年度の排出量は11g-TEQ/年にまで減少(-97%)しました(図2)。なお、全国では、平成9年度の排出量は7,680~8,135g-TEQ/年と推計されていましたが、平成20年度には、221g-TEQ/年まで減少しています(-97%)。
図2 埼玉県におけるダイオキシン類総排出量の推移
埼玉県のダイオキシン類は、ほぼ100%大気へ排出されています。その内訳は、小型焼却炉等(28%)、民間廃棄物焼却施設(35%)、市町村等ごみ焼却施設(8%)で計71%を占めており、焼却起源が多いことがわかります(図3)。次に多いのが産業系発生源で、22%を占めています。これは製鋼用電気炉やアルミニウム合金製造を起源にするものです。また、火葬場、野外焼却、自動車排出ガス、タバコの煙からも7%のダイオキシン類が排出されています。
図3 埼玉県における平成20年度ダイオキシン類総排出量内訳
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