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掲載日:2024年4月1日
Q 諸井真英 議員(自民)
昨年12月、政府が新子育て安心プランを発表しました。それによると、2021年からの4年間で全国の保育所の定員を約14万人増やすとしています。その中で、一点気になる部分がありました。それは短時間勤務の保育士の活躍推進が、保育士不足の解消策として挙げられていたことです。簡単に言えば、国が定める保育士の配置基準で常勤保育士1名必須という規定を撤廃して、全部パートの保育士で埋めていいというのが今回の変更です。
保育士という乳幼児の成長を左右するその職責の重要性から考えれば、パートで2、3時間で交替してしまう保育士に全ての保育を任せてしまって本当に良いとは思えません。小学校の担任が全部パートだったら、子供の1日の行動を把握できず、クラス全体の責任は取れないのではないでしょうか。保育士も同じことであるというふうに考えます。
もちろん基準上、全面パート化が容認されても、子供の利益を考える事業者は保育の質を守るために正規雇用の担任を配置しようとすると思います。しかし、保育の質よりも利益を最大化したいと考える事業者は、全面パート化による人件費削減を行うはずであります。短時間勤務の保育士の活躍促進のプランには、常勤保育士が十分に確保できず、市区町村がやむを得ないと認める場合にパート化しても良いことにすると書いてありますが、実際には厳密な運用ができるのか大いに疑問であります。結局、保育士のパート化推進になってしまいます。
県議会では、これまで保育士の処遇改善を議論してきたところですが、今回の規制緩和で逆に保育士全体の賃金水準が更に下がると考えます。私は、以前から保育問題を取り上げてきましたけれども、待機児童の受皿を無理に増やしてきた反面、保育の現場の環境は年々悪化しているというふうに感じます。このまま放置すれば保育士の職業としての魅力が低下し、的確な人材を集めることが困難になり保育の質が低下する、そして子供が虐待や事故の犠牲になる、この負のスパイラルに既に陥っている、そういうふうに強く感じているところです。
そこで、以下四点お伺いします。
一点目、良い保育を行うには、保育士に余裕を持たせ処遇を改善し、その仕事に敬意を払うということが必須条件だと思いますが、国の方向性としてはずっとこれは逆行しており、結果、子供たちが犠牲になっているというふうに感じております。現状のように、二時間働けば延長保育も合わせて13時間預けられるような保育の仕組みが、保育所を苦しめ保育の質を落としています。結局、受皿を増やすことばかりではなく、親が働く時間プラス職場、保育園に通う時間を足した時間を預かるようにすれば、待機児童問題も保育の質の問題も解決するのではないかというふうに思っております。知事に、その方向に是非かじを切っていただきたいのですが、御所見を伺います。
二点目、市町村がやむを得ないと認める場合、保育士の全面パート化ができるとありますが、それが適用される条件とはどんなものでしょうか。また、制度の厳密な運用について、県はどのように関わり担保していくのか伺います。
三点目、昨年、加須市の保育園で女性保育士による虐待映像が全国に報道され、話題となりました。しかし、県は保育園での虐待や事故については、このケースのように内部告発か、あるいは事件化されない限りは把握していません。県はどのくらいの頻度で保育園を実地検査しているのか。もっと頻度を高めて細かいチェックが必要だと感じるが、いかがでしょうか。
四点目、虐待や事故が起きても、その保育園は営業を続けているケースがほとんどでありますが、法令や規則違反、事件・事故を起こした場合に営業を停止できる仕組みがないという現状では、子供の安全を守れないのではないでしょうか。これは以前から指摘しておりますが、埼玉県独自のルールをつくるべきだと考えておりますが、いかがでしょうか。
以上、三点については、福祉部長の御所見をお伺いします。
A 大野元裕 知事
親が働く時間に職場や保育園に通う時間を足した時間を預かるようにすれば待機児童問題も、保育の質の問題も解決するのではないかについてでございます。
保育所を利用できる時間は、休憩時間や通勤時間も考慮し、保護者の就労時間に応じて必要な範囲となっています。
パートタイマーの方は子ども・子育て支援法施行規則に基づき1日の保育時間は基本8時間までの認定となりますが、保育現場からは、実際の就労時間等より長い時間を保育所に預けている方もいると伺っております。
一部の市町村においては、保護者に対し、保育時間の考え方を丁寧に説明をし、保育は必要な時間のみ利用するようお願いしているところもあります。
一方で、親の介護も抱えるダブルケアや別の保育園等に通う兄弟姉妹の送迎など様々な事情をお持ちの方がおられ、就労時間等に対応して一律に保育時間を厳格化することが現実的ではないケースもあると聞いております。
議員お話しのとおり、質の高い保育の実現には現場の保育士の負担軽減が欠かせないと考えています。
そこで、市町村に対しては、必要な時間のみ保育を利用するようお願いしている他の市町村の例なども参考に、適切な保育利用が実施されるよう、保護者への理解を求めることについてお願いをしてまいります。
また、本県では、保育士の負担軽減策として、保育補助者の配置費用や周辺業務をお手伝いいただく方の費用などを助成するとともに、国の配置基準を超えて保育士を配置する場合の独自の助成等を行っております。
今後も市町村と連携し、保育士の負担軽減を図り、子供たちにとってより良い保育が提供されるよう、しっかりと取り組んでまいります。
A 山崎達也 福祉部長
保育士の全面パート化ができるとありますが、それが適用される条件とはどんなものか。制度の厳密な運用について県はどのように関わり、担保していくのかについてでございます。
国では、保育所等における短時間勤務の保育士の配置基準について、その取扱いを現在検討しているところです。
そのため、国から詳細が示されていない状況ですが、子どもを長時間にわたって保育できる常勤の保育士を確保することが原則であることは、今後も変わりはありません。
当該市町村において待機児童がおり、かつ、保育所に空き定員があるにもかかわらず常勤保育士が確保できないため子どもを受け入れられない場合、暫定的に常勤保育士1人に代わり短時間勤務保育士2人の配置を認めるという考え方を国は明らかにしています。
その際、短時間勤務保育士は常勤保育士と同等の待遇とすること、常勤保育士の募集を行い早期確保に努め、常勤保育士を確保できたときは短時間勤務保育士は速やかに解消することが求められる見込みです。
県では、こうした制度の運用について、市町村と連携した情報共有や指導監査を通じて状況を確認し、不適切な運用があった場合には、指導の上、速やかに是正を求めてまいります。
次に、県はどれくらいの頻度で県内保育園を実地検査しているのか。もっと頻度を高めて細かいチェックをすることが必要ではないかについてでございます。
保育所に関する指導は、県が施設の認可権を有する立場から、市町村が保育費を給付する立場から、それぞれに保育所の適正な運営確保のために定期的な指導を行っています。
県の指導監査は、政令・中核市及び権限移譲を受けた加須市など4市を除く約900カ所の保育所に対して実施をしております。
実際に現場で指導を行う実地指導は5年に1回、毎年約220カ所に実施をしております。
その年度に現場に伺わない保育所については、書面での指導を行い、虐待の予防と早期発見の取組や研修の実施状況などを確認し、取組が不充分な場合は改善を求めております。
また、保育所からの事故報告や市町村からの情報、保護者からの相談等により、早急に現場確認する必要がある事案については、速やかに随時の調査を行っております。
今後も、日ごろから地元の保育所の状況を把握している市町村と連携し、保育所が適切に運営されるよう指導してまいります。
次に、法令や規則違反、事件事故を起こした場合に営業を停止できる仕組みがないことは、子供の安全を守れないのでないか、今こそ埼玉県独自のルールを作るべきについてでございます。
保育所の事業停止命令に至るまでの手順は児童福祉法で定められています。
運営に問題がある保育所について、まずは改善勧告を行い、改善が見られないときは改善命令を発することとなります。
改善命令を受けてもなお状況が改善しない場合は、児童福祉審議会の意見を聞いて事業の停止を命じるなど、重い処分を実施することとされております。
なお、虐待が発生し、他の児童にも被害が広がるおそれがある場合など至急の対応が必要なケースについては、県で速やかに事業の停止を命じることもできます。
また、平成27年度に施行された子ども・子育て支援法においては、市町村においても運営に問題がある保育所に対し、改善勧告や運営費の補助の打ち切りなどを行うことができることとなっております。
県としては市町村と連携し、子供の安全を最優先に、法令に基づく事業者への指導を適切に行ってまいります。
再Q 諸井真英 議員(自民)
先ほどの質問の中で三点目で、加須市の保育士の虐待の報道をされたという例を出しましたけれども、やっぱり県にこういう虐待とか事故とかが起きているのかというのを聞いても、全然把握していません、ありませんというか、知りませんというようなことで、ないということなんですけれども、やっぱりこれは潜在化していますので、内部告発とか、あるいは園児が亡くなってしまうとか、けがをするとか、そういうのがない限りは表に出てこないというふうに思っています。
そういう意味で、900カ所あるうちの5年に1回、大体年に200カ所ぐらい今やっているという話ですけれども、もうこのペースでは全く把握できないということを部長自らおっしゃったわけですから、これはこの頻度をもっと高めないと子供の安全が守れない。いろんなところで子供の利益を第一にとかっておっしゃっているわけですから、安全を守るという観点からすれば、1年に1回どこでも行くぐらいの、これは具体的にどのくらいまでできるか分かりませんけれども、少なくても今のペースを上げないと子供の安全を守れない状況にあると、そういう認識を持った上でどういうふうにやられるのか、もう一度答弁を求めます。
再A 山崎達也 福祉部長
保育所の適正な運営確保のため、県では施設の認可権を有する立場から、市町村では保育費を給付する立場から、それぞれに保育所に対し指導を行っています。
確かに県の指導の頻度を増やせば効果はあるかもしれませんが、果たして効率的な指導なのかという問題もあるかと思います。
県では現時点でも、保護者や職員の方から保育所に係る苦情、通報などが寄せられ現場で事実確認が必要であると考えられる案件については、時間をおくことなく実地調査を行っています。
また、虐待の疑いや重大な事故については、原則2日、48時間以内に対応することとしています。
県だけではなく、日ごろから市町村と密接に連携することによって、保育所の運営状況の把握に努め、適切に指導してまいりたいと考えています。
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