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掲載日:2024年3月21日
Q 萩原一寿 議員(公明)
埼玉県環境科学国際センターは2000年に開設して以降、身近な環境問題から地球規模の環境変化への対応まで行っており、環境学習、試験研究、国際貢献、情報発信の4つの機能を併せ持つ国内唯一の環境研究所です。環境科学の共有を基本理念として、地域のみならず世界に開かれた施設としております。20年以上前に公明党の先輩議員がセンターの設置を発案し、開設に尽力してきました。
昨年11月、公明党議員団で加須市にある同センターを視察してまいりました。センター内は環境について体感できる展示や、昭和30年代の埼玉県東部の里山をモデルにしたビオトープなどの魅力ある内容が数多くあります。細かく見学すれば2時間は過ごすことができます。この貴重な施設を本県の環境政策に十二分に生かすべきと考えます。
そこで、大野知事に二点伺います。
一点目として、環境科学国際センターには、全国でも有数と言える約50名体制の研究所を有しております。この研究所の取組を通して県政にどのように生かし、県民に啓発していくお考えかお尋ねします。
二点目は、センターが持つ機能として国際貢献があります。これは国境を越えた協力関係や、環境面での国際的な連携を図るなどの取組です。地球的規模の問題についても、県単位の取組としては大変にまれな機能を有しています。
今後、センターとして国際貢献の取組をどのように進めていくのか、その方向性について、知事に伺います。
次は、環境部長にお聞きします。
環境科学国際センターには地域気候変動適応センターが設置されています。喫緊の課題である温暖化対策の最新情報を発信しています。また、地域気候変動適応センター設置の根拠法である気候変動適応法においては、市町村の設置の努力義務をうたっています。本県が市町村に対しセンター設置に関する県の役割について御見解を伺います。
また、環境科学国際センターの太陽光発電システムが経年劣化により使用できない状況です。本県の「国際」という名前まで冠した環境施設の電力が、再生可能エネルギーを利用されていないのはいかがなものかという気がします。その点について早急に修繕すべきと考えますが、環境部長に御見解をお尋ねします。
A 大野元裕 知事
環境科学国際センターにある研究所の取組を通して県政にどのように生かし、県民に啓発していくか、についてであります。
環境科学国際センターにある研究所は、試験研究機能の中核を担っており、分析調査、政策支援、情報提供の3つに取り組んでおります。
このうち、分析調査は、センターの基盤となる重要な機能であり、河川等の水質検査などの定期的な調査に加え、緊急的な事故対応なども行っております。
例えば、河川における変色や魚類の大量死などの水質事故が発生した場合には、迅速な分析により原因物質を明らかにし、原因者の特定、事態の収束に大きく貢献をしております。
政策支援は、試験研究によって政策に科学的な根拠を与える役割を担い、県政の企画立案に活用しています。
例えば、県の温暖化対策実行計画を策定する際、前提となる温室効果ガス排出量の推計を行い、計画の目標設定に寄与しました。
近年、気候変動やプラスチックごみ、生物多様性など様々な環境問題への対応が求められています。
今後は、このような新たな環境問題も含めセンターが有する高度な分析調査、研究機能を最大限活用し、効果的な施策を企画、実施してまいります。
こうした試験研究を通じて得た結果や情報を、広く県民に役立てていただくため、センターではWEBや広報誌などで積極的に公開しております。
今後の官民データ活用の一環として、これらの環境データをGIS(ジーアイエス)で提供するなどのサービスも拡大をしてまいります。
例えば、地盤沈下の研究のために収集した地層の情報は安全なビルの建築等に活用されております。
環境問題の解決のためには、県民が自ら行動することが極めて重要であり、今後のSNSの一層の活用のほか、県民参加型の調査における参加者同士の情報交換会の開催や研究員による出前講座など、普及啓発も強化をしてまいります。
次に、今後、国際貢献の取組をどのように進めていくのか、その方向性についてであります。
これまでは、深刻な環境問題を抱えているアジア地域から研修員を受け入れるとともに、センターの研究員を派遣し、環境保全に関する人材育成や技術の提供を行ってまいりました。
現在、海外の4カ国、17の研究機関と協定を締結し、これまでセンターが蓄積してきた環境対策面での技術や知見を提供し、情報交換や研究交流などを行っています。
一方、アジア地域の中でも、急速に科学技術が発展している国もあり、その関係も、これまでの技術協力から、対等の立場での共同研究へと変わりつつあります。
例えば、PM2.5の中国、韓国との共同観測は、センターの働き掛けで始まり、互いに技術向上や情報交換を重ねながら研究を行い、国境を越えた汚染実態の把握、解明により、対策へとつながりました。
環境問題のグローバル化が一層進展する中で、世界共通の課題解決の一翼を担えるよう、取り組んでまいります。
A 小池要子 環境部長
市町村の気候変動適応センターの設置に関する県の役割についてでございます。
地球温暖化対策としては、温室効果ガスを削減する緩和策と、温暖化の影響による被害を回避・軽減するための適応策とがあります。
気候変動適応法では、都道府県及び市町村に対して、地域において気候変動に関する情報収集・提供等を行う拠点として、地域気候変動適応センターの設置を努力義務としております。
都道府県では、平成30年12月に本県が環境科学国際センターに設置したのを皮切りに現在24府県に設置されております。
適応策を進めるためには、都道府県のみならず地域住民とより近い市町村におけるきめ細かい取組が必要です。
しかしながら、適応センターの設置には、気候変動の情報提供や分析などを行うための人員やノウハウが必要なため、市町村では川崎市と那須塩原市の2市しか設置されておりません。
そのため、本県としては、環境科学国際センターの知見を生かし、市町村の適応センターの設置を進めていくことが、県が果たすべき役割と考えております。
具体的には、環境科学国際センターが各市町村と共同で地域気候変動適応センターを設置し、市町村別の気候変動に関する実態データや将来予測情報の提供のほか、適応計画策定の支援などを行います。
各市町村に働き掛けたところ、現在、5つの市が設置に関心を示しておりますので、まずこれらの市との調整を進めてまいります。
今後も市町村と連携し、地球温暖化の適応策に取り組んでまいります。
次に、経年劣化により使用できない太陽光発電システムを早急に修繕すべき、についてでございます。
環境科学国際センターの太陽光発電システムは、開設当初に設置したものであり、大規模施設長期保全計画に基づき、令和6年度の更新を予定しておりました。
その後使用できない状況となりましたが、環境政策の推進の拠点であるセンターにおける再生可能エネルギーの利用は大変重要であり、今後、可能な限り早急に更新できるよう検討してまいります。
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