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掲載日:2021年12月21日
Q 新井一徳 議員(自民)
来年はラグビーワールドカップ、再来年は東京オリンピック・パラリンピックと日本が世界的な注目を集める国際的なスポーツイベントが続きます。本県も熊谷市やさいたま市、川越市、朝霞市が会場に決まり、熱戦を楽しみにした多くの観戦客が国内外から本県を訪れ、大いににぎわうことが期待されます。
近年は、訪日して来県する外国人は増加しており、平成24年の16万7,000人が昨年には28万7,000人にと伸びています。本県への関心が高まっている証拠と言え、来年、再来年は確実に増えることでしょう。経済活性化への期待も大いに高まるところであります。
一方、外国人の来県増加に伴い、感染症のリスクが指摘されています。海外で発生している感染症が日本でも広まるのではないかという懸念です。ウイルスや細菌などの病原体を持ちながら無自覚な外国人が訪日しないとも限りません。訪日客数が増えればそのリスクは当然高まります。本年春には、沖縄県を訪れた台湾からの観光客によって麻疹が持ち込まれ、多くの感染者を出したことは御案内のとおりです。感染症の中には日本で未発生の新興感染症に分類されるものもあり、その数は多岐にわたります。輸入感染症のリスクから県民の健康を守ることもイベントを成功させる一つの鍵となるのではないでしょうか。
それと、もう1点、バイオテロに対する懸念もあります。二つの国際的なスポーツイベントに備え、サイバーテロへの対応などが新聞紙上をにぎわせています。しかし、バイオテロへの備えも必要なはずです。2001年のアメリカ同時多発テロの直後、炭疽菌が封入された容器の入った封筒が各所に送り付けられ、感染症に罹患した22人が死傷するというテロが起こりました。幸い、これまでの国際的なスポーツイベントでバイオテロは起きていませんが、備えは万全にする必要があると考えます。
このように感染症対策は、ウイルスなどを無自覚に持ち込んでしまう訪日客への対応に加え、イベントを意図的に妨害するためのテロへの対策という両面からのアプローチが必要です。水際における検査で国内流入を防止する対策や、実際に感染症が見つかった場合には拡散を最小限に抑える対策などが求められ、保健医療部、危機管理防災部、警察本部が連携して取り組む必要があると考えます。
そこで、保健医療部長には、国内で流行したことがないウイルスなどの検査体制について、警察本部長には、バイオテロの未然防止策と発生した場合の初動態勢及び県における連携体制について、危機管理防災部長には、発生した場合の当該地域における安全確保策についてそれぞれお伺いいたします。
A 本多麻夫 保健医療部長
議員御指摘のとおり、国内で発生したことがない感染症やバイオテロが発生した場合には、関係機関で情報を共有し、感染症の拡大を最小限に抑えるための対策が必要となります。
こうした感染症の患者さんが医療機関を受診し、医師の診療を受けた場合、診療の場面において見落としが生じないよう、県では専門的な研修を行っております。
診療の結果、医師がウイルス等による輸入感染症の可能性を疑った場合には、遺伝子学的な検査などにより、原因となる病原体を確定する必要があります。
医療機関や民間の検査機関では通常、こうした検査が実施できないため、県の衛生研究所に検体を搬入し、検査を実施する必要がございます。
原因を迅速に特定し、ウイルスなどの病原体を見逃さないためには、質の高い検査体制の確保が重要となります。
具体的には、遺伝子学的な検査体制の充実が求められますが、従来の遺伝子検査機器では特定できないウイルスなどにも対応できるよう、衛生研究所に、検体に含まれるすべての遺伝子情報を読み取る次世代シーケンサーという遺伝子検査機器を新たに導入することといたしました。
国内で発生したことがない病原体について、エボラ出血熱など国立感染症研究所でしか扱うことができない一部の危険なウイルスを除き、これまで判別できなかった病原体の検査を、衛生研究所において行うことができるようになります。
この次世代シーケンサーは、県内で初めて感染症対策用として衛生研究所に導入される機器であるため、正確な操作やデータの解析について一定の専門的なトレーニングが必要です。
このため、国立感染症研究所病原体ゲノム解析センターなどにおいて、次世代シーケンサーの操作方法やデータ解析の専門手技を習得できるよう、担当の技術職を派遣し、職員のスキルアップを図っているところです。
また、実際に病原体が持ち込まれた際に検査を正確に行えるよう、あらかじめ十分なプレテストを行ってまいります。
このほか、感染症の専門家などで構成される評価委員会を設置し、検査結果の的確な評価・分析体制を確保したところです。
県といたしましては、次世代シーケンサーの年度内における本格稼働に向け準備を進め、ラグビーワールドカップや東京オリンピック・パラリンピックに備え、関係機関と連携を図りながら、万全の検査体制を整えてまいります。
A 富田邦敬 警察本部長
一般的に炭疽菌・ボツリヌス菌・リシン等生物剤を用いたテロについては、その製造と散布において一定の専門知識が必要であり、また、相手に一定量を吸入、摂取させることが必要になる等、他のテロとは異なる特徴を持つものと考えておりますが、公共の安全と秩序の維持を責務とする警察としましては、あらゆる事態を想定し諸対策を実施することが必要なことは認識しております。
ここは御指摘のとおりであります。
そこで未然防止策ですが、まず、バイオテロのみならずテロ対策の要諦は情報とそれに基づく事案発生前の未然防止、検挙でございます。
県内はもとより全国、さらには警察庁を通じて国外から、関連情報の収集及びそれらの分析を行い、テロの兆候の把握に努めております。
さらに、バイオテロに関しましては、県内に研究機関や大規模な病院等、病原体や生物剤・毒素等を研究目的で保管する施設が存在しております。
感染症予防法の規定や国民保護法の基本指針に基づき、厚生労働省等とも協力しつつ、これらの施設に立入検査や個別訪問を行い、適正な管理に関する指導・助言を行っているところでございます。
次に事案対処と関係機関との連携ですが、過去のバイオテロや生物剤の特徴を考えますと、バイオテロの形態としましては、先ほどご指摘のありましたとおり、生物剤の入った郵便物等が各所に送付される、又は、開けた場所で生物剤を散布することなどが想定されるところです。
このような事案が発生した場合には、専門部隊である機動隊のNBC対策部隊を現場に出動させるとともに、警察本部に総合対策本部を設置し、被疑者の特定につながる証拠収集とともに、保健医療部、危機管理防災部、消防等関係機関と連携し、被害の拡大防止、治療に資する原因物質の特定など、適切な対応を迅速に行ってまいります。
さらに、バイオテロは化学剤を使用したテロと異なり、症状が現れるまでに一定の潜伏期間が想定されます。
病院等に異常な症状を有する患者が大量に訪れるなど、医療機関や保健医療部、危機管理防災部等からの通報により事態を認知することも考えられます。
このような場合にも迅速に対応を開始できるよう、危機管理防災部や保健医療部、保健所等関係機関と日頃から連絡体制を確立しているところであり、警察としては今後とも関係機関との連携の充実に努め、事案対処に万全を期していく所存であります。
A 槍田義之 危機管理防災部長
バイオテロの場合、原因となる病原体を特定し、被害の拡大を防止することが極めて重要です。
そのため、テロ発生現場では警察と消防が連携し、生物剤検知器などを使用した簡易検知を行った上で、汚染のおそれのある地域を立入禁止区域に設定するなどの安全確保対策を取ります。
そして、国民保護制度上、住民の避難誘導を担う市町村が、高齢者や障害者などにも配慮しながら、当該地域から住民を円滑に避難させることになります。
また、必要に応じて自衛隊に対して災害派遣要請を行い、テロの対象となった施設や地域の除染活動も実施します。
県では、これまでに国際テログループがイベント開催中に炭疽菌を散布したというバイオテロを想定して、国、警察、消防、自衛隊が参加した図上訓練を実施し、テロ発生時の対応手順や連携方法などについて確認してまいりました。
また、昨年11月に実施した国と合同の図上訓練では、内閣官房審議官をはじめ関係省庁の担当者も出席した合同対策協議会を初めて開催し、国との役割分担についても改めて確認したところです。
県としては、平時から関係機関と連携した訓練などを実施して、危機管理体制の強化に努め、県民の安全を確保してまいります。
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