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掲載日:2023年5月9日
Q 宇田川幸夫 議員(自民)
これまでのがん治療は、臓器別に手術、抗がん薬治療、放射線治療などが行われてきました。しかし、がんは遺伝子の異常が原因で発生することが分かったため、遺伝子変異の仕方を調べて、患者ごとに最適な治療薬を選択するがんゲノム医療が本年4月から先進医療として開始されました。国が構築したがんゲノム医療の提供体制は、がんゲノムの解析を行い、治療方針を決定する中核拠点病院が全国で国立がん研究センターや東京大学医学部附属病院などが11か所、中核拠点病院と連携してゲノム検査結果を踏まえた医療を実施する連携病院が135か所整備されています。
また、国立がん研究センターに、中核拠点病院におけるがん患者の遺伝子変異や治療効果などのデータを集約するがんゲノム情報管理センターが設置されました。各中核拠点病院では、このデータベースを活用した解析結果を基に個人ごとに最適な治療薬を提供することが可能になりました。
その中で、県立がんセンター及び県立小児医療センターは、現在、東京大学医学部附属病院の連携病院に指定されました。連携病院は、中核拠点病院に対し患者の検体を提出、解析結果を基に治療方針を決定する専門家会議に参加し、患者への治療を行う役割を担っています。
しかしながら、ゲノム解析を実施した患者さんに有効である治療法は、現段階では一割程度の合致率であると予想されています。今後、AI、ビッグデータ等の解析結果を蓄積しながら合致率を上げていかなければなりません。
また、将来的には中核拠点病院から連携病院に対しての役割の移行も想定される中、人材、技術、データ、設備投資等を守りながら進めていかなくてはなりません。国立がん研究センターやゲノム医療中核病院や製薬会社と連携して、ゲノム解析の事業だけではなく研究開発にも参画し、県としても関わり合いを持ち、新たな治療法や新薬の開発にも携わり、側面的支援を進める時代になると思われます。
そこで、医療費にも還元できることが望まれるわけであります。費用につきましては、がんゲノム検診は現在のところ先進医療として位置付けられており、50万円から90万円という高額な負担を全て患者自身が背負っています。しかし、国においては、このがんゲノム医療を来年4月から公的医療保険の対象とすることにしており、患者の重い負担の軽減が進むことです。公的保険の対象になることでがんゲノム医療へのニーズが急激に増大することも予想されることから、国では検査体制の拡充のため、現状の中核拠点病院と連携病院の間に新たに全国40か所程度の拠点病院を指定し、これにも遺伝子の分析と治療方針の決定の役割を担わせることを検討しています。
したがいまして、先ほども述べたとおり、将来的には新たな治療法や新薬の開発に携わり、税金だけに頼らない体質を形成する必要があります。このようにがんゲノム医療提供体制は整いつつあり、今、正に大きく動き出そうとしております。
このような中で、県立病院におけるがんゲノム医療への取組はどのようになっているのか、都道府県がん診療連携拠点病院である県立がんセンターは新たに制度化されるがんゲノム拠点病院を目指す考えはあるのか、以上の2点について、病院事業管理者にお伺いいたします。
A 岩中 督 病院事業管理者
まず、県立病院におけるがんゲノム医療の取組についてです。
がんゲノム医療の現在の体制は、遺伝子解析と治療方針を決定する中核拠点病院と、中核拠点病院と連携して治療を行う連携病院の2階層となっております。
その中で、がんセンター及び小児医療センターは、平成30年3月、中核拠点病院である東京大学医学部附属病院の連携病院に指定されました。
がんセンターでは11月1日から遺伝子検査の受付を開始しており、現時点で2例が登録され、今後さらに症例数が増える見込みです。
また、小児医療センターでは、がんセンターの臨床腫瘍研究所などと連携し、小児がん用の遺伝子検査方法の共同研究を始めております。
次に、がんセンターは新たに指定される「がんゲノム拠点病院」を目指す考えはあるかについてです。
自ら診断から治療まで、がんゲノム診療を一貫して行う拠点病院の指定に向けて、既にがんセンターでは遺伝子解析の実績を重ねております。
具体的には、治療薬の有効性を確認するための遺伝子解析やがんになりやすい遺伝的な傾向を調べる検査を既に開始しています。
また、該当する患者さんの不安を軽減し支援を行う遺伝カウンセリングの実績も積み上げております。
拠点病院の指定要件はまだ示されておりませんが、中核拠点病院の要件である、検査部門のISO認証については既に取得しております。
このような取組を踏まえ、一層の体制整備に努め、拠点病院の指定を目指してまいります。
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