トップページ > 埼玉県議会トップ > 定例会・臨時会 > 定例会概要 > 平成30年6月定例会 > 平成30年6月定例会 一般質問 質疑質問・答弁全文(永瀬秀樹議員)
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掲載日:2023年5月2日
Q 永瀬秀樹議員(自民)
今、世界では環境問題を背景として、木造建築に注目が集まっています。大規模高層木造建築が次々と実現し、ロンドンでは木造80階建て、高さ300メートルのオークウッド・ティンバー・タワー計画が進行し、2020年には5階建て以上の木造建築が建てられる領域が欧州全域に広がる見通しとなるなど、木材利用の促進は世界的なトレンドであります。こうした世界的な潮流に呼応し、国土の68%が森林に覆われている森林国の我が国でも、新国立劇場に木材が多用され、名古屋城木造天守閣復元事業がスタートするなど、国土の健全な形成と持続可能社会の構築、環境負荷の低減などの観点から、本格的な森の再生と林業の復活に資する国産木材の利用促進に国を挙げて取り組んでいます。
本県においても、2010年に施行された公共施設への木材活用を推進する法律に基づき、国が定めた基本方針に即して県有施設の木造化・木質化に関する指針を平成23年に改正し、県下の多くの市町村においても県産木材利用促進に向けた市町村方針を策定するなど、まず、公共施設において木造化・木質化を推進しようとしています。
しかし、国によれば平成28年度の公共建築物の木造率は全国平均で11.7%、都道府県に限れば3%にとどまっており、我が埼玉県は何と0%です。さらに、県有施設における県産木材の利用実績も、平成二十六年以降の3年間は200立方メートル台にとどまるなど、指針ができて以来、実は余り伸びておらず、掛け声倒れ、指針を守れない状態が続いています。私は指針を定めた以上、県が積極的な取組を進め、率先してこうした低迷状況を打破していくべきと考え、以下、農林部長にお伺いいたします。
まず、今後全ての県有施設の建築に際して、計画段階での木造・木質化の検討を義務付けるよう指針を改正してはいかがでしょうか。
また、平成23年の改正以後、CLT、耐火集成材、枠組壁工法など技術革新が進んでいます。時代の変化を鑑み、新たな技術、工法等を指針に反映させてはいかがでしょうか。
次に、市町村等への支援について提案します。
保湿・保温効果に加え、アレルギー抑制効果、リラックス効果、集中力を高める効果もあり、木材は子供たちを健やかに育てるための施設で、園舎の建築に最も適した建材であると言われています。県の指針に沿った市町村等支援の一環として、小規模で建てやすく、子育てに適した保育園、幼稚園の木の園舎建設の市町村における支援制度創設に向け、県としてまずモデル的に実施してはいかがでしょうか。
最後に、森林環境譲与税の木材利用の促進に向けた活用方法についてお聞きします。
平成31年度から森林環境譲与税の配布が始まり、当初3年間は約9,000万円程度、その後は約1億3,500万円程度の新たな財源が県にもたらされる見込みとお聞きしています。例えば、林業のない都市部においては、県が関係団体との連携による設計や施工における新たな考え方や技術等の研修プログラムの開発や育成講座の開設など、積極的な市町村支援を行うべきと考えます。県はどのような活用方法を考えているかお答えください。
A 篠崎 豊 農林部長
まず、すべての県有施設の計画段階での木造化・木質化の検討を義務付けるよう県指針を改正することについてでございます。
県では、県産木材を利用した建築物の木造化・木質化等を進めるための基準として、平成15年に「県有施設の木造化・木質化等に関する指針」を策定いたしました。
その後、平成22年に国は「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」を制定するとともに、「公共建築物における木材の利用の促進に関する基本方針」を策定し、都道府県が木材利用に向け積極的な役割を果たすこととしたことから、県では、平成23年に県の指針を見直しております。
また、知事部局だけでなく教育局、警察本部なども含めた、県庁内の12部局37課で構成する「彩の国木づかい促進連絡協議会」を平成8年に設置し、県が行う建築土木工事における県産木材の利用を働きかけてまいりました。
平成15年には県立武道館、平成23年には東部地域振興ふれあい拠点施設、平成25年には県農業大学校など、県有施設の木造化に取り組んでおります。
また、昨年度整備した埼玉県農林公園の農産物直売所も木造でございます。
しかしながら、議員お話のとおり、県産木材を利用した県有施設の数や使用した木材の量は、必ずしも順調に増えているとは言えない状況です。
県有施設の木造化・木質化にあたっては、整備費用や整備後のメンテナンス、さらには県産材の調達などの課題があります。
このため、議員ご提案の計画段階での木造・木質化の検討の義務付けについては、関係する部所の合意が必要であり、今後「彩の国木づかい促進連絡協議会」において検討してまいります。
次に、新たな技術、工法等を県指針に反映させることについてでございます。
CLTや耐火部材などの開発により、これまで木造化が困難な中高層の建築物等においても、木造による整備が可能となりつつあります。
このため、県としても、木造化・木質化が一層進むよう、新たな技術・工法の活用について、指針の見直しを行ってまいります。
次に、市町村等への支援の一環として、県が、保育所、幼稚園の「木の園舎」の建設をモデル的に実施することについてでございます。
木材には、湿度を一定に保つ効果や衝撃吸収効果、ストレスを緩和させる効果などがあります。
そのため、木造化・木質化を行った学校などでは、インフルエンザの抑制や、転倒によるけがの防止などの効果があると認められており、ときがわ町では町内の保育所、幼稚園、小・中学校の木造化・木質化を進めています。
生徒や先生からは「落ち着いて勉強ができる」、「冬に寒くない、足元が冷えない」といった声が寄せられています。
こうしたことを受け、保育所、幼稚園などの木造化・木質化の取組は、所沢市や毛呂山町など県内各地に広がっております。
新年度から市町村に配分される森林環境譲与税は、民間の保育所や幼稚園などの木造・木質化にも活用できます。
今後、県としては、モデル事例の紹介や市町村からの相談に応じるなど、保育所や幼稚園の木造・木質化が進むよう支援してまいります。
最後に、森林環境譲与税の木材利用の促進に向けた活用方法の県としての考えについてでございます。
森林環境譲与税の使途については、市町村は間伐や木材利用の促進等の費用に充てなければならないとされ、県はこれらの取組を行う市町村の支援に充てなければならないとされています。
このため、都市部の市町においては森林環境譲与税を活用した、公共施設の木造・木質化の取り組みが増えるものと思われます。
森林環境譲与税の導入を踏まえ県が行った調査では、「市町村の担当者に木造建築に関する技術者がいない」、「県産木材に関する情報がない」といった意見が市町村から寄せられています。
県といたしましては、県に配分される森林環境譲与税などを活用し、関係団体と連携し、木造建築技術者の育成や県産木材の安定供給体制の整備に取り組んでまいります。
都市部において、県産木材を使っていただくことにより、森林の整備が進み、山村地域の活性化にもつながるものと考えております。
県として市町村の取組をしっかりと支援してまいります。
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