トップページ > 埼玉県議会トップ > 定例会・臨時会 > 定例会概要 > 令和2年9月定例会 一般質問 > 令和2年9月定例会 一般質問 質疑質問・答弁全文(新井豪議員)
ここから本文です。
ページ番号:184549
掲載日:2024年10月8日
Q 新井豪 議員(自民)
このコロナ禍において失業者の数が増加する中、逆に従業員確保が一層困難になっているのが、保育業界であります。常に集団の中にいることによる感染リスクや徹底した消毒などの感染防止対策業務によって現場の負担が加わり、人員不足で疲弊している保育業界に追い打ちをかけている現状であります。今年4月時点での埼玉県における保育士の有効求人倍率は3.2倍という数字で、東京都の3.4倍と比べるとまだ低くなっています。しかし、昨年4月との比較では、東京都は4.4倍から1.0倍も改善しておりますが、埼玉県は逆に悪化しております。また、神奈川県や千葉県は3.0倍を下回っており、埼玉県の保育士不足の状況は近隣の都県と比べて、より深刻であると言えます。
この最たる原因は、埼玉県内の保育士の賃金の低さにあると思います。埼玉県の保育士の平均収入は、全国で31位という順位で、金額は約341万円。全国平均の363万円を下回っております。さらに、関東地方の1都6県の中では、最下位という現状なのであります。平均賃金や最低賃金が埼玉県より低い北関東の3県よりも保育士の年収が低くなっているということは、体感実質賃金の格差は数字以上であると考えられます。
近隣の自治体では、保育士確保のために独自に処遇改善が行われており、保育士不足が深刻な東京都では月額4.4万円、千葉県で2万円、神奈川県では横浜市が中堅保育士に4万円を上乗せしております。全国で5番目に大きい財政規模を持つ埼玉県も、近隣都県と同様に独自の処遇改善を行い、賃金の格差を是正すべきではないでしょうか。
先日、さいたま市の待機児童数が全国で最多という報道がありました。さらに、厚労省による最近のデータでは、1、2歳児の保育所利用率について埼玉県は42%程度にとどまり、全国で6番目に低い数字となっております。これは保育施設の不足だけではなく、保育士を確保できない既存の施設が、募集園児の数を縮小せざるを得ないということが原因であるとの分析があります。
さらに、出産、育児を理由で離職した割合は8.1%と全国で10番目に高く、育児中の就業率は58%で全国ワースト2位となっており、これらは深刻な保育士不足が原因の一つと考えられております。こうした現状は、出産を終えた保育士自身も子供を預けられず、復職しづらいという悪循環にもなっているのです。
我が県のウーマノミクスプロジェクトで様々な施策が展開されておりますが、女性が社会復帰して活躍するために必要なのは、まずはこうした県内の保育業界の環境改善を全力で支援することではないかと思います。緊急事態宣言の後、学校や幼稚園が休校、休園となりましたが、医療をはじめとする社会インフラに従事する子供を預かるという観点から、保育園は休園が許されず、感染リスクに脅えながらも使命感を持って保育の現場を守っていただいている県内の保育従事者の皆さんに、まずは処遇改善という形で報いるべきではないでしょうか。
埼玉県内の保育士の平均収入が全国平均を下回り、関東で最も低いという現状をどう思っているのか。そして、埼玉県独自の処遇改善の検討について、知事の御所見をお伺いいたします。
A 大野元裕 知事
埼玉県内の保育士の平均収入が全国平均を下回り、関東で最も低い現状についてでございます。
コロナ禍において、感染防止対策を行いながら献身的に子供の保育に従事している方々に改めて感謝を申し上げます。
国の令和元年賃金構造基本統計調査によると、埼玉県内の保育士の平均給与月額は23万9,700円で、全国平均を下回っており、県内における保育士の給与水準が低いことは大きな課題であると考えております。
保育に従事する職員の給与は、保育施設の運営費収入となる国の公定価格に大きな影響を受けますが、本県の公定価格の地域区分は地域の実情を十分に反映したものとはいないものと考えています。
そこで、昨年11月と本年7月の2回にわたり、内閣府少子化対策担当大臣あての要望書を、私の代理として副知事が市長会とともに副大臣に直接手渡し、見直しを要請するなど積極的に取り組んでおります。
加えて、関係する県選出の国会議員の方々や、公定価格の見直しを議論する国の「子ども・子育て会議」の委員である滋賀県の三日月
大造
知事にも、私が直接連絡をして協力をお願いするなど様々な形で働き掛けを行っております。
今後もあらゆる機会を通じ、公定価格が改善されるよう国に対し強く働き掛けてまいります。
次に、保育に従事する職員に対して、埼玉県独自の処遇改善を検討すべきについてであります。
例えば、東京都や千葉県と同様に、県独自で保育士の給与上乗せの処遇改善を実施する場合、毎年多額の予算が必要となります。
そのため、どのような処遇改善策が効果的かを見極め、対策を講じていくことが重要です。
県では、保育士の処遇改善として独自の上乗せをした宿舎借上補助や新卒保育士への就職準備金の貸付のほか、今年度から新たに短時間勤務を希望する潜在保育士向けの就職準備金貸付事業も開始をいたしました。
また、保育に従事する職員がこれからも安心して働き続けるためには、賃金のみならず、管理者の意識改革や保育士の業務負担軽減など職場環境の改善が不可欠です。
そのため、経営者・管理者向けセミナーの開催や社会保険労務士の派遣などを行い、働きやすい職場環境となるよう支援をしています。
今後も、保育に従事する職員が、やりがいを持って子供たちの保育に携わることができるよう処遇改善にしっかりと取り組んでまいります。
再Q 新井豪 議員(自民)
先ほど知事から答弁がありました。知事からの答弁の中で、埼玉県独自の処遇改善という項目の中で、宿舎の借上げ、それから準備金の貸付け、業務負担軽減とありましたけれども、これも大切な処遇改善の一つではあります。
しかし、今一番問題なのは、埼玉県の保育士の給料が一番低い。それが関東の中でも、一番保育士不足に悩んでいる、一番深刻であるという問題なんです。これを改善するためには、やはり給与の水準を上げる。ただ給料を上げるというのではなくて、せめて近隣の都県に合わせるぐらいのことをしなければ、この保育士不足は解消されません。
ですから、改めて質問いたしますけれども、この処遇改善の中でも給与水準に、給与に上乗せするという処遇改善について検討するのかどうか、はっきりしたお答えをいただきたいと思います。
再A 大野元裕 知事
埼玉県内の保育に従事する職員の給与水準が低いことについては、私も同様に大変大きな問題であると考えております。
その一方で、公定価格の設定が地域の実情に合っていないことが最大の問題であると認識をしております。
保育士の給与については、公定価格の設定が適正でない場合には、仮にこういった補助を行っても給与の水準がさらに公定価格に引きずり下げられるということも可能性として考えられます。
したがって、まずは公定価格が改善されるよう国に対し総力を挙げて働きかけることが最優先課題であると考えております。
その結果も踏まえて、引き続き県として効果的な処遇改善策を講じなければそれぞれの保育士の方々の給与水準の上昇にはつながらないと考えておりますので、そこに力を注いでまいります。
再々Q 新井豪 議員(自民)
私が問題と申し上げているのは、近隣の都県との水準なんです。近隣の都県とかなり格差がある。東京都は数万円、6万円、7万円の給料の格差がある。例えば県南の保育園においては、もう当然ながら埼玉県に在住していながらも東京都に就職したほうが、保育園に行ったほうが、全然、給料がいいわけです。この格差を埋めなければ、問題の解決には至らないと私は思っています。
私が知事にお伺いしたいのは、この給料に埼玉県独自の処遇改善として給料に上乗せする処遇改善を検討するのかどうか。これをもう一度、お伺いいたします。
再々A 大野元裕 知事
私も新井
豪
議員の問題意識と同様に給与水準の格差が最大の問題の一つであるということについては、全く共通の認識を持っております。
他方で、それぞれの保育園の利益構造の中で正当な公定価格の設定が保たれない限り、その中でそれぞれの個々の給与が飲み込まれてしまうといったことが考えられますので、まずは適正な公定価格の改善が必要であり、その上で、我々としては、ご指摘のような処遇改善策を検討するべきと考えておりますので、これまでも取り組んでおりますけど、これまで以上に公定価格の適正な改正について取り組みたいと考えております。
お問い合わせ
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください