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掲載日:2024年10月8日

令和2年9月定例会 一般質問 質疑質問・答弁全文(新井豪議員)

「流域治水」への転換とその周知と啓発について

Q   新井豪  議員(自民

今年7月、全国各地で発生した集中豪雨は令和2年7月豪雨と呼ばれ、降水量は観測史上最大級のものとなり、熊本県を中心に全国に大きな被害をもたらしました。昨年は台風第19号が東日本を襲い、埼玉県でも4名の死者と7,000棟を超える住宅被害という深い爪痕を残しました。おととしは平成30年7月豪雨によって、広島県や岡山県を中心に全国各地で大規模な水害や土砂災害が発生し、多くの方が犠牲になりました。
このように大規模な水害が毎年のように発生しているのは、気候変動だけでなく、流域の人口が増加したことや地表面の舗装などによる保水力の低下、農地の開発による有水力の低下などの流域の都市化によって洪水の水量が増大したことも、原因となっているのです。このような流量増加への対策には、河道や治水施設の整備だけではとても追いつかず、河川管理者の力だけでは洪水被害を減らすことは難しくなっていると、埼玉県のホームページでも施設整備による治水対策の限界が指摘されております。
そこで、こうした近年の大きな水害を受けて、治水施設の能力を超過する洪水が発生することを前提に、社会全体で洪水に備える防災意識の啓発を進め、気候変動や社会状況の変化を踏まえて、地域住民をはじめとするあらゆる関係者が共同して行う「流域治水」への転換を推進していかなければならないのであります。
流域治水施策への転換には、まず降雨量の大幅な増加を想定した治水計画の見直しから始めます。そして、河川の区域だけでなく、氾濫が想定される区域も含めて、一つの流域と考えて地域の特性に応じて、主に三つの対策を進めます。
一つ目は、ダムや堤防などの治水施設や河川の整備による氾濫をできるだけ防ぐ対策を一層拡充すること。
二つ目に、施設や住居を洪水リスクの低いエリアへ誘導して被害対象を減らす対策、ゾーニングも進めなければなりません。先月、環境省を訪問して小泉進次郎大臣と治水対策について意見交換した際にも、大臣はこのゾーニングが特に重要であるとの意見でありました。
そして、三つ目は、被害の軽減、早期復旧・復興の対策です。具体的には、水害リスク情報を地域全体に発信すること、避難体制を強化すること、民間の事業継続計画(BCP)の策定や官民連携の防災訓練を推進することなどが挙げられます。
こうした流域全体のハードとソフト、官と民一体で多層的に対策を進めることが流域治水の考え方なのであります。しかし、その実現のためには行政、住民、企業、学識者、そして県議会、更には行政の中においても県土整備部をはじめ、複数の部局が強く連携しなければならないというハードルがあり、何よりも地域住民の皆さんにこの流域治水の考え方を知っていただき、この理念を御理解いただかなければなりません。
全国のそれぞれの一級水系において、国と流域の自治体によって流域治水協議会が全国で設置されております。荒川水系においても、上流の埼玉県と下流の東京都でブロックを分けて、それぞれ8月に協議会が設置され、第一回の会議が開催されました。しかし、東京ブロックでは流域の特別区の区長が全員出席したのに対し、埼玉ブロックでは21市町のうち市長、町長本人の出席は8名にとどまっております。ほかの自治体に比べて埼玉県の流域治水に対する啓発が進んでおらず、認識が高まっていないことが、この出席率に表れているのではないでしょうか。
西日本では治水に対する意識が高い県が多く、兵庫県、奈良県、滋賀県などでは治水条例を制定して統一した理念を共有し、流域治水の施策を進めております。河川面積が全国でトップクラスの埼玉県こそが、再び起こり得る大規模な洪水災害に備え、早急に流域治水への転換を図り、治水の先進県を目指すという意識を持って、まずは県内の流域市町村への啓発を進め、意識を高めていくべきではないでしょうか。
埼玉県における流域治水への転換についての現状と今後の展望、そして庁内の部局をまたぐ連携と住民や民間企業、そして県内の市町村への周知と啓発をどのように進めていくのかを県土整備部長にお伺いいたします。

A  中村一之  県土整備部長

まず、「埼玉県における「流域治水への転換」についての現状と今後の展望について」でございます。近年、全国各地で深刻な水害が多発していることから、整備水準を超える洪水が発生することも前提として、ハード・ソフト対策に一体的に取り組む「流域治水」が重要になってきていると認識しております。
こうした考えに沿って、本年1月には、令和元年東日本台風で甚大な被害を受けた荒川水系入間川流域において、国、県、関係市町により「入間川流域緊急治水対策プロジェクト」が取りまとめられました。
また、本年7月には、国において全国の一級水系ごとに「流域治水プロジェクト」の策定を開始し、本県も利根川水系と荒川水系の各協議会に参画しております。
この協議会では、氾濫をできるだけ防ぐための対策、被害対象を減少させるための対策、被害の軽減・早期復旧・復興のための対策を取りまとめることとしております。
これらのプロジェクトに基づき、国や市町村、企業等と連携し、各対策に取り組んでまいります。
次に「庁内の部局をまたぐ連携」についてでございます。
「流域治水」の実現にあたり、関係部局が連携することが重要であると考えております。
このため、本年8月に、浸水リスクに応じた防災・減災対策の検討等を進めていく場として、治水とまちづくりを所管する、県土整備部、都市整備部、下水道局からなる会議を設置したところです。
また、被害の軽減に向け、市町村の広域避難計画の策定支援や、要配慮者利用施設の避難確保計画の作成支援について、危機管理防災部や福祉部等と連携しているところです。
引き続き、関係部局間で連携を深め、効果的かつ効率的に浸水リスクを軽減するための推進方策に取り組んでまいります。
次に「住民や民間企業、県内市町村への周知、啓発」についてでございますが、今後の気候変動による豪雨の激甚化・頻発化が予想される中、社会全体で水害に備えることが重要であると考えております。
住民の円滑かつ迅速な避難などは市町村の役割が重要であることから、本年の市長会及び町村長会において、知事から直接市町村長へ、浸水リスク情報の活用と備えの加速を働き掛けております。
また、県内の全ての市町村が参画している「大規模氾濫に関する減災対策協議会」の場を通じ、引き続き、的確な水防活動や防災意識の啓発を図ってまいります。
さらに、住民や民間企業に対しても、不動産取引時などに活用できるよう詳細な浸水リスクの情報提供を進めていくほか、県政出前講座等により防災・減災に対する理解と関心を高めてまいります。
今後とも、国や市町村などと連携し、ハード・ソフトの両面から総合的な治水対策を進め、安全で安心できる県土の持続的発展を支えてまいります。

  • 上記質問・答弁は速報版です。
  • 上記質問・答弁は、一問一答形式でご覧いただけるように編集しているため、正式な会議録とは若干異なります。
  • 氏名の一部にJIS規格第1・第2水準にない文字がある場合、第1・第2水準の漢字で表記しています。 

お問い合わせ

議会事務局 政策調査課 広報担当

郵便番号330-9301 埼玉県さいたま市浦和区高砂三丁目15番1号 議事堂1階

ファックス:048-830-4923

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