環境科学国際センター > 試験研究の取組 > 刊行物 > 埼玉新聞連載記事「埼玉の環境は今」その23
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掲載日:2023年1月16日
「ダイオキシン」という言葉を新聞やテレビで、目にしたり耳にしたりすることが最近は少なくなった。「ダイオキシン」は、毒性を有する特定の化合物群の総称として使われており、ごみを焼却する過程で発生することから、かつて社会問題にもなった。
現在でも、環境に放出されるダイオキシンのほとんどはごみの焼却に由来するものであり、その大半は大気に排出され、川などに流れ込む量は0.1%程度でしかない。大気へ排出される量は、県や事業者の取組などにより減少し、平成十八年度では平成九年度の4%にまでになった。また、これに伴って大気中のダイオキシン濃度も低下してきた。(図1)
環境に放出されたダイオキシンは、分解されにくいために長期間、汚染し続けるといわれている。そのため、過去に放出されたダイオキシンについても着目しなくてはならない。それは主に、前述のごみの焼却の他に、ポリ塩化ビフェニル(PCB)と除草剤に由来するものだ。PCBという物質も化合物群を指すが、これを構成する一部の化合物もダイオキシンである。PCBは、絶縁油や溶剤などと多岐にわたって使用されたが、現在では製造が禁止されている。また、かつて使用された除草剤には、不純物としてダイオキシンを含んでいたものが二種類あった。
環境に放出され、大気や河川水、土壌などを汚染したダイオキシンは、降雨や風、気温の上昇のような気象現象などにより、さらに他の環境を汚染することがある。たとえば、大気中のダイオキシンの一部は、雨により地表へと降下して土壌や河川水を汚染する。しかし、環境中のダイオキシンが、主にごみの焼却、PCB及び二種類の除草剤に由来することに変わりはない。
環境中で観測されるダイオキシンについて、これら4つの由来からの影響を知ることができれば、汚染の原因解明に役立つ。環境科学国際センターでは、環境におけるダイオキシンの汚染やその改善を評価するため、これまでに数多くの大気や河川水、土壌などについて、ダイオキシンを分析してきた。同時に、ごみの焼却で発生する排ガスや灰についても調査してきた。これらの結果などを基にして、ダイオキシンを構成する多数の化合物のうちのたった4つの化合物の濃度から、前述の4つの由来による影響を、簡単な計算で推算する方法を開発した。4つの化合物の濃度を入力すると、この計算結果を表示するウェブページ(図2)には、環境科学国際センターのホームページからアクセスすることができる。
化学物質担当 大塚 宜寿
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