環境科学国際センター > 試験研究の取組 > 刊行物 > 埼玉新聞連載記事「持続可能な社会目指して」その19
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掲載日:2023年1月13日
土壌は、食糧の生産、生態系機能の維持に重要な役割を果たしている。土壌が重金属等の有害物質に汚染されると、その土壌の直接摂取や、有害物質の溶出による地下水汚染、作物への移行等により人の健康に影響を与える恐れがある。
近年、汚染土壌の問題は、日本のみならず急速な経済発展を進めているアジア諸国でも深刻化している。特に中国では、全農用地の10%以上(日本総面積の約30%相当)が重金属等に汚染されており、これら広大な汚染農用地における汚染の修復と資源としての有効利用が希求されている。
汚染土壌の一般的な修復技術には、掘削、埋立、洗浄、加熱、薬剤による不溶化等がある。しかし、これらの技術は、汚染土壌を廃棄物として、ばくだいな費用をかけて処理するもので、土壌の持つ植物生産機能も破壊する。
近年、植物のもつ物質の吸収・蓄積・分解等の機能を活用して、環境中の有害物質を除去する修復技術(ファイトレメディエーション)が、低コストで環境に優しい技術として注目されている。この技術は、局地的な汚染だけでなく広域の汚染にも適用可能で、自然環境に調和し、地球環境保全にも役立つクリーンな技術である。
しかし、従来の手法では、土壌修復用の専用植物の栽培と収穫後の植物の処分を数年間繰り返す必要があり、修復期間中の収入がないことから、なかなか実用化されていない。
県環境科学国際センターでは、ファイトレメディエーションの実用化を推進するため、資源植物を利用する新しい収益型ファイトレメディエーションを検討してきた。
図に示すように、本手法は、専用植物の代わりにバイオ燃料に利用可能な資源植物を利用するもので、収穫した植物は焼却処分せずバイオ燃料の原料として利用する。このため、土地所有者は修復期間も安定した収益を得ることができる仕組みとなる。
センターでは、本手法を確立するため、育苗用ポットを利用してトウモロコシやヒマワリなどの資源植物と専用植物の比較試験を行ってきた。その結果、使用した資源植物は、専用植物に比べて生育力に優れており、全体のバイオマス量が大きいために、土壌から吸収する重金属量は、専用植物に劣らないことがわかってきた。したがって、従来の専用植物の代わりに、バイオ燃料に利用可能な資源植物を利用したファイトレメディエーションは、土壌資源の保全だけでなく、収益性の観点からも有望な手法といえる。
今後、農地における比較試験により、収量、重金属吸収量の把握など多角的な検討が実用なので、現在、当センターでは、中国山西省の山西農業大学と共同で、収益型ファイトレメディエーションの現場試験を行っている。
本技術が確立されれば、土壌修復が促進される他、バイオ燃料事業の支援、地球温暖化対策等の効果も期待される。
中国・山西省での現場実験
埼玉県環境科学国際センター 自然環境担当 王 効挙
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