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掲載日:2023年1月13日

埼玉新聞連載記事「自然との共生 埼玉の現状と課題」その8

2008年7月21日掲載

埼玉県の炭素貯留

森や土壌が貯える二酸化炭素

地球温暖化を引き起こす原因となっているのは、二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスの増加だ。中でも石油や石炭など化石燃料の燃焼によって排出される二酸化炭素は、産業革命以降、その濃度を急速に増加させており、地球温暖化の主要な原因物質となっている。

この地球温暖化の主犯とも言える二酸化炭素は、現在、大気の約0.04%を占めているが、過去にはどのような変遷をたどってきたのだろうか?原始の地球の二酸化炭素濃度は今とは大きく異なっていた。大気中には、現在の十万倍以上の二酸化炭素が存在し、大気全体の95%以上を占めていた時期もあったとされている。では、大量にあった二酸化炭素はどこへ行ってしまったのだろうか?

二酸化炭素濃度の減少は、大きく二つのメカニズムによって進んだと考えられている。まずは数十億年前、地球上に海が出現したことから始まった。出来上がったばかりの海に、大気中に存在していた二酸化炭素が大量に溶けこみ、海水中のカルシウムやマグネシウムと反応して炭酸カルシウムなどの炭酸塩が生成され海底に沈殿した。それらはやがて圧力や熱の影響を受け石灰岩などの岩石となった。大気中に気体として存在していた二酸化炭素は水を介して固体へと変わり固定されたことになる。この過程で大気中の二酸化炭素は急激に減少した。

次に、二十七億年ほど前に光合成を行う植物が出現し、このことで次のステップを迎えることになる。光合成植物は太陽の光エネルギーを利用して水を分解し酸素を発生させる。この過程で二酸化炭素を吸収し糖などの有機物に変える。植物が取り込み有機物へと形を変えた二酸化炭素の多くは植物が死んで分解すると再び大気中に放出されるが、一部は分解されずに堆積し地層の中に固定された。さらに、その一部は、石炭や石油に姿を変えた。この植物の光合成による二酸化炭素の固定化が、大気中の二酸化炭素の減少に拍車をかけた。

植物による二酸化炭素の固定は現在も進んでいる。森林には樹木として多くの二酸化炭素が蓄えられている。さらに、土壌中にも植物の枝や葉などを起源とした有機物として大量の二酸化炭素が姿を変えて蓄積されている。

では、埼玉県にはどの程度、二酸化炭素が貯留されているのだろうか?埼玉県の森林や土壌に関する情報を基に、生物由来の炭素貯留量の推定を行なった。その結果、埼玉県の森林には約三千八百万トン、土壌には約二億六千万トン、合計すると約三億トンの二酸化炭素が蓄えられていると推定された(表)。埼玉県の温暖化ガス排出量は二酸化炭素に換算すると年間約四千三百万トンであり、埼玉県の森林や土壌には県が排出する量の約七年分に相当する二酸化炭素量が蓄えられていることになる。

このように森林や土壌には膨大な炭素が蓄積されており、重要な二酸化炭素貯蔵庫として機能している。

埼玉県の森林・土壌の炭素貯留量の分布の図

図 埼玉県の森林・土壌の炭素貯留量の分布

埼玉県全体の森林・土壌二酸化炭素貯留量の推計値の表

表 埼玉県全体の森林・土壌二酸化炭素貯留量の推計値

埼玉県環境科学国際センター 自然環境担当 嶋田知英

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