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掲載日:2023年1月13日

埼玉新聞連載記事「自然との共生 埼玉の現状と課題」その11

2008年8月11日掲載

私たちにできる緑化

緑を利用した快適生活

埼玉県熊谷市では、昨年の夏、四十.九度という気温を記録し、日本の最高気温の記録を七十四年ぶりに塗り替えた。このことはまだ記憶に新しいところであり、埼玉県の夏の暑さを象徴する出来事だ。このような暑さを引き起こした原因の一つとして、都市化に伴う農地や林地といった緑地の宅地や商・工業用地への転換が挙げられる。すなわち、人口が集中し、路面のアスファルト化、宅地・建物のコンクリート化、エアコン使用量の増大などが顕著に進んだ地域で発生する「ヒートアイランド現象」の結果だ。このヒートアイランド現象の緩和策として、草や木などの植物を人の手によって植え緑を増やす、いわゆる「緑化」が注目されている。

そもそも、日本では、夏の暑さと付き合うために、昔から「緑化」が行われてきた。現在のようにエアコンがない時代、ツル性の植物を日の当たる南側の窓辺に這わせて育てることにより、夏の暑さをしのいできた。最近、この植物を使った昔の発想が、「緑のカーテン」と呼ばれる壁面緑化として新たな脚光を浴びている。ヘチマ、ニガウリ、アサガオなどをネットなどに這わせて育て、葉を窓のカーテンに見立てて茂らせる。これが「緑のカーテン」と呼ばれるゆえんだ。

植物は、太陽の光を浴び葉で光合成をする。このとき、葉にある気孔を開いて葉の中に二酸化炭素を吸収する。これとは逆に、葉の中の水分は気化熱を奪って気孔を通って葉の外に放出される。これが、いわゆる蒸散作用だ。この作用のおかげで、日射を遮へいする葉自体が太陽の光を浴びて熱くなることはない。

ブラインドやロールカーテン、よしずやすだれといった人工的な日射遮へい物とは異なる点だ。そのため、窓辺に緑のカーテンを設置して風通しを良くすれば、夏の強い日差しを和らげ室内での体感温度を大幅に下げることができる。近年、小学校などで「緑のカーテン」が実施されるようになり、このことが実証されつつある。また、このことからすると、「緑のカーテン」は夏季のエアコン使用を減らすための手段としても期待される。

植物は、大気中の二酸化炭素を吸収して光合成を行い、固定された炭素を元手に成長する。そのため、植物を育てることは温室効果ガスを減らすことにもつながるといえる。また、植物を育てることにより身近な生活空間が緑豊かになることは、生活に安らぎと潤いを与えることにもなる。これらのことから、緑化の推進は、生活環境から地球環境まで様々な側面でプラスに働くことが多いといえるのではないだろうか。

近年、地球温暖化、ヒートアイランド現象といった「熱」にまつわる環境問題が話題として大きく取り上げられている。そのような中で、個人としてこの問題にどのようにかかわれば良いのか。多分、このように思っている人は少なくないはずだ。しかしながら、個人では大それたことはできないのは明らかだ。だからこそ、「今、自分ができることから始める」ということが大切なのだ。例えば、先に紹介した「緑のカーテン」を作ってみるのもよい。ただ単に、鉢やプランターで植物を育てることだけでもよい。とにかくやってみることだ。

次に大切なのは、これを一過性のもので終わらせてしまうのではなく、続けることだ。このような小さな行動の積み重ねと持続が、さまざまな面で省エネルギー型の快適な生活空間を生み出し、最終的に環境問題の解決につながっていくのではないだろうか。

緑のカーテン

環境科学国際センターエコロッジ前に作られたアサガオの「緑のカーテン」
撮影2007年8月15日

トレニア

プランターで育てられたトレニア(ナツスミレ)

埼玉県環境科学国際センター 自然環境担当 三輪 誠

お問い合わせ

環境部 環境科学国際センター 研究推進室 自然環境担当

郵便番号347-0115 埼玉県加須市上種足914 埼玉県環境科学国際センター

ファックス:0480-70-2031

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