環境科学国際センター > 試験研究の取組 > 刊行物 > 埼玉新聞連載記事「持続可能な社会目指して」その17
ここから本文です。
ページ番号:22484
掲載日:2023年1月11日
私たちが日常生活で使用している製品には、さまざまな化学物質が使われており、くらしを豊かで快適なものとしている。その一方で、これらの化学物質には多少なりとも有害性がある。
平成20年度に埼玉県内の家庭から排出された化学物質は、2696トンと推計されている。このうち、洗濯用や食器用の洗剤、シャンプーなどに利用されている直鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、衣料用防虫剤やトイレの防臭剤に使用されるパラジクロロベンゼンの3種類で、8割以上を占めている。(図1)
便利さ、快適さを追求するあまり、大量消費・大量廃棄に伴って環境に放出された化学物質が環境汚染を引き起こし、ヒトや動植物に悪い影響を及ぼしている可能性が懸念されている。
生活関連の化学物質が環境を汚染し、生態系に影響しているとして話題になったものに、環境ホルモン(正式名称・内分泌かく乱化学物質)がある。環境ホルモンは、内分泌系の機能に変化を与え、それによって個体やその子孫あるいは集団に有害な影響を引き起こす外因性の物質と定義される。
1998年当時、その疑いのある化学物質として、カップめんの容器、食品のトレイなどに使われるスチレン、ほ乳びんや食器に使用されるポリカーボネートの原料のビスフェノールA、塩化ビニルを柔らかくするために添加されるフタル酸エステル類など、日常生活で使用している製品に含まれる化学物質もリストアップされた。
また、極微量でも影響するとされたことから、野生生物と同様、ヒトにも影響している可能性を懸念する多くの報道がなされた。
また、最近では、ヒト及び畜産用の医薬品、日焼け止め等のケア製品を起源とする化学物質が、河川や下水処理水等の水環境中に広範に存在することが判明している。これらの化学物質にはホルモンのような作用を持つだけでなく、体の調節機能に作用する多種多様な物質が存在することから、生態系への影響が懸念される新たな環境汚染物質として、関心が高まっている。
県環境科学国際センターでも、防水やはっ水剤として衣類や建材など生活用品にも広く使われている有機フッ素化合物(PFOS、PFOA)や、引火しにくくするために各種消費者製品に添加される臭素系難燃加工剤(PBDE)について、埼玉県内の河川を調査している。しかしながら、現在、国内では約5万種もの化学物質が生産、消費され、廃棄されているとされており、評価しなければならない化学物質は多種に及ぶ。そこで、環境中の化学物質群全体を評価するスクリーニング方法についても、今後、適用性を検討する必要があろう。(図2)
化学物質は多くの便益をもたらす反面、化学物質に頼りすぎ、使い方を間違えると、私たちの生活を脅かし、生態系にも悪影響をもたらすことから、慎重に管理しながら利用する必要がある。日常生活においても、必要以上の使用を避けるなど、適正な使用を心がけることが求められている。
埼玉県環境科学国際センター 化学物質担当 細野繁雄
お問い合わせ
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください