環境科学国際センター > 試験研究の取組 > 刊行物 > 埼玉新聞連載記事「自然との共生 埼玉の現状と課題」その5
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掲載日:2023年2月1日
2008年6月23日掲載
地球温暖化に関するニュースが毎日のように紙面を飾っている。皆さんも「温室効果ガス」という言葉は良く目にしているだろう。本シリーズでもすでに何度か取り上げている。しかしながら、きちんと理解されていない方もおられると思う。そこで今回、埼玉県だけでなく地球の環境を考える上で現在最も重要といえる温室効果ガスについて取り上げたいと思う。
さて、温室効果ガスとはどのようなものであろうか。温室効果ガスとは、大気圏に存在し、地表からの熱放射の一部を吸収し、再度地表に戻すことにより大気の温度を上昇させるといった温室効果をもたらす気体の総称である(図)。最も温室効果をもたらしているのは、水蒸気であり、温室効果の寄与率としては6割以上にのぼる(表)。さらに、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素(亜酸化窒素)、フロン類であるハイドロフルオロカーボン類やパーフルオロカーボン類、六フッ化硫黄などが主な温室効果ガスである。また、光化学オキシダントの主成分であるオゾンは温室効果ガスの一種でもある。
これらの温室効果ガスは、地球温暖化問題において悪玉と思われがちである。しかし、もし温室効果ガスが存在していなければ地球の表面温度は約マイナス18度ぐらいであろうと予測されており、地球は氷の惑星となってしまう。つまり私たちが地球で暮らしていけるのはこの「温室効果」のおかげである。このように温室効果ガスは必要であるが、適切な量だけ存在することが重要であり、現在この温室効果ガスが過剰になりつつあるという事が問題なのである。
温室効果ガスの中で、水蒸気については人為的に増減できないと考えられている。一方、人為的な放出によって特に濃度が増加し、気温上昇に寄与していると考えられている物質が二酸化炭素やメタンなどである。埼玉県においても二酸化炭素だけでなく一酸化二窒素やフロン類の計測を行っているが、二酸化炭素の濃度上昇ほどの増加は認められていない。
人間活動によって増えつつある温室効果ガスに対して私たちはどう対処していかなければならないのだろうか。当面、目標となるのが京都議定書の達成であろう。京都議定書とは、一九九七年に京都市で開かれた第三回気候変動枠組条約締約国会議(COP3)で議決した取り決めで、温室効果ガスの排出量を約束期間中に各国の目標値まで削減することが明記されている。日本は、この京都議定書において温室効果ガス排出量の基準年である一九九〇年と比較し、少なくとも6%削減しなければならない。しかしながら、二〇〇五年の時点で8%増加しているため、実際には14%以上も削減しなくてはならないのである。今年は京都議定書の約束期間のスタート年である。これから二〇一二年までの間に少なくとも削減目標を達成しなければならない。もう他人事として傍観している猶予はない。私たち一人一人に何が出来るか、何をしなければならないのか考え行動しなければならない時が来ている。
埼玉県環境科学国際センター 大気環境担当 米倉哲志
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