環境科学国際センター > 試験研究の取組 > 刊行物 > 埼玉新聞連載記事「持続可能な社会目指して」その5
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ページ番号:22503
掲載日:2023年1月13日
温室効果ガスである二酸化炭素の大気中の濃度は、主に化石燃料などの燃焼によって増加し、一方植物の光合成などにより吸収されて減少する。そのため、北半球中緯度の清浄な地域では、大気中の二酸化炭素濃度は5月頃に最も増加し、光合成が盛んな初夏から初秋にかけ減少していき、9月頃に最も低下するといった一年周期の季節変化を示すことが知られている。
環境科学国際センターでは、堂平山観測所(秩父郡東秩父村)と騎西観測所(北埼玉郡騎西町)で二酸化炭素濃度を観測しているが、周辺に排出源の少ない堂平山では上記の清浄な地域と同様な季節変化を示すのに対し、騎西では人為的な排出源から排出された二酸化炭素の濃度が季節変化に加わるため、大気の安定する11月から12月に最も濃度が増加し、年平均値も世界平均と比べて20ppm程度高くなることが分かった。
多様な排出源の影響を受けやすい騎西では、堂平山と比べて一日の間に濃度が大きく変化し、特に風向・風速などの気象条件の違いによりその特徴が表れる。濃度が最も増加しやすい冬季の風の弱い日の夜間には、濃度が500ppmを超過する。これは、年平均値と比べて100ppm以上も高い値である。火力発電所などの大規模な排出源が多い東京湾周辺から南風が侵入したときも濃度が増加することが多い。
しかし、台風が接近したときや北西からの季節風が非常に強い場合などは、排出された二酸化炭素が希釈され、あまり濃度は増加しない。鹿島灘から東風が侵入したときも、排出源の影響をあまり受けないため、それほど濃度は増加しない。また、時間帯によっても変動する。例えば交通量が多くなる早朝には、自動車など近傍の排出源からの影響を受けて濃度が激しく変化する。一方、夏季の日中には植物の光合成の影響を受けて、濃度が数ppm程度減少することもあるが、排出源の影響と比べて非常に少ない。これらのことから、騎西観測所の周辺では、人為的な二酸化炭素の排出による濃度変化が、植物などの吸収による濃度変化と比べて圧倒的に大きいことが確認された。
なお、騎西観測所の二酸化炭素濃度の速報値(自動更新)については、環境科学国際センターのホームページで公開している。二酸化炭素濃度の変化をリアルタイムに近い形で知ることができるので、温室効果ガス削減に興味のある方は参考にして欲しい。また、埼玉県の観測所における二酸化炭素濃度の観測結果は、温室効果ガス世界資料センター(WDCGG)のホームページに掲載され、堂平山観測所のデータについては、WDCGG全球解析(温室効果ガス濃度の世界平均や変化量に関する解析)にも使用されている。
二酸化炭素濃度の日変化
二酸化炭素濃度の速報値(自動更新)
埼玉県環境科学国際センター 大気環境担当 武藤洋介
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