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ページ番号:21707

掲載日:2023年1月13日

埼玉新聞連載記事「埼玉の環境は今」その12

自然の力で水質浄化

水辺再生をめざす古くて新しい技術

都市部を中心とした河川・湖沼などの深刻な水質汚濁は本県も例外ではない。その大きな原因が生活排水であり、特に台所・風呂・洗濯からの汚水(生活雑排水)は法的な規制がないため、下水道や合併処理浄化槽などが整備されていない地域では、側溝や排水路に垂れ流されている。水質汚濁対策は、家庭や工場などの汚水発生源に対して行うことが大原則であるが、産業系排水は法規制などにより対策が進みつつあることから、生活排水対策がますます重要となっている。

人にも生物にもやさしい水辺を取り戻すには、汚水やゴミをなるべく出さない生活を心がけるべきである。食器はソースや油を拭き取って洗うなどをする他、食べ物を無駄にしない、シャンプー・洗剤を使いすぎないなど、「もったいない」という意識を持つことが大切である。それでも、私たちが生きていく上で、汚水やゴミの排出は避けることはできない。そうした汚水は、下水道や合併処理浄化槽などで適正に処理をしてから水域に放流することが大切である。なお、単独処理浄化槽はトイレの汚水しか処理しないため、現在は合併処理浄化槽の設置が義務づけられている。こうした“汚水そのもの”への対策に加えて、すでに汚濁してしまった水域の水質浄化も重要である。

水環境保全・修復技術としては、自然の生態系がもつ浄化作用(自浄作用)を活用した技術が注目されている。環境科学国際センターでは、大学、民間企業と共同で、ゼオライトを材料とした新規水質浄化担体と水生植物の植栽を組み合わせた水質浄化技術を研究開発している。ゼオライトは、天然にも人工的にも存在する鉱物であり、水質汚濁物質の一つであるアンモニアに高いイオン交換能を持つことから、水質浄化への適用が古くから検討されている。一方、水辺の生態系は、微生物から魚類や鳥類・植物に至るまで、多種多様な生物から構成されており、自然界の物質循環により自浄作用を示す(図)。この技術は、生態系のもつ機能を強化し、微生物による酸化・還元や動植物体への吸収という形で、特に窒素除去能の向上を目標としている。またこの技術は、低コスト・低エネルギー消費・簡易維持管理である上に、水辺の景観なども考慮した“環境にやさしい”ものであることをめざしている。

本技術の適用は、生活排水処理施設での仕上げ処理や、汚濁池沼・小水路での水質浄化などが考えられる。現在、環境科学国際センター生態園内の人工水路での水質浄化試験に加え、河川への流入汚濁水路や農業集落排水施設での実用化試験を行っている(写真)。しかしながら、水質浄化に伴い浄化装置に蓄積する汚泥の処理・処分をどうするかなどの、維持管理方法を中心とした技術的課題も存在する。

家庭から排水管、道路側溝、小水路、河川支川、河川本流と進むほど、汚水は希釈され、浄化することが難しくなる。上流側すなわち発生源での対策が重要となる理由である。水辺を含めた環境を良くするということは、そこに住む生物のためだけではない。私たちはもちろん、未来の世代により良い環境を手渡していくためにも、私たち一人ひとりの行動が鍵を握っている。

自然の水辺の自浄作用の説明画像

自然の水辺の自浄作用

水質浄化試験(植えてあるのはミクリ)の写真

水質浄化試験(植えてあるのはミクリ)

水環境担当 木持 謙

お問い合わせ

環境部 環境科学国際センター 研究推進室 水環境担当

郵便番号347-0115 埼玉県加須市上種足914 埼玉県環境科学国際センター

ファックス:0480-70-2031

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