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掲載日:2023年7月11日
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4-3 職種を変更する配置転換について
質問です
病院の医療事務職として働いてきましたが、先日、上司から「来月から看護補助業務に就いてもらう」と告げられました。私としては、入社時から看護補助の仕事をすることは考えていませんでした。このような命令を断ることはできないのでしょうか。
ここがポイント
お答えします
職種の変更を伴う配転の問題については、(1)職種が限定されているかどうか、(2)配転命令権が正しく行使されているかどうか、という2つの点がポイントになります。
はじめに、(1)の「職種限定の合意の有無」の基本的な考え方について説明します。
労働契約や労働協約、就業規則などにより、職種を限定する合意があると認められれば、原則として、ほかの職種への配転には労働者の同意が必要となると考えられます。
また、採用時に職種が限定されていなかったとしても、医師、弁護士、看護師といった特殊な技術・技能・資格を有する者については、職種の限定があると見るのが通常です。(ただし、職種限定を認めなかった判例もあります。九州朝日放送事件・最一小判平10年9月10日)
しかし、単に長い間同じ仕事に従事してきたことのみでは、職種を限定する合意があると認めるのは困難であると考えられます。企業経営上の必要から、やむを得ない場合もあります。
したがって、職種の限定がない場合であって、労働協約や就業規則、労働慣行によって配転命令に応ずる義務が明確になっている場合には、労働者は配転命令に従わなければならないと考えられます。
次に問題になるのが、(2)の「配転命令権行使の適法性」の問題です。
使用者に配転命令権が認められる場合でも、それが権利の濫用となる場合には、その配転は許されないことになります。
判例も、配転命令が「業務上の必要性がない場合又は業務上の必要性が存する場合であっても、当該配転命令が他の不当な動機・目的をもってなされたものであるとき若しくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき」(東亜ペイント事件・最二小判昭和61年7月14日)には、その配転命令は権利濫用として無効になるとしています。
お尋ねの場合は、まず医療事務職についての職種の限定があったかどうかが問題になります。労働契約書が職種限定契約ではないかチェックするとともに、労働協約や就業規則、労働慣行などを調べて配転命令に応ずる義務があるかどうかを確認してはいかがでしょうか。
問題なのは、職種の限定がない場合で、就業規則などに「業務上の必要により職種の変更を命ずることがある」という規定がある場合です。この場合には、配転命令が権利濫用でないか確認していくことになります。
具体的には、病院側に医療事務職から看護補助職への配置換えを命じなければならない特段の業務上の必要性があったかどうかと、配置転換によってあなたがどのような不利益を被るのか、が焦点となります。
ここにも注意!
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