職場でのいじめについて
10 その他
10-1 職場でのいじめについて
質問です
上司と仕事の方法について口論となってから、上司や同僚から「いじめ」が行われるようになりました。
私だけ仕事上必要な書類が配られなかったり、上司から他の社員の前で怒鳴られたり、陰口や無視などといったことが続いており、精神的にもきつくなっています。
何かよい対応方法はないでしょうか。
ここがポイント
- 信頼できる人に相談し、1人で悩まないようにしましょう。
- いじめの被害にあったら、日時、場所、被害内容、相手に伝えた内容など、具体的な状況をできるだけ詳細にメモすることが大切です。
- 使用者には「労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう配慮をする義務」(安全配慮義務、労働契約法第5条)があり、また、事業場における安全衛生の水準の向上を図るため、快適な職場環境を形成するように努める義務(職場環境配慮義務、労働安全衛生法第71条の2)があります。
お答えします
1 いじめについて
職場での「いじめ」は様々な形で行われるため、それが違法な行為であるかどうかを判断するのは難しく、結局は個々の事例ごとに判断することになります。
職場での無視や陰口、仕事はずしなどにより職場で孤立することは本人にとって精神的に苦痛であるため、不法行為(民法第709条)として損害賠償請求が認められることもあります。
なお、業務命令に形を変えて「いじめ」が行われることもありますが、「業務上必要性のない命令」や「退職強要など不当な目的による命令」については、違法性があると考えられます。
2 対応方法は
職場内での「いじめ」に対する具体的な対応方法としては、次のようなものが考えられますが、まずはどなたか信頼できる方に現状について相談し、1人で悩まないようにすることが大切です。
- (1) いじめの被害にあったら、日時、場所、どのような被害にあったか、相手に伝えたこと、近くに誰がいたかなど、具体的な状況をできるだけ詳細にメモする。
- (2) 嫌がらせとして「仕事を与えられない」場合は、常に業務を行える状態を整え、指示の内容を確認するなど、働く意欲があることを対外的に示す。
また、嫌がらせとして「仕事の指示を変更される」といったこともあります。後で「言った」「言わない」ということにならないために、メモをとっておくとよいでしょう。
- (3) 悪口や暴言などについては、内容をメモするほか、録音などの方法も考える。
- (4) 自分がどのように感じているかを説明し、相手に行為をやめるよう要求する。
- (5) 使用者には、安全配慮義務、職場環境配慮義務に基づき、社内のいじめについて改善する責任があります。加害者である上司等を監督する立場にある管理監督者、または、社内に苦情処理窓口があれば、そこへ相談してみましょう。
- (6) 労働組合があれば、組合で取り上げてもらい、改善を求めて交渉してもらうという方法もあります。
- (7) 社内で改善がなされない場合は、埼玉労働局の総合労働相談コーナーに相談し、埼玉労働局長による助言・指導を求める。
- (8) 弁護士または弁護士会の人権救済部門に相談する。
- (9) 裁判所を利用する。
- ア いじめを止めるよう仮処分を申し立てる。
- イ 民事調停を申し立てる。
- ウ 労働審判を申し立てる。
- エ 不法行為(民法第709条)等に基づく損害賠償(精神的な苦痛に対する慰謝料)を請求することも考えられます。
なお、職場の上司や同僚からのいじめの場合でも、いじめを行った上司や同僚の不法行為責任だけでなく、使用者に対しても、使用者責任(民法第715条)、使用者自身の不法行為責任(民法第709条)を追求できる可能性もあります。
- (10) 職場でのいじめが原因で、精神的疾患を発症した場合は、労働災害としての認定基準にあてはまれば、労災保険による給付が受けられる可能性があります。労災保険については、事業所を管轄する労働基準監督署に相談してください。
- (11) 埼玉県労働相談センターでは、働く人の心の悩みの専門家である産業カウンセラーによるメンタルヘルス相談を実施しています。
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