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掲載日:2023年7月11日

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転勤命令の妥当性について

4 出向・配置転換

4-2 転勤命令の妥当性について

質問です

営業の仕事をしていますが、4年前に東京から仙台に転勤となり、今年5月に埼玉に転勤してきたばかりなのに、今年9月から熊本に行くように転勤命令を受けました。
会社には納得がいかないと話をしましたが、業務命令なので行くように言われました。このような転勤命令は問題ないのでしょうか。

ここがポイント

  • 就業規則や労働協約などに配転命令の根拠があり、その範囲内である配転命令は原則として有効です。
  • ただし、配転命令が「権利の濫用」となる場合は無効です。

お答えします

労働契約で勤務地が限定されていない場合であって、就業規則や労働協約に配転を命じる旨の規定があり、企業内での慣行上も配転が行われている場合には、基本的には、労働者は配転命令に従わなければならないと考えられます。
しかし、配転命令が使用者側の「権利の濫用」と認められる場合には、その命令は違法となり、労働者はこれを拒否することができます。そしてどのような場合に権利濫用とされるのかの判断基準としては、主に次のようなものが考えられます。

1 業務上の必要性

判例(東亜ペイント事件・最二小判・昭61年7月14日)では、「当該転勤先への異動が余人をもっては容易に替え難いといった高度の必要性に限定することは相当でなく、労働力の適正配置、業務の能率増進、労働者の能力開発、勤労意欲の高揚、業務運営の円滑化など企業の合理的運営に寄与する点が認められる限り」これが認められるとしており、かなり広く認める傾向にあります。

2 配転命令の動機・目的

不当な動機・目的(個人的な報復や嫌がらせなど)をもってなされた配転命令については、権利濫用として無効になります。

3 労働者の受ける不利益

私生活上の不便や不利益を理由とするものは原則として正当な拒否理由とはなりません。それが一般労働者が通常予想されるような損害、苦痛を超えて、極めて著しい場合に、正当な拒否理由となります。
お尋ねの場合の転勤命令も、不当な動機・目的をもってなされたものを別にすれば、「業務上の必要性」と、それによって「労働者の受ける不利益」を比べる中で、果たして権利の濫用があったか否かが判断されることになると考えられます。
まず、業務上の必要性については、特に前回の転勤から今回の転勤までの期間が短いようですが、どのような理由・必要性に基づいて転勤を命じるのか、このような転勤が他にも頻繁に行われているか、就業規則や労働協約などにどのように規定されているかなどを調べてみてはいかがでしょうか。
また、転勤によってどの程度私生活に著しい不利益が生じるのかが焦点となりますので、具体的な不利益を整理した上で、会社と話し合われてはいかがでしょうか。

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