トップページ > 県政情報・統計 > 県概要 > 組織案内 > 企画財政部 > 企画財政部の地域機関 > 北部地域振興センター本庄事務所 > 地域の見どころ・情報 > カイコってなんだろう?! ~本庄・児玉地区の養蚕について紹介しています!~ > 5. 繭を作るよ! 「愛情がないと育てられない」生き物!!
ページ番号:199483
掲載日:2023年7月4日
ここから本文です。
6月7日、大澤さんの農家で蚕が繭を作っている光景を見ることができました。
蚕が繭を作るための回転蔟(かいてんまぶし)
繭の中の蛹が蒸れてしまわないよう、窓を開けて風通しを良くします。
蚕は5齢になると、繭を作りはじめます。養蚕農家は、天井に吊るした回転蔟(かいてんまぶし)という格子状の箱に、5齢の蚕をバサッと落とします。
蚕は回転蔟の中を自らゆっくりと移動します。そして、「どこの部屋に入ろうかな」と言わんばかりに、自分の好きな空間を探します。回転蔟は、まるで蚕のアパートのようですね!
「どこに入ろうかな~? 」と部屋を探します。この格子の中で繭糸を吐き出し、繭を作ります。
蚕には上へあがる習性があります。回転蔟の上部に蚕が這いあがると、その重みで回転蔟が回転します。この回転を繰り返すことで、蚕が回転蔟の空き部屋に均等に入ることができます。このような蚕の習性を生かした養蚕農家の知識や技術には驚嘆してしまいます。面白いですね!
ぐるん! と蚕が自ら蔟を回転させます。(回転するたびに「おおお!」と感嘆していました。)
蚕が小さな格子の部屋に入った後、その中で繭糸を吐き、繭を作ります。格子の中に入らず、床に落ちてしまう繭もありますが、汚れていなければ立派な商品として出荷できます。しかし、落ちた繭をまだ柔らかいうちに触れると繭にへこみができてしまい、売り物になりません。繭はそれだけ繊細なのです。
なかには、格子に入らずに天井まで這いあがり、そのまま繭になってしまう蚕もいます。また、格子の部屋の中ではなく、回転蔟の外側に繭を作る蚕もいます。なんだかかわいらしいですね。
あっ、こんなところにも!! 天井に作られた繭。こんなに高いところまで登っていくのですね...
回転蔟の外側に作られた繭
そんな蚕を、大澤さんは自分の子供のように可愛がって育てています。「蚕には愛情がないと育てられない」ことを話してくれました。
「どの蚕もかわいいのよ~!」育てている蚕について話す大澤さん。頑張っている蚕を見て、微笑んでいます。
「蚕はね、みんな違う顔を持っていてかわいい。どれも同じではない。」と大澤さんは言います。そう言われてよく見るてみると、目のような模様や口の大きさなど、表情が違います。人間のように個性豊かなので、眺めていると愛着が湧いてきます。蚕を育てている農家は、自分の子供のように蚕を育てているのです。
大澤さんは、養蚕農家が蚕を自分の子供のように感じていることがわかる、ある面白いエピソードを話してくれました。
「蚕が見ているよ。夫婦の仲が悪いと、蚕が良い繭を作ってくれなくなるよ。」
養蚕農家で夫婦喧嘩が起こると、よくそんな風に話すそうです。人間や動物が成長するには親の愛情が必要であることと同じように、蚕もまた養蚕農家から愛情が注がれないと、うまく育たないということです。「小さかった蚕が、大きくなっていくのを見ると愛着が湧きますね。」と大澤さんは話します。養蚕農家と蚕は、まるで親子のようですね。
蚕のサイズが小さいと、繭もミニサイズになります。小さな繭は売り物にはならないそうですが、小さくても白くしっかりとした繭になるそうです。
体は小さくても、頑張り屋さんです!
小さな蚕は、ミニ繭を作ります。
まれに、繭がハート形になることもあるそうです。形として商品にはなりませんが、大澤さんは「すごく素敵だから」と自宅の神棚に飾っているそうです。ハート形の繭を持っていたら、何か良いことが起こりそうですね。
繭糸を吐いている蚕に目を向けてみると、蚕の体が光っているように見えました。蚕は体の中の液体を繊維化することで繭糸を吐き出すのですが、その際に体内で何かがうごめいているように見えるのです。その様子はとても幻想的で、まさに「天の虫」だと感じました。蚕には、無限の可能性が秘められているのかもしれないと感じた瞬間です。
大澤さんにお話を伺ったことで、私自身の養蚕農家だった曾祖母の記憶が蘇ってきました。曾祖母は「おかいこさんはおとなしく、人間に噛みついたりすることはない。とてもかわいい生き物だよ。」と言い、回転蔟から落ちた蚕を肩に乗せてよく歩いていたようです。そのことを思い出し、大澤さんに話すと「そう、ひいおばあちゃんも蚕を育てていたんだね。」と嬉しそうに聞いてくれました。その時、蚕を通じて何かを共有したようで、お互いの心の距離が縮まった気がしました。
蚕には、世代をこえて人を繋ぐ神秘的な力があるように思えてなりません。
お問い合わせ
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください