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掲載日:2023年7月4日
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今回お話をお伺いした農家の大澤さん
配蚕のあと、農家に運ばれた蚕を見るために、養蚕農家である大澤さんのお宅にお邪魔しました。
配蚕されてから一週間経過した5月28日、4齢になろうとする蚕は眠(みん)に入っていました。眠とは、蚕が脱皮の準備をする段階のことです。この状態になると、蚕は上半身を上げて動かなくなります。この間、蚕は桑を食べません。
眠に入る蚕
蚕は少し茶色っぽく、3cmちかくの大きさになっていました。
眠に入っている蚕は全く動きません。口元が膨らみ、「桑の葉を早く食べたい!」と夢を見ているようですね。眠の状態の蚕は、まるで小さなオブジェのように愛らしいです。
多くの蚕が眠に入っているのですが、中には眠から覚め、脱皮し終わった蚕もいました。むしゃむしゃとかすかに音を立てながら桑の葉を食べている様子がかわいらしいです。脱皮して4齢になると、白っぽい色になります。
眠から覚めた蚕はたくさんの桑を食べるため、農家は多くの桑を収穫し準備しなくてはなりません。大澤さんは、収穫した桑を蔵で貯蔵しています。
歴史ある蔵に置かれた桑の葉
蔵の壁は厚い土壁でできているので、夏は涼しく、冬は暖かいそうです。外の気温が高かったのですが、蔵に入ると涼しく心地よく、良い状態のまま桑を保存できそうです。
蔵の天井には、よく燕が来て巣を作っているそうで、大澤さんは蔵を出入りする燕を微笑ましく見ていました。燕が住んでしまうほど、快適な空間なのですね。
蔵の天井に作られた燕の巣
収穫してきた桑を管理するのも、農家にとって一苦労です。桑に害虫が大量発生すると、桑についた害虫は液体を出すため、桑が湿ってしまいます。蚕はデリケートな生き物なので、水っぽくなった桑も、殺虫剤が使われた桑も嫌がります。このため収穫した桑の中から、さらに蚕が食べられる葉を選んで与える必要があるのです。また、桑が湿るのを防ぐため、桑には石灰をかけるなどして工夫しています。
桑を収穫し、それを運ぶだけでもとても大変ですが、蚕を育てるためには多くの工夫と労力が必要です。実際に養蚕の現場を見たことで、その作業の大変さを実感しました。同時に、大澤さんのように、蚕のために汗水流して飼育してくれる農家があるからこそ、美しい絹の価値が作り出されることがわかりました。絹は、その美しさだけでなく、養蚕業に関わる人々の労働が存在するからこそ価値あるものなのかもしれません。
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