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掲載日:2023年7月11日
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上里町立図書館・郷土資料館では、令和4年2月26日~3月29日まで合同ミニ展示「大字忍保のひな祭り」が開催されています。
この資料館では、上里町における昔の人々の生活を後世に伝えるため、上里町に関連する歴史や文化を発信しています。令和3年度7月頃、上里町の旧家の一つの福田家から、築90年を超える母屋や土蔵に所蔵される古文書や古い道具類を見てほしいと当主から相談がありました。調査をしたところ、福田家土蔵から明治時代~昭和の初めに書かれた古文書類など、様々な資料が見つかりました。確認された1000点以上のうち、明治時代~昭和に作られた非常に貴重な雛人形が上里町立図書館・郷土資料館1階に展示されています。
上里町立郷土資料館の学芸員である林 道義(はやし みちよし)さんにお話を伺いました。
詳しいお話とお写真の提供に感謝いたします。
上里町立郷土資料館が福田家の母屋や土蔵を調査した結果、福田家の母屋は昭和2年に建築されたことがわかりました。また、確認された古文書などの資料には稲、麦の生産や藍染め原料の藍玉の製造販売を行っていたとの記録が残っていたため、福田家は規模の大きい農家であったことが判明しました。2階は蚕を飼育するための蚕室であることや、蚕種の販売をしていた際の帳簿が確認されたことからは、養蚕とも関連が深いことがわかります。
こうした資料を残すことは、上里町の昔の人々の文化・慣習を理解するために大切です。そして、資料を調査・収集・保存するというプロセスが伴って初めて文化財を後世に残すことができるのです。今回福田家を調査してくれた学芸員さんたち、福田家当主とご家族様に感謝です!
図書館に入ると、展示されている豪華な雛人形が目に留まります。人形に使用されている塗料などから、福田家の雛人形は明治時代から昭和に製作されたものだと推定されます。
明治時代のものと推定される雛人形
女雛の冠にはガラスのビーズが施され、細部まで凝っています。息を呑むほど豪華です....
雛人形は、女の子が生まれた際に子供の成長や幸せを願って毎年飾られます。当時の上里町では、嫁入り道具として雛人形を持っていった例もあると言われています。雛人形は家の財力を象徴するものでもあったのでしょうか?
当時雛人形を飾る際は、現代使用されているように雛段に飾っていなかったようです。当時はメインの雛人形だけ購入し、親戚がお祝いとして持ち寄った他の人形と一緒に飾ったと言われています。選ぶ人形によって、贈り主のセンスがわかってしまいますね(笑)
展示されているひな人形の中で最も新しいものだと推定される随身(ずいしん)。昭和頃のものだと思われます。
それぞれ表情豊かで愛らしい裃雛。赤い着物が似合い、暖かみが感じられます。
足裏に贈り主と受取主の名が書かれています。
こちらは裃雛(かみしもびな)と呼ばれる人形です。裃雛は文献が少なく研究があまり進んでいませんが、今回の調査において贈り主と受取主の子供の名が足裏に記載された裃雛が発見されたことで、当時裃雛は女の子の誕生祝の贈答品として利用されていたことがわかります。写真のものは、親戚から贈られたものと思われます。
裃雛は福田家から21体見つかり、そのうち3体が展示されています。童顔で行儀よく両手をそえてちょこんと正座している様子は、庶民的で親しみやすいです。
豪華絢爛な御殿飾り
ツルの絵
御殿飾りは、まさに豪華絢爛そのものです。屋根上のしゃちほこや両端に描かれるツルの絵、建物の造りなど、細部にわたってこだわって作られたことが感じ取れます。作品には職人の思い、親から子への思いが込められ、大切にされてきたことに価値があるのかもしれませんね。
可愛らしい浮世人形
浮世人形とは、能や舞踊、昔話を題材にして作られた人形です。梅の花を背景として牛にまたがっていることから、学問の神様である菅原道真をモチーフにした浮世人形だと考えられます。贈られた女の子が賢くなるよう願いが込められています。
人形を風や湿気から守るため、木箱の隙間に和紙や新聞紙を貼ってしっかり塞いだ状態で保存されていました。
これらは発見時、丁寧に紙や綿で包装して保存され、収められていた箱には幾重もの紙で目張りされていたそうです。目張りは湿気やネズミなどから人形を守るために貼られたもので、目張りの一番下は明治時代の古文書、一番上は昭和半ばごろ(1960年代)の新聞紙が使用されていたそうです。つまり、明治、大正、昭和にかけて毎年人形が大事に保管されてきたことがわかります。時代は変わっても、子供の健康と幸せを願う親の思いは変わらないのですね。
当事務所でも連載「カイコって何だろう?!」で養蚕について御紹介しましたが、本庄管内の文化や歴史を紐解くキーワードは「カイコ」です。上里町の歴史・文化を理解するには、養蚕について考えることがカギとなっています。
当事務所HP連載記事「カイコって何だろう?!」でおなじみ!
「カイコ」は本庄管内の文化や歴史を考える際に欠かせないキーワードです。
今回展示されているものは、雛人形が流行した時期に作られたそうで、上里町も雛人形ブームだったようです。当時上里町周辺地域は養蚕農家が多く、養蚕により経済が繁栄していました。そして養蚕が生み出した富を得た人々は、豪華な雛人形を楽しむようになったのです。
小さな生き物・蚕が生み出す莫大な力に驚かされると同時に、養蚕が盛んな場所には新たな文化が形成されるのだと感じました。小さな生き物と豪華絢爛な雛人形は、実は関連深いものであるとは意外ですね。
たくさんの貴重な資料が所蔵されていた福田家母屋ですが、残念ながら2021年秋に取り壊されてしましました。上里町の古い魅力的な住宅がまた一つ消えてしまったことは悲しいですが、町の歴史や文化の「記録」を残すことで、人々の内部に残存する「記憶」を繋いでいくことは可能だと思います。町の文化の拠点として地域を盛り上げている上里町立郷土資料館。これからも上里町立郷土資料館のイベントに乞うご期待を。
皆さまも、豪華絢爛で貴重な雛人形を見に足をお運びください!
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詳しくは上里町公式ホームページ「かみさと文化財ニュースNo.005」をご覧ください。
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