ページ番号:100879
掲載日:2024年7月11日
ここから本文です。
統計がどんなものかわかったかな?
うーん、統計は、ものごとを数字で表したものということは何となくわかったけど、どうしてわざわざ統計を使って数字で表すんだろう?
そうよね、たくさんの数を数えたり、毎日、はかったりするのは、とってもたいへんよね。でもきっと、何かいいことがあるのよ。
そうだね、わざわざ苦労して統計を作るのは、統計を使うと良いことがあるからなんだ。それを知るために統計をじっさいに使ってみようか。
さっきは「日本に住んでいる人」のような大きい話だったから、こんどは身近なことから考えていくよ。
二人は先週の読書週間で本を何冊(さつ)読んだかな?
わたしは、4冊読んだよ。
4冊?ぼくは、2冊だったよ。1週間に4冊って多くない?
そうだね、1週間に2冊のはかるくんとくらべると、あやのくんの4冊は多いと言えるね。
そうかしら?4冊くらい、ふつうだと思うけど。
4冊は多いほうでしょ。 ふつうが2冊で、1冊はちょっと少なめ、3冊がちょっと多めで、4冊は多いほうだと思うよ。
そう、同じ4冊という数字でも、はかるくんとあやのくんで感じかたがちがっているね。でも、二人の「感じかた」にうそがあるわけじゃない。感じかたは人それぞれだということだよね。
それなのに、ある人の「感じかた」だけでものごとを決めたらどうなるだろう。たとえば、あやのくんの4冊をふつうと考えて成績(せいせき)をつけると、はかるくんの2冊は、悪い成績ということになるけど…。
そんなぁ、4冊がふつうだなんて、あやのさんの感じかただけで決められたらこまるよ。そうだ、クラスのみんなはどうだったんだろう。ぼくとあやのさんの二人の数だけで考えていてもしょうがないよ。
でも、わたしの班は、みんな3、4冊読んだって言ってたわよ。
実は二人のクラス36人のようすをあらかじめ調べておいたんだ。この表をみてごらん。何冊がふつうか一目でわかるね。
3冊 |
4冊 |
2冊 |
6冊 |
1冊 |
6冊 |
3冊 |
3冊 |
1冊 |
3冊 |
7冊 |
2冊 |
4冊 |
4冊 |
5冊 |
2冊 |
2冊 |
5冊 |
2冊 |
10冊 |
1冊 |
10冊 |
5冊 |
6冊 |
2冊 |
6冊 |
7冊 |
2冊 |
7冊 |
3冊 |
7冊 |
2冊 |
2冊 |
4冊 |
3冊 |
2冊 |
ちょっとコバトン、じょうだんでしょ。こんな表で、何冊がふつうか、一目でわかるわけないじゃない。
これって、教室の席の順番に、読んだ本の数をならべただけでしょ。こんなふうに36人分を一度に見せられても、すぐにはわからないわ。
はははっ。もちろん、じょうだんだよ。気付いてほしかったのは、たった36人のクラスのようすでも、一度に知るのはむずかしいということなんだ。もっと言えば、たった2つのものごとのようすですら、一度に知ることができない場合だってある。むしろ、この世界は、一度に知ることができないものごとばかりなんだとも言えるね。
でも、この世界のものごとのようすを正しく知りたい人間は、ある便利な道具を作り出したんだ。
その便利な道具が「統計」だね。
でも、便利って言われてもどう便利なのか、まだよくわからないわ。
そうだね、じっさいに統計を使うと、どのように便利なのか見てみよう。
さっきの、ただ数をならべただけの表から、読んだ本の数と人数に注目して統計表を作ってみたよ。
読んだ本の数 |
人数 |
---|---|
1冊 |
3人 |
2冊 |
10人 |
3冊 |
6人 |
4冊 |
4人 |
5冊 |
3人 |
6冊 |
4人 |
7冊 |
4人 |
8冊 |
0人 |
9冊 |
0人 |
10冊 |
2人 |
平均(へいきん)1人4冊
へーっ、10冊も読んだ人が2人もいるんだ。すごいなぁ。あっ、ほら、ぼくと同じ2冊の人が10人で一番多いよ。2冊がふつうなんだよ。
でも、「平均(へいきん)1人4冊」って書いてあるわよ。わたしの4冊は多いほうでも少ないほうでもないし、やっぱり4冊くらいはふつうなのよ。
どうだい?さっきとちがって、二人ともすぐにいろいろなことに気付いたよね。統計を使えば、見えなかったものが見えてくるんだ。これが統計という道具を使う理由なんだ。しかも、数字で表すので、正しく大きさをくらべることができるようになるのも良い所だね。
この統計表の数字を手がかりにすれば、ただ数をならべただけの表よりも、ずっとかんたんにクラスの読書のようすを考えることができるよね。
そうね、この統計表なら、クラスのみんなとくらべて、わたしの4冊が多いのか少ないのか一目でわかるわ。統計ってこんなふうに役に立つのね。
統計を使わないと、36人のクラスのようすでも知るのはむずかしいんだね。
でもコバトン、統計が便利なのはわかったけど、ぼくたちのクラスの「ふつう」って、結局いったい何冊なの?一番人数が多いんだから、2冊だよね。あやのさんの4冊は4人しかいないし。
はかるくん、こだわるねぇ。実は、二人ともまちがっていないんだ。問題は「ふつう」をどう考えるかなんだ。
あやのくんは「平均値(へいきんち)」を代表とした考えかただね。「平均」の計算はまだ習っていなくても、「平均点(へいきんてん)」のようによく使われる言葉だから、少しは知っているかな。
はかるくんのは、一番よく出て来る数字を代表と考える「最頻値(さいひんち)」だね。2冊の人が10人で一番多いからね。
ほかにも、数の小さいものから順にならべて、ちょうど真ん中に来た数字を代表と考える「中央値(ちゅうおうち)」というものもあるよ。今回の場合だと3冊が中央値だね。
コバトン、二人ともまちがっていないってどういうこと。なんかむずかしい言葉で、ごまかそうとしていない?
そうよ、「ふつう」が二つあるなんて変だわ。
ごまかしじゃないよ。統計は便利な道具だけど、「統計を作るのも使うのも、人間だ」ということさ。つまり、統計を作る人、使う人の目的や考えかたによって、どの数字を使うのかは変わってくるんだ。
たとえば、「多いよね、こんな人」をふつうの人と考えれば、はかるくんのように2冊読んだ人がふつうの人になる。でも、「多いほうでも少ないほうでもない」をふつうと考えれば、あやのくんの4冊はふつうだよね。
その人が、何を知りたいのか、何を知らせたいのかで、統計のどの数字を使ったらよいのかが決まるんだ。
平均(へいきん)がいつも「ふつう」だとは、かぎらないんだね。
でも、「感じかた」で決めちゃダメだから「統計の数字」を使うんでしょ。それなのに今度は「考えかた」で数字が決まるってどういうこと?考えかたも人それぞれなんだから、それじゃダメなんじゃない?
たしかに、考えかたも人それぞれだね。でも、統計をもとにした考えなら、その考えかたで良いのか悪いのか、その統計の数字をもとにして、ほかの人もたしかめることができるんだ。この「たしかめることができる」というのが、「感じかた」の場合とはちがう、統計の良い所なんだ。「感じかた」は人の心の問題だから、かんたんにたしかめることができないからね。
それに、はっきりとした数字で表されるから、正しく考えることができるのも良い所だね。はっきりしない、あやふやな所から出発したら、まちがった方向に考えが進んでしまう危険(きけん)があるよね。
ここで、統計が必要な理由、つまり統計ならではの良い所をまとめておくよ。このようなすぐれた特色があるから、わざわざ統計という道具を使って数字で表すんだね。
もう一つ、良い所とはちがうけど、知っておいてほしいのは、統計を作るのも使うのも、人間だということだね。統計は数字の集まりだから、ただの数字だと思ってしまうけど、統計の数字の後ろには必ず人間がいることをわすれないでほしいんだ。
お問い合わせ
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください